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「それくらいのことは、知っていますよ」金がかかるんだろうなとか思ってそういう水商売のドラマ見ていたし。谷間の姉ちゃんが横にいるっていうのは男としての最大の夢でもあるわけだし。
「そうなんだ。それで、アフターに行った後に亡くなっているのよね」
「じゃあそれはそのユリンって子が怪しいんじゃ」ユリンって名前からしても怪しすぎるだろう。例え源氏名だとしても、ユリンってのはありえんだろう。
「そう思うでしょう? でも、ユリンはアフターした後にきちんとしたアリバイがあるのよね」アリバイって……。
「アリバイって、いかにも刑事が使う言葉ですけど」
「そりゃあそうよ、私刑事なんだからね」そりゃあ、そうかもしれんが。それにしたって。
「それは分かっていますけど」
「それじゃあイチイチ反応しなくてもいいから」なんだ、そのツンケンした言い方は。
ユースケの姉さんってさ、結構気が強いタイプだよな。まあ今更だけどな。反応しないでとか言われても刑事の仕事している人の口からアリバイとか訊いたら、そんなもん事件って実感してしまうじゃねえかよな。
「そのアリバイっていうのが男友達と一緒に居て、一緒に朝までホテルで過ごしたっていうのよね」
「朝までホテルって」場所が場所だけにやること決まってるじゃねえかよ。さすがユリン。
「まぁそれは別によくある話だから。事情聴取をしたけど、二人に特別、不審な所もないし、目撃者の情報とも一致しているのよね」よくある話って、男友達で恋人でもないのにホテルに朝まで二人でいたりするものなのか!? 俺には分からん。 そういう願望があっても実践にまで及んだことがねえ(泣)
「しかし、それでもまだユリンって女の話が出てくるんスか。他に怪しい点でも」まあ、こうやって聞く限りでも怪しいもんな。
「そうなのよね。特別変わったようなところとかおかしい点もないんだけど、ただね」
「ただ」
「ただ車の中には遺書が残されていてね」
「遺書まであるんなら自殺なんじゃないですか」
「そう思う」
「はい、そう思います」
「でも、その遺書にはこう書いてあったのよね。僕には生まれて初めて守りたいと思う人が出来ました。その守りたい人を守るためにあの世にいきますって。まぁもっと長く書いてはあったんだけど、まとめたらそういう事が書いてあってね」
「守りたい人っていうのは、そのホステスのユリンって子のこと?」
「そう思うでしょう? っていうかさ、文士君って誰かを本気に好きになったたことはあるかしら」
「え……」なにその質問。なんか嫌な感じしかしねえ。なんで俺の話になるわけ!?
「玖珂らむ子ちゃんとかそういう芸能人とかじゃなくて、もっとこう。本格的にというか現実でのことよ」
そんなこと聞かれてもな。そりゃあ17年間生きているわけだし? 好きな子の一人二人くらいは……。
しかし、本格的にかと聞かれたら、首を傾げるしかないよな。もしかして俺って……いや考えてはならぬ。むなしくなるだけだ。
「その感じじゃまだ本当の恋をしたことがないようね」 むむっ。




