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5.なかなかドラマチックな展開になりそう

投稿遅れてごめんなさい(汗

《30分が経過しました。只今を持ちまして、『Opened Online Battle Contest 日本大会』本戦への参加締め切りとさせていただきます》


 水分補給をしてシャワーを浴びたあと再ログインした俺は、例の真っ白な控え室でそのアナウンスを聞いた。隣にはナイトが立っている。


「減ったようには見えないな」


 ナイトが首を伸ばして辺りを見ながら言った。それにつられて俺も辺りを見回す。


「そうだな。まぁ実際減っちゃいないだろ。みんなこの大会に出るためにBROやってたような連中だ」


 運営の方も、そういう計算で大会を進めているのだろう。だから残した人数がうまい具合にトーナメント戦ができる32人だったのだ。


《トーナメント戦の組み合わせは事前に決定されています。正面の大スクリーンをご覧ください》


 どこもかしこも純白の壁なので、正直どこが正面なのかさっぱりだが、俺はきょろきょろと全方向を見回して『大スクリーン』らしきものを発見した。


《最下部に表示されているご自分のプレイヤーネームを確認してください》


 俺はずらりと並ぶ32のプレイヤーネームの中から、素早く自分の名前とナイトの文字を探した。俺の名は右端から3番目に、ナイトの名は中央やや左寄りに表示されていた。


 つまり、戦うためにはお互い決勝まで勝ち残らなければならない訳だ。


「ほっほーう、なかなかドラマチックな展開になりそうじゃん」


 ナイトの言葉に俺も頷いて言葉を返した。


「まさかほんとに決勝で当たることになるとは……冗談のつもりだったんだが」

「いやはやまったく」


 俺はガリガリと頭を掻いた。


「あー、さすがにちょっと不安だな」

「なんだよ、自信喪失か?」


 実は図星だが、俺は見栄を張って「お前が残るかどうかだよ」と唇を尖らせた。


《確認はお済みでしょうか。それでは、第1回戦を開始させていただきます。尚、これ以降トーナメント表の左から順に第1、第2試合と呼称し、試合順もその通りに進めさせていただきます》


 数えてみると、ナイトは第7試合、俺は第14試合だった。


《では、第1試合に出場する〈ガウス〉様、〈(よる)(うたげ)〉様を試合場(バトルフィールド)へ転送します。ほかの皆様はこちらの控え室でご観戦ください》


 アナウンスの無機質な言葉と共に、2人のプレイヤーが青い光に包まれてどこかへ消えた。恐らく〈ガウス〉と〈夜ノ宴〉だろう。と同時に、大スクリーンに草原が映る。


《バトルフィールドは無限に広がる草原です。風はなく、樹木や極端に背の高い草もありません。その他の特殊な地形も一切ないので、プレイヤーの能力のみが問われます》


 純粋にプレイヤースキルだけを競える場という訳だ。


《制限時間は設けられていませんが、どちらかのプレイヤーが長時間他方のプレイヤーから逃げ続けるような状況になれば、その時点で逃げていた方のプレイヤーを失格とし、他方のプレイヤーが勝利となります》


 逃げ回って時間稼ぎなんかをすることもできないようだ。随分と徹底している。


《それでは、30秒後に第1試合を開始させて頂きます》


 その言葉からきっちり30秒後にガウスと夜ノ宴の戦いが始まった。本戦に残るだけあって、両者なかなかの猛者である。モニター越しに剣閃が幾度も煌めき、互いにHPを削り合う。


 そして数分後、勝敗が決した。勝ったのは夜ノ宴。レッドゾーン直前までHPを減らしていたようだが、辛くも最後の一撃を叩き込んだ。


《勝敗が決定いたしました。勝者、〈夜ノ宴〉様。〈ガウス〉様は敗北となります》


 抑揚のないアナウンスが告げた。


《それでは続いて第2試合を行います。出場する〈セイレーン〉様、〈アルベルト〉様を……》


 第2から第6試合が終わり、続いて第7試合。ナイトが出場する試合である。


 ナイトの相手は〈ファルト〉という名の男だった。燃えるような赤い髪をした長身の男。ご丁寧に、着ている服まで赤色だ。鋭く光る瞳がナイトを捉える。

 対するナイトは、緊張など毛ほどもしていないようで、ポキポキと首を鳴らしている。飄々とした様子のナイトに俺は安心し、近くの壁にもたれかかった。


《……残り5秒。4、3、2、1―――スタートです》


 合図と同時にファルトが走る。ナイトを鋭い視線で捉えたまま、一気に距離を詰めた。ナイトは応戦するつもりのようで、どっしりと構えて剣を振りかぶっている。


 ナイトの初撃、右薙ぎはファルトに防がれた。ファルトはすぐに剣を弾いて反撃する。ナイトはギリギリと言える間合いでそれをかわし、今度は真上からの斬り下ろし。ファルトは身体を捻って回避。ナイトが剣の軌道を変えて斬りつける。さすがに直撃したものの、ファルトも反撃していた。ナイトの首元を狙ったファルトの銀色の剣が、ナイトのHPを減らす。


 その後もハイレベルな攻防が続いた。ファルトは本戦に残った者の中でもやり手の方だったらしく、さしものナイトも苦戦を強いられた。しかし最後には、HPで常に若干の優位に立っていたナイトが捨て身の攻撃でファルトを突き刺し勝利した。


《勝敗が決定いたしました。勝者、〈ナイト〉様。〈ファルト〉様は敗北となります》


 カメラがどこにあるのか分かっていないらしいナイトが、見当違いの方向へガッツポーズをしたところで彼の姿はモニターから消えた。


 それから続いて第8試合が始まり、第9、第10試合と進んでいく。もうすぐ俺の出番だ。


《……勝敗が決定いたしました。勝者、〈ジュピター〉様。〈ハンク〉様は敗北となります》


 そのアナウンスを持って第13試合が終了。次はいよいよ俺の試合だ。


《それでは続いて第14試合を行います。出場する〈ヴルーム〉様、〈レイ〉様をバトルフィールドへ転送します》


 視界がぼやけ、一瞬暗転する。気づくとそこはだだっ広い草原だった。


《試合開始まで30秒です》


 俺の相手となる〈ヴルーム〉とやらは、淡い青をした髪の、若い男だった。携える剣は青銅色に輝いている。


《……残り5秒》


 俺は愛剣を左側に構え、足に力を入れた。


《4、3、2、1―――スタートです》


 その声が聞こえた瞬間、俺も相手も地面を蹴って接近していた。

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