志村彩華 side(後編);
最初のは「アヤカがサイナの世界に行こうとする」のシーンです。
細かい事は気にしないで下さい。
《…………………それが、貴女の「望み」?》
そうよ!!でもただ単純に違う世界に連れてくる何て駄目よ。こんな世界では有り得なかった贅沢三昧の暮らしが出来る程の、大国のお城で天使の様に現れて,王族や貴族から愛されるの!!
早くさっさと叶えなさいよ!!
これでこんな世界とはおサラバ出来る!!
アヤカはこれで…………………………あっ、あともう一つお願い事があったわ。
『魔法』が使いたいの。それも叶えて頂戴。
《………………………………。》
何よ? そんな馬鹿面になって。
アヤカは天使の様に現れるんだから、相応しい力を持つのは当然でしょ?
《………「望み」として『膨大な魔力』を与える事は出来る。けれど『魔法』が使えない者が、無理矢理『魔法』を発動させれば…魔力とは別に『代償』が必要となるわ。》
な、何よ? その『代償』って…。
《貴女の場合………“自分以外の周囲の幸せ”を。》
………………………………あっはははははははははははははは!!
脅かしておいて、『代償』が“アヤカ以外の周囲の幸せ”ぇ?
バッカじゃないの?
いいわ!! 良いわよ別に!! 寧ろそれが『代償』でお願い!!
だってアヤカはあんな目に遭ってきたんだもの。
アヤカ以上の幸せ者がいるなんて許せない!!
それにアヤカに幸せを捧げるのだから喜ぶべきよ!!
《………………………バカなのはどっちだか。》
嬉々として違う世界に飛び込んでいったアヤカへの冷たい言葉を。
アヤカは欠片も知らなかった。
■■■
そうしてアヤカは、アヤカの相応しい世界・オルボーア国に行く事が出来たの!!
【魔法を使え、繁栄をもたらす女神として現れた存在。】として!!
オルボーア国の王や女王から「養子にならないか?」とお誘いまで受けて、アヤカが学園に行きたいってお願いしたら四人の護衛まで付かせてくれたの!!
ヨハン=サイクル。ナターシャ=ラプソディ。ランドルフ=ヨルムンガルド。
あとは………誰だっけ?
そして学園でもアヤカはお姫様として君臨したわ!!
アヤカね。向こうの世界で親や友達から酷いイジメを受けてたの…。
いつもお姉ちゃんと比べられてきて。
パパやママにずっと酷い事されてきて。
お姉ちゃんにもいっぱい嫌がらせされて。
学校の皆はお姉ちゃんの嘘を鵜呑みにして。
先生も"少しは姉さんを見習いなさい"って。
毎日毎日本当に辛くてつらく、って………………………………………………………………ってのは実は、ウ・ソ。
あはは!! みんな騙されて馬鹿じゃないの!!
まぁ仕方無いわよね。アヤカは可愛くて演技だって天才的なんだから。
アヤカがちょっと泣いたらみんなコロッと騙される。
みんなアヤカを可哀相だと同情して庇って味方になってくれる。
あいつ等も良い取り巻きになってくれてるわ。
「アヤカ様!! これ、貴女が前に欲しいって言ってたネックレスです!!」
ランドルフはアヤカが「欲しいな」って言った物をぜーんぶプレゼントしてくれるし、
「貴女だけに特別に次のテストの問題の範囲もちょっとだけ教えましょう。」
ヨハン=サイクル…ヨハン先生はテストの内容も半分こっそり教えてくれるし、
「あ、あのね“あーちゃん”…。」
…まぁこいつはアヤカの引き立て役として丁度良いから、親友でいさせてあげてるの。
あれ?確かもう一人いた筈だけど………………………まっ、いいか。
誰もがアヤカを慕っていた。
誰もがアヤカが王女になる事を喜んだ。
【アヤカ様は光と共に現れた異世界の美しき少女。】
【魔法を使え、繁栄をもたらす女神として現れた存在。】
【これで他国や他大陸に脅かされる事もなくなる。】
【オルボーア国は南大陸随一の王国となる。】
【私達の暮らしは一気に楽になるわ。】
【万歳!!】
【万歳!!】
【アヤカ王女様、万歳!!】
あははは!! はは、あははははっははははははは!!!
そうよ!!これよ!!
アヤカはこうなるべきなのよ!!
王女様として君臨して、取り巻く貴族の女共を貶めるのってすっごく楽しかった。
『魔法』で操って、刃物を持たせたり,アヤカに襲い掛からせたりすれば完璧。
悪者に仕立て上げて虐め始めるのって、負け犬の顔っていつ見ても爆笑モノなのよね。
あいつなんてちょっと虐めただけで退学よ!! 根性無いわね!!
でも何か最近『魔法』の調子悪いわね。
『代償』が足りないのかしら? 次のターゲットは誰にし・よ・う・か・な!!
南大陸各地の不作や天災。西大陸への商売品を積み込んだ商船の事故。段々と税金や物価が高くなり、比例して起きる暴動や内乱。更にはアヤカの『魔法』が、オルボーア国民の幸福を吸い取って発動されている事に気付かれちゃった有様。
【我等の幸せを奪った魔女を殺せ!!】
【我等の幸せを奪った魔女に報いを!!】
【魔女を抱き込んだ王族達を皆殺しにしろ!!】
何でまたこんな目に会うの!? 何で、何で、何で、何で!!!
【だから私は反対したのです!! こんな怪しい小娘を王族側に入れておくのは!!】
【このオルボーア国王、最大の失態だ………『魔法』に目が眩み,ワシは…】
【しかも他人を平気で貶めるなんて、何て恐ろしい心を持った娘でしょう…】
王や女王や貴族達はアヤカをあんなに可愛がっていたのに、みんな口々にアヤカを罵る。
うるさいうるさいうるさい!!!
幸せを奪って何が悪いの? アヤカだけが幸せになって何が悪いの?
不幸になるのはアヤカ以外の他人じゃなかったの!?
こんなのって無いわ。ふざけんじゃないわよ!!
ねぇ、こんなの聞いてないわよ!!
『魔法』だってもう使えなくなっちゃってるし、どうしてくれるのよ!!?
元に戻してよ!!
さっさと『魔法』を使えるようにしなさいよ!!
…早くしないとアヤカの立場がやばいのよ。民の暴動は当たり前で、最近じゃ国王側にもアヤカの死刑をしようって言う奴等が多くなってるのよ。
ねぇさっさとしてよ!! ねーぇってばぁあああああああああああああ!!!!
【殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!】
【【【【【魔女を殺せぇえええええええええええ!!!!!】】】】】
ひっ!! もうあいつ等が其処まで来てる!!?
も、もう良いわ!! 早くアヤカを“元の世界”に帰して!!
このままじゃアヤカ、殺されちゃう!!!
ねぇ早くしてよ!! 帰してよ!! ねぇ!! 帰してってば!!!!!
いやぁああああああああーーーー!!!!!!!!
そして【魔女】は捕まり、オルボーア城は陥落した。
捕らえられても尚,彼女に応えるものは何もなく、喚き声だけが空しく響いた。