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「そうなのよ。いくらでも偽装できるじゃないの」

「でも鍵は締まっていましたよね。誰かが殺害したとなると鍵を持っている人じゃないと」

「鍵を持っているのは、本人と母親がしかいないわ」

「管理人さんとかは?」

「管理人さんが鍵を預かるということはしていないみたいだし」

「となると――密室殺人?」

「その可能性が無いとは言えないわね」


家に帰った頃には俺はぐったりと疲れていて、飯を食う気にはならなかった。翌朝朝食で出た目玉焼きの上に掛かったケチャップが、昨日見たユリンの血に見えて吐きそうになった。

本当に面倒なことに関わっちまった。

「大丈夫なの?なんだか顔色が悪いわよ」オカンが心配そうに言う。昨日のこととかを言うわけにもいかねえし。

「大丈夫。なんか昨日眠れなかっただけ。悪い。今日は食欲ねえから、ご馳走様」

「まぁ、ほとんど食べていないじゃない。こんなの勿体ないわ。仕方ないわ、お腹いっぱいだけれど、私が食べるしかないわね。お米には7人の神様がいるんだから」

お棺の独り言は放っておいて、少し早いが学校に行く事にした。

学校近くのコンビニで見覚えのある顔を発見した。

戸村強だった。

成人詩を読んでいる。よく会うなと思いながらも、コーヒーを購入した。挽きたてのコーヒーがこれほどまでに美味いなんて、生まれて良かったと思う。

アイスコーヒーを淹れ終わっても、戸村強はこちら井気が付いていない。この前の人形の事が気になるが、声を掛けてまで訊ねることなんかでもない。

 大体、俺が今話しかけた所で、ウザがられるだけだし。それに俺は新人刑事って事になっているしな。私服ならともかく。

チラチラと見る俺の視線に気が付いたのか、こちらを振り向いたので慌てて顔を隠した。やっべー。バレタかな。急いでカバンからメガネを取り出し、かけてから恐る恐る額に手を当てながら、戸村強の方をみた。

堂々とすればいいのだろうが、どうも殺人とかが絡んでくると、ビクついてしまう。ましてや昨日の事があったからなのか。

その時、俺は戸勝強に違和感を覚えた。あれ? なんかおかしい。顔を隠すつもりの左手が彼の身体を見せた。

何かがおかしい。

遠目で見えにくいにせよ、どうしても違和感があった。


「おはよう」

肩に手を掛けられ声を掛けられた俺は思わず「おわっ!?」と叫んでしまった。

振り向くとそこには、学年一の美少女、早見さんが立っていた。


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