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「してません」
「あ、ごめん。怒った? 冗談で言ったつもりなんだけど」
「見てませんから」それだけは俺の名誉にかけても断じて許す事の出来ない言葉だ。
「そんなにムキにならなくってもいいじゃない」
「いいや、そこはきちんと否定しておかないと勘違いては困りますから」
「分かったわよ。そういう事にしましょう」
「それ絶対分かっていないでしょう?」
「分かってるって。文士君また付き合って欲しい時にお願いね」
「でも俺本当におもったよりも全然役に立ちませんから……」というか面倒なだけではあるが。
「今にその才能が光る時がくるから。まぁ今日はお礼を言う時が無かったからそれもあって電話をしたの。私の番号登録しておいてよね」
「はぁ」
「それじゃ」
理沙さんはそう言うなり、かなり一方的に電話を切った。この感じ理沙さんらしいと言えば理沙さんらしいのだが。
翌日、ショッピングセンターの中を歩いていると、懐かしいミニ四駆を発見した。
懐かしいなあ、ガキの頃によく作って遊んでいたっけ。穴を開けたりしてさ、走らせて。でも沢山穴を開けすぎて、衝突した衝撃でパキッと折れたりしたよな。
うわーこのタイプ今も売ってんだ。買おうかな。
あれっ?俺が子供の頃は確か六百円ぐらいだったはずなのに、今は千円もするのかよ。高くなったんだな。
あ、あの人。
おもちゃ屋のもう少し奥の方に、見覚えのある人を見つけた。
戸勝強だ。なんであんな所に?
声を掛けようかと思ったが、戸勝強が見ている場所を見て声を掛けるのを躊躇った。
なんで人形なんか見てるんだ?
戸勝強は、いかにも真剣そうな顔をして人形とその人形に着せる服を選んでいる。人形の服が入った箱を手に取り、首を傾げながらそれを見ては、元の場所に戻してまた別の物を見ているようだった。
別に友人でもなんでもないし、他人なんだから放っておけば良いのだが、あれが友人だったりすれば、例えばユースケだったら「お前そんな人形なんか何を見ているんだよ」なんて急に言って驚かせたりするのだが。
まず俺と戸勝強の場合、出会い方もそんなにいい出会い方とは言えないしな。しかし、大人の男性でしかもイケメンが人形を選んでいる姿ってこんな感じに見えるんだと思い、結局最後はどんなものを選ぶのだろうかという興味がムクムクと湧き上がってくる。




