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「ごめんね。それで話って言うのなんだけど、実はね神永先生には生前本当に色々と助けてもらっていてね。文士君は私がなんの仕事しているか知ってる?」
なんだっけ。そういえばユースケなんか言ってたっけなー。いや、全然思い出せんな。基本的に興味のない事は頭に入れておかない主義であるからな。
「さあ、分かりません」
「でしょうね。ユースケが文士君に私の話をしているとも思えないもの」
「まあ」こういう時は何て答えればいいか分からん。
「刑事やっているのよ」
「漫画とかでは見た事ありますけど、実際に働いているって言う人に初めて出会いました。」しかも、女刑事。最高なシチュエーションだよな、想像してみたときにはさ。
「まぁそうだろうね。悪いこともしていない人には無縁だものね。それで、話がそれちゃったけど、文士君にお願いしたい事をズバリ言うと、捜査に協力して欲しいのよ。もちろん危ない目に合わせるわけにはいかないから、そこはしっかりと守っていくから。それであなたの力を使わせてもらいたいのよ」
「俺の力をですか。ちょっと待ってください急にそんな事を言われても。この左手にこんな力があるって事を知ったのだって、今日の授業中とかなんですよ。まだ操れるだけの技術もありませんし。探偵のお手伝いなんてそんな事、そんな責任の大きい事出来ないッスよ」
「大丈夫。だって神永先生の甥っ子さんだし。君の才能はこれからもっともっと開花するはずだから」
「才能かどうかは。いや……正直言って、そういう争い事には巻き込まれたくないっていうか」こうなったら正直に自分の気持ちを話して正々堂々と断るしかないだろう。
「大丈夫よ。そういう面倒な事にならないようにその辺はこちらがフォローするから。それにその力で困っている人を助けないと神様に叱られると思わない」
「えっと……」神様とか言われても、俺ついていけねえし。
「だからね、その力を大いに社会に貢献すべきだわ。それにそれなりの報酬だって考えてあるしね」そういうとユースケの姉さんは足を組みなおした。三角ラインに目が行く。
「報酬ですか」口に出す言葉と脳内にある事柄が一致していない。今は三角ラインのことしか頭にない。
俺の視線を気づかれないように、わざと欠伸をしたりしてさ。
「玖珂らむ子ちゃんの写真集とかサイン本とかもあげるし」へえー。らむ子ちゃんの写真集を。
「玖珂らむ子ちゃんの写真集!?」
「そんなに大きな声を出さなくてもきこえるわよ」
「すみません」俺としたことが。つい、らむ子ちゃんの事になると制御不能になっちまう。
おい、俺しっかりしろ。
それに、これはきっと罠だぞ!? 第一、俺に刑事の手伝いなんて出来るわけないじゃないか。
いくらユースケのお姉さんの頼みだからって。
「それで、文士君のその左手なんだけど、もっと詳しく教えてもらってもいいかしら」ユースケの姉さんは、その長い髪の毛を耳にかけて訊いてくる。




