猫のいる生活の続き
朝は早くない。ゆっくりと目を覚ますようにしている。それ程、夜型と言う訳ではないが、早起きは体に良くない気がしていた。
クロも、そんなライフスタイルに合わせてくれているようだった。食は朝抜きで、昼も軽めである。
「何か食べたい物とかあるかい?」
でも、内容は考える。猫まんまとキャットフードばかりではつまらないだろう。ただ、クロからの返事はない。反応が薄い。モソモソと食べ続け、終わると出入り口から抜けていった。
グルメではなさそう。だとしても、出されるならば、嫌はあるまい。今晩は魚にしてみよう。思い立った拍子で、買い物に出かけた。
お店のさんまは、まだ高かった。鰯は三匹だとお手頃だったので、それにした。家に戻って生姜醤油、他で煮る。クロ用のは少し火を通すだけの焼き具合で。それくらいしか、思い浮かばない。今度は料理の本でも買ってくることにしよう。
6時半になった。器に鰯を一匹入れ、玄関のドアを開ける。クロはかしこまって待っていた。
「ニャー」
「どうぞ、ご賞味あれ」
勢いよくかぶりついている。甲斐があったというものだ。しばらく悦に入っていると、隣の家からさんまの焼ける匂いが漂ってきた。
やっぱり、そっちだったかなぁ。流れてくる香りが高まるにつれ、負けた気分になる。
「ニャー」
クロはもう、食べ終わって、私を見ていた。
「何だかなぁ。今度はあれにするから」
首を傾げている。そうではないよ、というように。
「うまかった?」
「ニャー」
聞いてみると、満足そうな顔つきを見せた。そして、ゴロンと一回転。いつものように外に出ていった。
ぽりぽりと首を掻いて中に戻る。冷めないうちに私も頂くことにした。
夕食はとてもおいしかった。