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「なんでだよ。減るもんでもないし別にいいじゃん。分かった。さてはお前、あれだな。全部独り占めするつもりなんだろう」
「アホかお前は。分かったよ。そこまで言うなら一人だけだぞ」仕方ない。こうでもしないとユースケずーっと言ってくるからな。
「おお――。そうこなくっちゃ」
「言っておくが、一人だけだからな。但し後々の面倒を避ける為にも、給食のおばちゃんとか先生とかにしてくれよな」
「なんだよ。俺は早見さんのが良かったのにぃ」悔しそうに言う割にはユースケは今にもヨダレを垂らしてしまいそうな程、絞まりのない顔をして、早くも獲物を捜すような顔をして周囲を見ている。結局、誰でもいいのかよ、コイツは。
「保健室の先生とか良くね。林田先生とかさ。あ~、でも、見た目細いし、ここは小さいだろうな」ユースケはそう言いながら自分の胸辺りを押さえている。
「一回だけだからな。それに絶対にこの事を口外するんじゃねえぞ。 もしそんな事があればお前とは絶交だからな」
「分かっていますって。このユースケが文士様を裏切った覚えがありますか」
こういう時だけ下手に出やがって。現金なやつ。
「最初で最後頼みだからな」そう言いながら林田先生が歩いているところに左手をかざす。
「お、おぉおおおおおお!」あれは。
「文士どうしたんだ!? 一体何が見えたというんだ?」
細くてクビレのあるウエスト、透き通る程に白い肌に、上向きでツンとしている形の良すぎる推定Dカップの胸。
す、すげえええええええええええ――。まるで芸術じゃねえか。
「おい、お前一人で楽しんでいないで教えろって」
「あの先生ヤバいぞ。ここはこんな感じで上向いてて、クビレとかマジこんな感じで細い。無駄な肉が無い。さすが保健室の先生」
「マジかー、マジかー狙い目だな。絵を描いてくれ。Dカップって、そんなにあるのかよ。てっきり俺は貧乳だと思っていたんだが」
あまりの興奮を抑えきれずに、勢いでその絵を描いた。
キュッと細くてしなやかなウエストのラインに、お椀型の調度良い大きさの胸。余計な脂肪はどこにもついておらず、お尻も垂れていたりすることなくキュッと上がっている。よし、こんな感じだ。マジすげえ。
「すげー。こんな感じなのか、すげー。細いからてっきり胸の方もだとおもってたいたけどよ。文士――。これ俺もらってもいい?」ユースケはやたらスゲーを強調していた。
「いいけど、絶対落としたり他の人に見せたりするなよ」
「大丈夫だって。例え、落としたところで名前が書いてあるわけでもないし分かるかよ」
「バレたときは、共に落ちる覚悟でな」ユースケにしっかりと釘を刺して、それを渡した。
しかし、しかしだな。それからというもの林田先生が気になって仕方がないんだが、こういうのは一体どういう事なんだ?
恋とかではないと思うのだが。林田先生を見るたびにドキッとしてしまう感じのそれ。
少し罪悪感を感じつつも、林田先生の事を見ると恥ずかしいような気持ちになり、目に合いそうなことでもあれば、サッと無意識に逸らしてしまうというような。
変に意識しすぎだと自分でも思うわけだが
しかし、後日少しだけ恐れていたことが起こった。
「文士~この前の林田先生の似顔絵なんだけど、姉ちゃんに見つかってしまった」
「ハッ!? お前あれ、お姉さんに見せたのか?」
「わざとじゃないって。大切に辞書に挟んでいたら見つけたらしくて」
「なんでそんな大切な物を辞書に挟んだりするんだよ」
「まさか辞書なんて見られるなんて思わねえからよ」
「なんだよそれ。次はもう絶対ないからな。絵なんか描いて調子にのった俺が馬鹿だったわ」
「それでなんだけど、姉ちゃんがお前に会いたいって言うんだよ」
「なんでそうなんの」
「頼む、この通りだ」
「……」
――そんなわけでユースケの必死なお願いに負け、再び姉さんと会う事になった。




