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今度は一人置いてけぼりになってしまわないように、理沙さんのすぐ隣に腰かけた。いかにも自然そうにしながら。

 ふかふかとしているソファーに座ると、すぐそばにあるテーブルに口紅やらヘアーゴムやら色々な女性の小物に目がいった。

 

 ユリンはキッチンに立ち、冷蔵庫をガサガサしている。

しばらくして、ユリンはお茶を入れたグラスをお盆に乗せて机の上に置いた。

その姿はまるでドラマのワンシーンを見ているようで、つい見惚れてしまう。下手したら女優さんよりも美しいだろう、うっとりとその眺めた。

 冷静沈着な理沙さんは「お構いなく」とユリンにいうと、ええ、とユリンは小さく頷いた。

 

 ホステスナンバーワンは家の中でも気遣いをするのかと俺は感心した。目の前のユリンがどうも家庭的な女性に見えてしまうのはどうしてだろうか。

 俺はそういう女性に弱いせいだろうか、それともユリンがやはりいい女すぎるからだろうか。

 どちらも正解だと思った。家庭的な女性が俺は好みだし、目の前のユリンは間違いなく誰が見てもいい女だ。


 ここに来るまでは、乱雑しているだろう部屋を想像していたのだが、この部屋は綺麗に掃除が行き届いているし、意外な事に多くの文庫本や何種類かの新聞が置いてあった。


「それで山地さんのことでお聴きしたくて」

「何度もいっていますけど、私が殺したんじゃありません。アフターに行った後に戸勝強とかちつよしと一緒に過ごしました」

「山地さんに恨みがあったとかそういうことはないのね?」

「ありません。山地さんは本当にいい方でしたし、私に無理を押し付けて困らせる様なことなんてしませんでしたし」

「でもそれなりに、山地さんとは御関係があったんでしょうし」

「関係っていうのは」

「身体の関係があったかどうかってことよ」

それを聞いた俺は、プッとお茶を吹き出しそうになった。俺はまだ未成年者である。そして……それを俺に言わさないで(涙)


「しましたよ」 おいおいおい。よくも恥ずかし気もなくそんな事が言えるな。さすがは、ユリン。

「そこに愛があったとは思えないんだけど、どうかしら」

「愛は無いです。山地さんからの愛情は両手に余る程に受けていましたけれど、山地さんはお優しい方ですけど、恋愛対象として見れるかどうかと言われたら、それはちょっと」


 それなのに、身体の関係を持ったのか。スゲエなこの女。

 なんだかリアル女子の本音ってやつか。うわー、こういうの訊きたくなかったな。


「身体を求められすぎて嫌になって逃げた。とかそういうことはなかったの?」

「それはないです。山地さんとのそれは一度きりの約束でしたし、それに山地さんはもう息子さんが元気がなくて。病気のせいだなんて言っていましたけれど」


息子さんってその息子さんって男性のあれか。ゾワゾワッと好奇心を掻きたてられるような感覚になった。息子さんって、まあそのまま言うよおりはマシか。


「一度きりの約束っていうのはどういう事なの」

「一度だけそういう行為のフリでもいいから、してくれたら、自分は死んでもいいくらいだし、君にも全財産を譲ってもいいってそうやって言われて」

「じゃあお金の為だけに身体を許したんですか」思わず口が滑ってしまった。


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