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20

――ピンポーン

 ユリンの住むマンションに着きインターホンを鳴らす。しかし前回と違ってユリンからの応答はない。

――ピンポーン

 理沙さんが再び鳴らす。

 しかし、応答はない。このマンションに住む住人がどこかから帰宅してきて、自動ドアを開けて中に入ったので、理沙さんがそれに続くようにして、中に入っていった。

 マンションの住人が二階でエレベーターを降りたので、理沙さんに「今日はユリンにアポ取ってないんですか?」と聞いた。

「そう。いつもいつも確認して尋ねるってわけじゃないから」

「ふーん。でもインターホン鳴らして出ないんだから留守なんじゃ」

「居留守って可能性も高いじゃない。ましてや商売が商売なんだから、ストーカーなんていたりしたら困るじゃない」

「そんなもんなんですかね」

「まぁ男の子には分からないでしょうけどね」


 男の子の「子」をわざと強調させて言われた事にムッとしながら、七階で降りると、ユリンの家に向かった。

「文士君がインターホンを鳴らして?」

「え、なんで俺が?」

「いいから早く」

 相変わらず強引な理沙さんに呆れながらも、インターホンを押す。


 ――ピンポーン

 しかし、応答はない。

理沙さんの顔を見ると、「もう一度押す」と小声で言われた。


――ピンポーン


  相変わらず応答はない。

 

するとその時、「どなた?」と年配の女性が声を掛けてきた。優しそうで上品そうな六十代位の女性だ。

「哲美さんの友人の者ですが、お留守の様でして」

「そうなの?家にもいないのね。どこに行っているのかしら」

「えっと」理沙さんが少し不思議そうな顔をしてそう言った。

「私は哲美の母親なの。いつも娘がお世話になっています」


 母親?これがナンバーワンホステスの母親?そう言われれば鼻筋も似ている気がする。


「こちらこそいつもお世話になっております」

「昨日から電話しても出ないから心配になってここまで来てみたのよ」

「そうなんですか」

「今開けるから少し待ってて?」


ユリン母はそういうなり、右手に握りしめていたらしい部屋の鍵を鍵穴に差して右に回した。

鍵が開いてドアを開ける。


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