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「あの、そんなつもりはなくて。まさか泣かせてしまうなんて思わずに……」

「うぅ」

どうしよう。大人の女性を俺が泣かせてしまったんだ。

 それも親友のユースケの姉さんを。文士は自分が口に出した言葉に後悔していた。

「あの、ごめんなさい。本当に。そんなつもりはなくて。ただ口から滑って出た、というか、その。本当にごめんなさい。あの、俺みたいなので何かお役に立てるんなら何だって協力しますから、その機嫌をなおしてもらいたいといいますか、その都合のいいことを言っているなって自分でも思うんですけど」

「うぅ」

「本当にそんな泣かれるなんて。俺の出来る限りのことならばなんだって言ってください。協力しますから。それに俺が泣かせたなんて事がユースケに知れたら俺はなんてお詫びを言っていいのやら」


 どうしたらいいんだ? ユースケの姉さんは、何も言わずただううと泣いている。

女の人を泣かせるなんて男失格だよな? まるで頭にズドーンと1トンのハンマーで殴られるよう気分なんだが。


「本当になんでもしますから」俺がそういうと急に下を向いていた顔をあげてこちらを見ると

「本当に」といった。

「なんでも言ってください。出来る限り協力していきますから」

「ほんとに。じゃあ早速なんだけど、これ見てくれる」

「はあ」

 なんだ、なんだ。

 この切り替えの早さはなんなんだ。しかも、涙、乾いていないか。

 

「じゃあこれなんだけど早速」ユースケの姉さんの顔は完全に笑顔になっていた。



 翌日、ユースケからお礼の品だと言って、玖珂らむ子ちゃんの写真を受け取り、授業中それを見ていたら、早見さんがそれを見ていた様で

「指田君、玖珂らむ子ちゃんみたいな子がタイプなんだ」とそんな事を学年一の美少女「早見さん」に言われたものだから、俺の顔からは火が出そうで、玖珂らむ子ちゃんグッズを見るのは学校でみるのはよそうと誓ったのであった。


 早見さん、玖珂らむ子ちゃんをじーっと見ている俺を見てオタクだなとか絶対思っただろうな。

 別にどう思われたっていい事なんだが、しかし、あれだけ可愛い早見さんに見つかってしまった、という事がなんか心に引っかかる。


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