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13

「君は新人さん?」イケメンが俺の顔をじーっと見ながらいった。

「はい、新人の指田と申します。よろしくお願いします」

「よろしくと言われてもね。まだ若いでしょう。一緒に並ぶと肌の綺麗さがよくわかるわ」イケメンはそいうと理沙の顔を見てから、ふんっと笑った。

 理沙さんはムッとしたのか、手の関節をポキッと鳴らすような仕草をしている。


「山地さんの事で今日はお伺いさせて頂きました」理沙さんは若干荒い口調でいうと、イケメンはハァとため息を吐き出してから、

「警察もしつこいよね。何度も同じ事話しているのに、いくら自分たちが無能だからって」と吐き捨てた。空気が重くなる中、俺はなるべく火の粉が自分に落ちてこないように、存在感を消していた。


――ゴホンッ

 理沙さんは、わざとらしい咳をしてから

「山地さんが亡くなった日、ユリンこと草野哲美くさのてつみさんとご一緒だったと伺ったのですが、失礼ですが二人はどういったご関係で」ときいた。

「友人の一人」

「身体の関係とかはあったのでしょうか?」

「あったと言えばあったし、なかったと言えばなかったし」


ん? ユリンの話と少し違うなと俺は思った。ユリンは完全否定したというのに。あったといえばあったとはどういう事なのだろうか。


「山地静雄と草野哲美さんが肉体関係にあったことはご存知ですか」

「知ってますよ」


 理沙さんがいろいろと尋問する間に、俺は目に入った女物のスリッパが気になった。彼女のものだろうか。もしかしたら、ユリンの物なのかもしれない。

 俺は理沙さんにそのことに気づいてもらおうと、横目でスリッパに気づくように合図をしたが、俺の合図が下手すぎるのか、理沙さんは気づいてはくれない。

 仕方がないので、俺はタイミングを計っていた。


「失礼ですがこの家ではどなたかと暮らしているんですか」俺は今だ、と思ったところで勝手に切り出すと、理沙さんは驚いた様だったが、イケメンの顔は途端に眉毛がピクリと動いたのを俺は見逃さなかった。

 そして、イケメンは部屋を女性物のスリッパの方を見て、「あのスリッパはお客様用。一人暮らしだけど、友達が遊びにくるから」と言ったが、何故だか違和感を感じた。

「遊びにって、毎日のように来るんですか」

「毎日ではないが、月に一度以上は来るかな」月一度しかこないという割には、スリッパは汚れて黒ずんでいる。

「随分前に購入されたのですか」

「買ったのは二ヶ月前とかかな。そんな事はどうでもいいじゃないか」

「もういいかしら?」理沙さんは遮るようにいってから

「戸勝さんは山地さんと面識があった様で」と続けた。

「僕の働いている会社の下請けの方ですから」

「そのようですね、何かトラブルがあったりとかそう言う様な事を聞いてはいませんか」

「かなり正確に仕事をなさる方でしたし、真面目で人当たりも悪くなかったのでこれと言ってトラブルは」

「そうですか。山地さんが亡くなったあの日、草野さん(ユリン)がおどおどしていたりしたとか言うような、いつもと違う様子だった、とか言う様な事はありませんでしたか?」

「どうでしょう。哲美は山地さんの事あまりよく思っていない感じだったかな」

「なんでそう思うんですか?」

「そりゃあ。あくまでも客とホステスだから、まっそういうもんなんじゃない?」


イケメンはそう答えると、テレビのチャンネルを変える為に左手で机の右端にあるリモコンを持ち上げた。

 ん? 俺は、足元に何かが刺さったような気がして足元を見てみると、そこにはヘアピンのようなものが落ちていた。


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