第10話 新たな人生の門出
兄と妹の仁義なきゲーム対決。
兄が勝てばニートの妹は部屋を出なければならず、
一方妹が勝てば兄は己の秘部を末妹へ見せなければならず。
兄の追うリスクの大きさが凄まじい中、始まる始まるゲーム決闘!
「じゃあ立夏よ、一体何のゲームで勝負するか?」
今回この決闘を取り決めるに辺り、勝負の内容たるゲームの選択権を立夏に与えていたりする。
恐らく、向こうが得意とするゲームを振ってくることだろう。
立夏が得意なゲームはスクロールアクション系のRPG。
予想される対決…例えばマ◯オをノーミスで何面まで行けるか…とか、星の◯ービィをノーミスで何面まで行けるか…とか。
スクロールアクション系…実はあんまり得意ではない。
敵にワンタッチで即ゲームオーバー。
割とシビアな判定だとキツイ。
奥スクロールならまだしも、横スクロールだと先が少ししか見えないのも悩み。
個人的に得意なゲームはファイアー◯ムブレムとかファミコン◯ォーズ、信◯の野望みたいな…じっくり考えて一手一手を打つゲーム。
アクションみたいな反射神経が全てを握るゲームは…もはや苦手と言って良い。
果たして、何で来るか…
「うーん…じゃあね、今回はコレで勝負!」
と、1人悩む俺をよそに、立夏は1つのゲームを選択した。
それは…
「ゲーム、なら何でもいいんでしょ? じゃあ…」
と立夏が用意したモノ。
それは、
でっかいボードにカラフルなマス目!
おもちゃのお札にカラフルなピンが刺せる車型のコマ!
そしてボード中央にはルーレット!
これはっ!
「ニートとやる人生ゲーム!!?」
叫ばずにはいられなかった。
「う、うるさいっ! 蹴るよっ!」
若干の赤面をみせる立夏。
押入れの奥から引っ張り出してきたゲームは、TVゲームではなくボードゲームだった。
むかーし昔に正月とかで親戚や従兄弟が家に来た時に少しやった記憶がある程度の…懐かしさを感じる人生ゲームボード。
「また懐かしいものを…って、え? 何? 人生ゲームで対決すんの?」
「ゲームなら何でもいいって言ったのは兄貴でしょ! ならいいじゃん」
「いやまぁ…何でもいいとは言ったが…」
と、困惑する兄を尻目にいそいそとゲームの準備を始める立夏。
「何か押入れ漁ってたら出て来てさ。何か急にやりたくなって…」
言い訳みたいなことを言いながら、初期所持金の3.5ドルを俺に投げ付け渡す立夏。乱暴…。
「いやしかし…まあ人生ゲームでぜんぜん良いんだけどさ」
まぁ、聞いちゃうよね。
「ニートが人生ゲームやって…メンタル持つ?」
「…ッ!!」
さり気なさを装って聞いたら、凄い目で睨まれた。
あーこれは、これ以上は何も言わない方がいい。
「…ゴールに着いた時点で所持金の多かった方の勝ち。道中で家とか買った場合はそれも資産として所持金扱いするから」
視線は鋭くとも、久々にやりたかった人生ゲームを前にちょっとワクワク気味な立夏。
こんな妹もあと少しで20歳。
何かお兄ちゃん悲しくなってくるよ。
まぁニートの時点で悲しいんだけど。
そしてそんな妹と一緒に人生ゲームをやり、負けたら高校生の妹の前で我がアフリカゾウを晒す事になる俺はもう21歳。あと数ヶ月で22歳。
これも痛い話だ。
「じゃ、じゃあ…先行はアタシね!」
と、ジャンケンもしないまま先手を奪った立夏が、ボード中央のルーレットに手を伸ばし、
勢いよくその新たな人生をスタートさせた。