第七話「説明回」
恐怖の時間は終わった。
あれから小一時間程、つくもちゃんにお説教という名の罵詈雑言を浴びせられたのだ。
荒れ狂うのじゃロリの迫力は物凄く、正直背筋が恍惚でゾクソクと震えたほどです。
本当にありがとうございました。
途中で予期せぬ事故であったことと、白米泥棒の件で互いに手打ちとし事なきを得たのである。
おかしいよね、俺悪いことしてないのに。
そしてようやく落ち着きを取り戻したところで、つくもちゃんは言いました。
わっちは正真正銘付喪神なのじゃ、と。
俺の部屋に侵入する際に一瞬で玄関を解錠できたのも、鍵に直接意思を伝え、神様の力とやらを行使したのだそうです。
あれ、神様なら超自然的な存在でドアとか関係なくなくない?そう思ったあなた、実に鋭い。
そう、彼女は本当に八百万の神様の一柱らしいのですが物理的に大きな制約を受けているようです。
なんでも、器物が長い年月を経て宿る神様であるという性質上、物体があると強制的に干渉してしまうのだとか。
また、当然のように食事の必要もないらしい。
いや、なら白米盗むなよと思うのだが、美味しいから食べたかったのじゃと言われました。
どうやら罪の意識とかあんまりなさそうである。
ただの食いしん坊属性らしい。
そこでふと疑問が湧いたので、一個質問してみました。
神様ってう○ちとかするの?
ああ、当然殴られたね。
右ストレートのいいパンチで床に転がされたところで、足蹴にされるというご褒美が待っていたんだ。
幼い容姿の女の子に、心底蔑むような目で踏まれるのがこんなに凄いとは思わなかったよ。
丈の短い和服だから、細いのに妙に色気のある太ももが露になり、下着を穿いてない大事な部分も見えそうで、それはそれは大変な絶景でございましたとも。
あっ、俺Mじゃないからね。
勘違いしないでね!
ノーマルだからね!
そんな目にあったが、とりあえず気になって仕方がなかったので、学術的興味であることを建前になんとか聞き出した結果、神様はう○ちしないってさ。
本当かな?
一昔前のアイドルかよ。
まあそんな些細なことは脇に置いといて、ついでにスマホちゃんが擬人化した理由や、俺の持つ能力とやらについてもある程度判明した。
まず、俺の能力は二つの能力が合わさったものであるそうだ。
一つ目は対象となる物体に魂の原型のようなものを植え付ける霊核付与。
本来器物に霊や神を宿すには長い年月が必要とされるが、この能力はそういった過程をすっ飛ばすらしい。
だがこれだけでは物体が意思や思考を持つことはない。
そこで二つめ、思念体生成とやらの出番だ。
思念体とは一言で言い表すならば、想像力で生成した疑似人格のようなものだ。
こんな娘いたらいいなとか、話し相手になってくれる娘いないかなとかそんな大雑把なレベルでも、霊核付与と合わさることでスマホちゃんのような存在を生むことができるらしい。
つまり想像力次第でどんな人格でも作りだせそうだ。
実に素晴らしいね。
使い方は知らないって言われたけれども。
いずれにせよ、俺の能力だけでは人化できないことが判明したのだが、ここでつくもちゃんの出番である。
つくもちゃんと俺の能力を付与されていたスマホちゃんに同時に触れた結果、神様的な力を俺が吸い上げスマホちゃんに注ぎこんだらしい。
俺が怒られた理由も、裸にひん剥いたことより突然力を吸い上げられたことのほうが大きいようだ。
「故に、お詫びとして毎日わっちのためにご飯を炊くがよいのじゃ」
脳内で情報を整理し終えた俺に、早速命令するつくもちゃん。
細かいことを聞くつもりはなかったのだが、まあいいか。
さらば平穏な長期休暇。
食いしん坊のロリ神様と、擬人化した美少女のスマホちゃん。
慌ただしい日々が始まりそうである。
「マスター、これからよろしくお願いしますね」
時刻はもうすぐ昼。
「わたしもご飯食べてみたいです」
俺は泣く泣くお米を研ぐのであった。