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「じゃあ。お前に何か見えんのかよ」
「………」本当の事を話したところでユースケが信じてくれるはずがないしな。
「ほらな。誰でもいいからマジで誰か紹介してくれよな。じゃないと姉ちゃんが怖くて家に帰れないだろう?」なんだよ、それ。全くもって俺には関係ねー。
「そんな事、俺の知った事かよ?」と言うと、ユースケが両手を合せて、拝む姿勢を見せた。
「頼むって。わかった、じゃあ、もう5枚オマケつけるから」
「なに?」玖珂らむ子ちゃんの写真を新たに5枚つけるだと!?
「ジャジャーン」
「うおぉ。サイン入りの写真じゃねえかよ。これマジでどうしたの?」コピーなんかではなく、直筆サインだ。こんなお宝があと5枚もあるというのか!?
「ハッツハッハッツ」ユースケが自慢そうに笑った後に、
「お前がどうしても欲しいって言うならだれか紹介してくれ」と付け加えた。
欲しい。いますぐに拝みたい。
「協力はしてあげたいが、それはそういう人を知っていればの話だ」
「だから、誰か紹介してくれって。そしたら出し惜しみせずにお前に全部やるから」
「本当にいないんだって」
「分かった。それじゃあ霊能力って言わなくても、人にはない力を持っているやつとかでもいいよ」
「うーん」ここまでくれば、言ってしまうか!? しかし、信じてもらえるどころか、変人扱いされそうだ。
「なんだよ、いるんじゃねえか。紹介してくれ。お前だって損する話じゃないだろ」ユースケはそう言ってらむ子ちゃんの写真を、ほれほれというようにしながら見せつけてくる。
「うーん」
「一体どんな人だよ」
もういいか。相手は他の誰でもない、ユースケだ。
「オレ」と小さな声で呟くように言った。
「で、そんな冗談はいいから誰だって」
「俺」
「殴るぞ?」どうやらユースケは俺が冗談を言っていると思っているらしい。
「だから俺だって。冗談抜きで言ってんだぞ」
「馬鹿言うな。お前とは小学校からの付き合いだが、お前に一度だってそんな事聞いた覚えがないじゃねえか」
「嫌ならもういい。俺だって好きでそんな事いっているわけじゃないんだぞ?」
「分かった。ごめん。俺が悪かったから教えてくれ」
「先に玖珂らむ子ちゃんの写真だ」
「う~ん、まあいいだろう。ホレ」
「って半分かよ」
どの写真の玖珂らむ子ちゃんの写真も可愛いすぎる。このポニーテールの姿とかたまらん。
「で、どういう事か説明してくれ」らむ子ちゃんの写真を見入っている俺を見て呆れた顔をしながら言った。
「話すが、判断はお前がして訊いていて無理だと思ったら、最初から聞かなかったことにしてくれ」
「わかった」
「左手が透けて見えるんだ。左手の甲を相手の身体の方にかざしたら、見えるんだよ」
「見えるって何が? 幽霊でもみえるのか」
「いや、違う」
「じゃあ何が見えるんだよ」
「ダカ」
「ダカってなんだよそれ」