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第三章 1

第三章 自殺?


俺はその場で固まってしまい、完全に棒人間になってしまったかのようにして立ち尽くしていると、理沙さんが「文士君触ったらダメ」とその一声で身体が大きくビクリと動いた。自分でも無意識のうちに床にあるタオルをこの手で掴もうとしていたのであった。

ユリン母は何が起きたのか分からないようで、激しく取り乱している。

「お母さん、悲しいのは分かりますが、警察がくるまでこのままにしておいてください。文士君お母さんを止めて」

理沙さんがそういう声はきちんと耳に入っているが、目の前のユリンの生なましい姿がおそろしくて身体が動かない。

「文士君早く。助けて」

助けてという最後の一言で、辛うじて身体が反応した。

ワンワンと泣きながらユリンの死体に抱き付こうとしているユリン母の身体をガシッと掴んだ。物凄く強い力で俺の身体を叩く。

「なんで、こんな事に。こんな事になるならもっと早く来るべきだった」

母親の悲痛の叫びが俺の胸にも突き刺さる。命よりも大切であろう娘が先に死んだりして、それもこんなに痛ましい形で死ぬなんて思っても見なかっただろう。

しばらくすると、警察が沢山押し寄せてきて、マンションの廊下には人だかりが出来ていた。

そんな人たちを見て、やめろ!見せ物なんかじゃないんだぞ!と言ってやりたかった。

参考人として俺も色々と聞かれはしたが、理沙さんと一緒にいた事もあってそんなに長い事拘束されたり、というようなことはなかった。

現場には、遺書が残されてあり、山地さんが他の女の子にも興味を持ち始めたのでそれに嫉妬してカッとなり殺害してしまいましたというような事が書いてあったらしい。

警察はこれで事件が解決したと言っているけど、全然納得がいかないと理沙さんが不機嫌そうな顔をしながら俺に話した。

「でも遺書まであったんだし、ほぼ確実なんじゃないですか?」俺はそう答えた。

「文士君それねえ完全に素人意見だからね」

「そんなこと言ったって俺素人どころか一般人で、いつもニュースは画面を通して見る方なんで」と言った。

正直、ユリンの死体をこの目で見てからというもの、その事に関して声に出すことすら怖すぎて仕方がなかった。

 正直言うと、あれ以来寝る時には電気を消せないでいる。電気を消して真っ暗にしたら、天井の方からユリンが俺の目の前に現れるのではないだろうか、なんて子供じみた考えな事は分かっていても、そこから抜け出す事が出来なかった。

「遺書って言っても本人が書いているか分からないんだから」

「え、筆跡鑑定とかしたんじゃないんですか」

「筆跡鑑定とかどうこうもないのよね。パソコンで打ち出した文字なんだから」

「そうなんですか」


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