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15.やはりコイツには言っておくべきだった

 後日―――。


「おにいちゃん!」


 俺が数学の問題集を解いていると、慌ただしく玄関の扉が開けられた。


「おにいちゃんおにいちゃん! お、にい、ちゃんっ!」


 キキーッ、と効果音がつきそうな勢いで俺の部屋の前で急停止したのは、もちろん俺のいもうと、綾だ。


「どうした? そんなにはしゃいで」


 コイツのテンションが高いのはいつものことだが、今日はそれに輪をかけて興奮している。


「実は……じゃんっ!」


 綾は後ろに回していた両手を前に突き出した。持っていたのはなにやら四角いパッケージ―――。


「あ!?」


 それが何であるかを理解した俺は、驚愕と興奮を混ぜ合わせた声を出した。


「そう! もうすぐ発売の新作VRゲーム、『Fantasy World Online』です! ベータテスターに当選しちゃいましたー!!」


 そう、それは、OOBCが始まる遥か前から開発が進められ、大会が終わった当日にベータテストの開始日が発表されたRPGゲームなのであった。


 このゲームは、ありがちなタイトルからも分かるように、ストーリーに重きを置いたものではない。VRMMOにおける剣と魔法のバトル、これが実装され、BROで俺たちが戦い続けた成果がここで発揮されることになる。そして何といっても、公開されたスクリーンショットに見られる凄まじいグラフィック。VR技術を使ったからこそ再現できる世界観。これが魅力の一つとされるゲームだ。


 これだけ詳しく知っているのは、俺がゲームに未練タラタラな証拠でもある。


 だがテスターに選ばれたのは綾だ。俺はこのまま集中して勉強に取り組むことが……。


「しかも!」


 俺の思考を綾の声が遮った。


「おにいちゃんの分も当選しちゃいましたー!」

「嘘……だろっ……」


 俺は文字通り絶句した。


「勝手に応募してたんだ、ごめんね」


 明らかに謝る気がない、というかむしろ褒めてくれと言わんばかりのキラキラ光線が瞳から照射されている。


 やはりコイツには言っておくべきだったかもしれない。本格的に受験勉強に取り組むため、しばらくゲームには触らない、と。


 しかし時すでに遅し、「いやーそれにしてもきょうだいそろって当選しちゃうなんて、あたしの強運も伊達じゃないよねー!」とか言っている綾の手には、2人分のゲームソフト。そして俺は根っからのゲーマー、新しいゲームに挑戦したくない訳がない。


 いや! この程度意志の力で捻じ伏せ、このまま集中して勉強に取り組める環境を……。


「しかもね、このゲーム、ベータテスト終了時に一番多くモンスターを倒してたテスターには、賞品としてレアアイテムをプレゼントするんだって! 燃えるよね!」


 もうベータテストに参加しない理由がない。いつの間にか俺は問題集を閉じ、綾からソフトを受け取っていた。


 綾がプライオリティチケットを購入していたのが後日発覚して、ほんの少し何してくれてんだよと思うのと同時に、かなり感動した。さらにその後、何気なく見た綾の机の傍のカレンダーの10月9日、俺の誕生日にオレンジ色のペンで花まるが描かれているのに気が付いて、さらに感動した。


 アイツの誕生日には、何でもないような顔をして新作のゲームソフトを押し付けてやろう、と思った。

15話というキリのいい話数で完結です。まぁ実際は第0話があるので16話分なんですがね……。

こんな拙い練習小説に付き合っていただき、ありがとうございました!

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