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「それで、文士君が霊能力があるのね?」
「はい、霊能力とかまで言えるかどうかは……。でもまあ今日気が付いたばかりでして。いつなくなるかわからないし」
「裸が見えるっていうのは左手だけ? 右手では見えないの」
「左手だけです。右手は見えません」こんな話をしていて大丈夫なのだろうかと少し不安になった。少し間違えれば相当イタイ人間の話だ。
「どうしてそんな能力が急に使えるようになったのかしら。それは叔母さんと関係あるのかな? 神永先生、叔母さんには何か言われた?」
「特に何も言われては無いですけど。そう言われれば」
「なに、何か思い出した?」
「そういえば、夢の中に叔母が出てきたんです。それで貴方に何か力を与えるって言っていて」夢の話なんか信じてくれるのだろうか。でもやはり女性だからなのか、ユースケみたいに馬鹿にしたりはしないんだな。女性ってこういう話が好きって何かの本で見た気がするが、案外本当なんだな。
「なるほどね。ここからは姉ちゃん文士君と二人で話したいからユースケは部屋に戻っててくれる?」
なに、その設定。二人で話すとか。とてつもなく嫌な予感しかしない。頼むユースケ俺を置いていかないでくれ捨てられた仔犬の様な顔をしてユースケの顔を見て助けを求める。
おい、気付けユースケ。
しかし、ユースケはお姉さんにの前では強く出れないのか、何故か部屋の壁を見つめている。
「いやあ、でも」仕方なく弱めすぎではあるが軽めに反論してみる。
「大丈夫よね。文士君。悪い事はしないから。なんだったらもう少し玖珂らむ子ちゃんの写真あげるから。好きなんでしょう?」
「本当ですか」玖珂らむ子ちゃんの事になると、自分が例え不利になろうともOKしてしまう俺。
なんだかもしかして、操られてる!?」
「本当よ。もう少し付き合ってくれたらさ、これドーンとあげちゃうから」
これは。玖珂らむ子ちゃんのカード写真じゃねえか。忘れもしない、金が足りなくて買いそびれていたやつじゃねえかよ。
「す、げえ。なんでこれを」お姉さんもファンなのか?
「うふふ、ちょっとしたコネがあってね」
「文士、俺そろそろ部屋に戻るわ。そのカードもらう為に頑張ってくれ。じゃ」
俺が返事をする間もなく、ユースケはまるでライオンに狙われた獲物にでもなったかの様にしてお姉さんの部屋を出て行ってしまった。
薄情者め!




