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「これが当時の現場の写真ね」
うわー。なんだこれ。非常にグロイというか。正直、見れたもんじゃねえわ。着ている洋服にはべったりと血がついていて、その地はどの方向に流れ出ていたか、よくわかる写真だ。
「目を覆いたくなるようなた写真ですね」
「まあね。でも、こうやって見せないと分かってもらえないし説明することが難しいからねー」
「それで、誰か怪しいと思う容疑者はいるんですか?」
理沙さんは、待っていましたと言わんばかりに再び鞄の中から写真を取り出して、俺に見せた。
「これ、この人なんだけど」
そういって手渡された写真を覗くとそこにはイケメンの男性が写っている。フランスの人形のような顔のつくりで、男からみてもカッコイイと思わざるをえないイケメンだ。
「これがそのユリンって女の男友達ですか」
「そう、これ見てどう思う-」
「どう思うってイケメンってことぐらいで後は別になんとも。まあ遊び人っぽいというのはありますけど」
「イケメンよね、それは私も思うわ、でもねー」
「でもねって何か問題でも」
「問題ってほどでもないんだけど、この顔なんだか問題抱えていそうな顔してると思わない?」
「そんなことを顔だけで、判断するんですか」
「顔だけでってことでもないんだけどね。まあ刑事なんてものは人を疑うのが仕事っていう感じなのよね」
「まあそうなんでしょうけど。ってことはもしかして、俺の事も疑われてたりするってことですかーそんなのひでーやー」
「そうとは言っていないでしょう。 子どもみたいにふくれなくてもいいから」
「一応怒った方が伝わるかと思って」
「まだまだ子どもね」
「そんなー。子どもって、俺いい加減本当に怒りますよ。というか、子どもなんでやっぱりこの仕事はやめさせてもら……」
「それはダメ。ごめん。怒ったなら謝るわ」
「というか、そもそも俺だって自分の能力に気が付いたのは最近で、それにこの能力がいつ無くなるかもしれないし。自分でも夢見ているんじゃないかって思ってしまってるし」
「何言ってるの。 文士君は神永先生の血を引いてるんだから大丈夫に決まっているじゃない」
「叔母は一体何を協力したっていうんですか。俺は、叔母ほどに強い霊能力があるわけでもないし、ユースケにいきなりこんな所につれてこられて、こんな面倒な事に巻き込まれそうになって」
「ごめんね。そんな風にして文士君をおいつめているなんて思っていなくって……私のせいで文士くんが」理沙さんはそういうと両手で顔を覆い涙を拭き取るような仕草を見せた。
――ズキンズキンッッ。
泣いてる? 俺が泣かせた?
感情任せに出た俺の言葉でこの俺が女性を泣かせた?
痛む。 俺の心がちくりと痛む。




