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これは……。


俺の左手が見えるだけじゃねえか。その後なん度も何度も同じ事を繰り返して、他のカードや写真やポスターでもやってみたがそこには玖珂らむ子ちゃんが服を着て映るだけで左手は透けなかった。

まだまだ修行が足りねえということなのか。がっくりと肩を落としながらも、玖珂らむ子ちゃんの水着姿を拝んだ。

 見えそうで見えないくらいがちょうどいいさ。


                  *


「いいか、文士。人助けだと思ってやるんだぞ。お前のすぐそばに私がいてお前を見ているからな」まばゆいばかりの光に包まれている叔母が言う。

「そんなことより、なんで写真は透視できねえんだよ」

「いいか。 能力を正しく使わなければ、その能力はなくなるからな」



――ジリリリリリリリリリン



なんだ、夢か。叔母さん成仏出来てねえのかな。

人助けとか言われても困るよな。俺全然関係ないじゃん。まあ夢だしな。気にすることはないが、リアルな夢だったよな。

 

 変な夢のせいでよく眠れなかったと思いながらも、机の上のらむ子ちゃんの写真に励まされる思いで学校に向かった。

 門の方に向かって歩いているのはユースケだ。


 発見した。俺はニヤつきながらもカバンからシャープペンシルを取り出し、ノートを一枚破って、『俺はアホです』と書いた。

 よしこれでいい。

 これをアイツの背中に貼ってやる。

 待てよ。つーかそれでこの紙を貼るテープ持ってねえわ。

 仕方がない。今日のところは諦めるか。

 次回の為にガムテープでも用意しとかないとな。


教室に入ると、

「おはよう、文士ちゃん」ユースケが近づいて来る。その顔をなにかあるだろう。しかも文士ちゃんって。

「やめろってその呼び方気持ちワリィ」

「分かった分かった。謝るよイケメン文士君」

「なんだお前、なんだよイケメンって。お前俺をおちょくっているのか。この野郎!」


――ガシッッ、ボコッボコッ


「おい痛いって、やめろって文士」

「この野郎」構わずユースケの肩を殴る。なんかますます腹が立ってきた。


――コショコショコショ


「これでもくらえ。くすぐりの刑100連発」ユースケの脇腹をくすぐる。


「ぎゃははははははは。分かったわかったってごめんってば」

「懲りたか―」

「懲りた懲りた。ごめんってーぎゃはははっはは」 ユースケが降参したところで、手を離してやる優しい俺様。


「全くお前は乱暴なんだから」

「お前が変な事をいうからだろう」

「そんな事より、姉ちゃんの手伝い引き受けてくれないか。頼むって」

「なんでお前がそんな事を言うんだよ」


「いや、だからさー。俺だってこんなことは言いたくないんだけど、姉ちゃんがお前からも頼めってうるさくてよ。頼む、この通りだ文士」

「断る」ユースケは顔の前で両手を合わせて頼み込んでくる。


「そんなこと言わないでさ~。マジで頼むよ~。じゃないと俺が姉ちゃんに殺されるって」

「そんなの俺の知った事かよ」

「頼む。この通り」

「そんな風に、手を合わせられたところで俺の決意は変わらねえって」


「仕方がない。この通りだ」そう言うとユースケはいかにも大切そうに色紙を差し出してきた。

「うわああ。玖珂らむ子ちゃんのサインじゃねえかよ、すげえ、マジでか、これ本物じゃねえかよ」

「お前にこれをやるからよぉ。頼む。この通り」


サインなんて滅多に手に入るもんじゃないぞ? うわぁ、これは欲しすぎる。でもだからってその仕事をうけるわけには……と思いながらユースケを見ると、ユースケのこれほどまでに必死な姿を初めて見たんだが。

 はぁ。仕方がない。

「分かったよ。その代わり、ユースケお前も手伝うんだからな」


「マジかー。ありがとう文士。文士なら絶対そう言ってくれると思ったよ。ほらこれサインな」

「うぉおお。なんかこの色紙からいい匂いが漂ってくる気がする」


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