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つまりイケメンの脚ということか。最近のイケメンは全身脱毛までしているのか。
俺はイケメンの意識の高さに感心しつつも、自分のすね毛を思い浮かべた。
明らかに、俺のは濃いし、もじゃもじゃしているが、それだからといって、それを剃ってしまうなんてことは想像もできない。小学生の頃はそうでもなかったが、中学生になったぐらいからどんどんと毛は濃くなり長くなった、それは成長の証でもあり、なんとも思っていなかったが、どうやらこの毛を邪魔に思う人もいるらしい。美意識が高いとでもいうのだろうか。
そういえば、肌も綺麗だった。男なのにありえない位にツルツルしていて艶がある。
それにしても、あのブラジャーは一体誰のだろうか。ブラジャーを忘れていく、若しくは置いている。どちらにせよ、俺はあのブラジャーを一生忘れることはないだろうと思った。そう、完全にいやらしい意味でだ。
もしかして女を連れ込んだ後にそのまま置いて行かれたとかそういう感じだとすれば、それは着衣済みのものであり、もしかしたら脱いだばかりの未洗濯のものかもしれないし、あれだけのイケメンの相手となれば、かなりのランクの女性だろう。俺はそう思うと、色々と身体の中で異変が起こってそれを抑えるのに必死だった。
「ちょっと、どうしたのよ。さっきからニヤニヤしたと思えば首を左右に振ったりして」
「え、俺、首なんて振っていました」
「やだ、自分でも気がついていないの。なんだかおかしいわよ。大丈夫なの」
「大丈夫っす。でも、部屋綺麗でしたね」
「そうね。外観は酷いのに、意外よね」
ブラジャーを見つけたことを言った方がいいだろうか。俺が経験不足なだけで理沙さんからすれば、当たり前の事よ。ブラジャーだって予備を置いていないと心配じゃないなんて言われるかもしれない。
馬鹿にされたくはない。やはり黙っていようと思った。
「それにしても、あの男とユリンが寝てない理由が、なんだか分かった気がしたわよ」
「でも嘘かもしれないじゃないですか」もしかしたら、あれはユリンのブラジャーだったりしたら、それはそれでムフフだしさー。
「どんなに顔が良くても性格があれじゃあね。どんなに顔がよくても、女が寄りつかないわけだわ」
「そんなもんですか」
「そんなものなのよ」
きっと、理沙さんはイケメンが言った言葉を根にもっているんだろうと思ったが、そんなことを言ったところでとばっちりをうけそうなので、何も言わないでおいた。
理沙さんに家まで送ってもらい、洗面所に映る自分の顔を鏡を見て、髭は濃くはないにしても髭があるよなと思っていた俺は、自分がイケメン風に仕上がるにはどうすればいいだろうかと考えていた。
化粧してカラコンとか入れてみたら、ああいうイケメン風(あくまでもイケメン風)になれるのだろうか。他にできることといえば、メガネか。俺は両手で丸い輪っかを二つ作りメガネのようにしてみた。
――が、確かこれくらいか? 二つの輪っかの真ん中、つなぎ目の所にはピンク色のリボンがあったよな。
う~ん、俺の片手にはみ出すくらいか? と、いつの間にかブラジャーの事ばかりがクルクルと頭の中に回っていた。
何カップのだろうか。
スマホでサイズを調べてみるが、『Aカップはトップとアンダーバストの差が10センチ、Bカップは12.5センチ、Cカップは15センチ、Dカップは17.5センチでEカップは20センチ』と記載されているが、その情報から、何カップなのか割り出すことは不可能に感じられた。
本当に脱ぎ立てホヤホヤのものだとしたら、またも身体が変になってきた。
もっと、近くでみれればよかったし、そんなチャンスもなければ、チャンスがあったとしても勇気が無くてチラチラと見ていませんっていうフリをしなければいけないと思った。
――チャララララララララララララ
鳴り響くスマホの画面を、嫌な予感がしながら覗きこむ。
ん? 誰だこれ。
表示されていたのは知らない番号で、登録されていない番号であった。




