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「詳しくと言われても」おぉ。履いているのは黒いパンツか!? 俺的には白いのが好みではあるのだが。
「ねえ訊いてるの。それで、左手で見えるのは、人間の裸だけ? 勿論下着くらいつけているんでしょう」
「白いパン……ではくて」危ねえ。もう少しで魂の声が外に漏れだしそうになったぜ。
つーか、下着なんてつけてないんだってばよ。しかし、それを言うと相手はいくら女とは言え刑事なわけで。
「どうなの」そんな顔で俺の顔を見つめられても困るんだよな。大体一歩使い方間違えれば犯罪者になってしまうわけだろう。
しかし、ユースケの姉さんのこの真剣な眼差し……。
「いや下着はつけてないというか、なんと言いますか」負けた。
「裸っていうのは、全裸って事なのね!? ん、ちょっと待って。という事は、その左手で私の裸も見ようと思えば見えるってことじゃないの。ちょっと、それはマズイじゃない」
いやいや。まだしてもいないことを責めるように言われても。確かにパンツは見てしまったかもしれないが、裸の方はまだなわけでして。
「いや、別にこの左手で見なければいいだけの話ですから」
「ちょっとその左手私にも見せてくれないかしら」
「えっ」
って、俺が返事する前にユースケのお姉さんは強引に俺の手を引っ張ってるし。
「この手で見えるんだ? 不思議ねえ」
そういうとユースケの姉貴は俺の左手を自分の目の所に持って行って、窓の外をてでかざすようにして見た。
「やだ、何も見えないじゃない。どうなってるのよ」お姉さんは俺の手をあらゆる角度に持ち上げる。
「あのですね」
「なによ」そう、怒ったように言われても。
「そうじゃなくて、掌が自分の方に来るようにして見るんです。それでは逆なんです」
「あら、そうなのね。なんだ早く言いなさいよ」早く言うもなにも、俺返事もしていないのに勝手に見てきたのはそっちなわけで……。
「こうやって見るのね。あらー。こっち側にしたところでは何も見えないじゃない」
「……」
「そうだ。あの男の人」
「あの男ってあそこの?」
「そう。あそこで車洗っている人。あのおじさんの裸を見ることができるかしら」
「多分大丈夫だと思いますけど」
「じゃあちょっと、見てみてくれない? それで私にその特徴教えてくれない」
「ユースケのお姉さんってああいう人に興味があるんですか」
「ちがうわよ。そこは全然違うからしっかり否定しておくわね、誤解しないでよね」 なんで俺があんなおじさんの裸を見ないといけないんだよ。などと思いながらも、渋々そのおじさんを左手をかざす優しい俺。




