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 ユリンは一瞬「は?」というような顔をした。

 恐る恐る理沙さんの顔を横目でちらりと見ると、余計なことを言いやがって、というような表情をしているのがわかる。

 そりゃあまあ、こうなるわな。

 今まで静かにしていたやつが急に喋り出したりして。

 俺は縮こまった。


「まぁそれだけってわけじゃないけど」そう答えたユリンの顔は何故だか悲しそうに見えた。

「戸勝強とは付き合っているの?」

「いいえ、付き合ってはいません。本当にただのお友達です」

「でも随分イケメンな彼でしょう? 一緒に泊まったりしたら何かあるでしょう? 身体の関係とかも」理沙さんが随分と突っ込んで聞くものだから俺の全身は何故かじっとりと汗ばんでいた。理沙さんは俺がここにいるという事を忘れているのではないだろうか。

 

「いいえ。本当に昔からの友達なのでないです。彼はただの友達ですから」

「彼の方はどうかしら。彼の方は貴女の事をずっと好きだったとか」

「ないです、ないです。そういう気持ちは感じたことが無いです」

「そう、今日の所はこの辺で。お時間を取らせて悪かったわね」

「何度来て頂いても、私じゃありませんというのは変わりませんから」ユリンはそう強い目とその口調で答えた。

「帰るわよ」と理沙さんが立ち上がると、俺も置いていかれないようにと立ち上がりユリンの家を後にした。


 廊下を歩く理沙さんのハイヒールの音が、来る時よりもコツコツと響く。

 理沙さんは車の鍵を開けると俺に先に入るように指示し、自分は駐車料金を払いに行った。

 俺の頭の中にはセックスと言う言葉と、立たないと言う言葉がグルグルと一巡二巡とくるくるとまわっていた。


――ガチャン



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