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学校が終わり門を出て歩いていると「文士君」とどこからか声がする。

聞き覚えのあるような声だが一体誰だよと、辺りをみわたすと、右後ろからユースケのお姉さんが車を左端に寄せて助手席側の窓を開けて「こっちこっち」と叫んでいる。


「そんな大声出さなくても分かりますって」

「そうなのー? 今から協力して欲しいの。車に乗ってくれない」

「あ、今からですか?」

「そう、何か予定があるって言うわけでもなんでしょう」

「まぁ別にないですけど」

 なんていうか、この強引の感じはユースケにそっくりだよな。やっぱり血が繋がっているというかさー。


「じゃあ行くわよ」

「はぁ」理沙さんの勢いに俺は圧倒させられた。

「なに、その納得いかなさそうな顔は」

「いえ別になんにもないですけど。ユースケにそっくりだなって思って」

「どこがよー。まあ血が繋がっているんだからそんなに不思議なことでもないでしょうね」

「ユースケのお姉さんって」

「文士くんいい加減、ユースケのお姉さんって呼び方やめてくれない」

「え、でもそれじゃあ、なんて呼んだらいいんですか?山田だとユースケと同じになるし、山田さんて言うのもちょっと」

「そうね、姫って呼んでちょうだい」

姫? なんだその呼び方は。

 妙な沈黙で空気が重い。


「なによ、そのありえないって言う様ないい方は。私だって文士君位の時は純粋で可愛いときがあったんだからね」

「そうですかー」正直、俺にとってはどうでもいい話でしかない。

「まぁ姫って言うのは冗談だけど、ユリンって女が別名姫だったらしいから、どんな気持ちがするのかしら? なんて思ってみただけよ。私の事は理沙りささんでいいわよ」

「理沙さんですか」


 俺あんまり女の人名前で呼んだことがないからさ、なんかしっくりこないんだよなー。まぁずっと、ユースケのお姉さんとかって呼ぶのも不便だしよ。

「それで今からユリンって子に会いに行くから、文士君は隣に座っているだけでいいから」

「隣に座っているだけでいいって言われましても」


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