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9.敵は「はぁ?」みたいな顔をしている

 左から迫る刃を自分の剣で防ぎ、左脚を軸に半回転、右足で敵の腹部に蹴りを叩き込む動きの止まった敵に左薙ぎ。敵の頭部を水平に斬る。頭を斬り裂かれながらヒューバーンはナイトの懐に潜り込み、腹を薙ぐ。


 ナイトは右手首を捻って切っ先をヒューバーンに向け、そのまま自分の懐めがけて突きを放つ。ヒューバーンは回避を試みたが、ナイトの剣が肩口に突き刺さる。さらにナイトは左手で剣を敵の移動方向とは逆に押し、回避の勢いを利用してダメージを加えた。ナイトはそのまま離れようとしたが、今度はヒューバーンがそれを許さない。再び腹部を狙って薙ぎを放ち、逃げに回ったナイトを追いかける。


 紅の剣が帯を引いてナイトを貫く。それを認識したナイトは瞬時に足を止め、至近距離の相手をぶった斬った。


 ここまでの攻防を終え、2人は距離を取った。一言二言何か言い、ナイトがニヤリと笑う。


 2人が再び地面を蹴った。ヒューバーンが両手で赤銅の剣を振るう。ナイトは体勢を低くしてそれをかわし、敵の足下を薙いだ。しかしヒューバーンはジャンプして回避、空中から垂直斬りを放つ。ナイトは横に転がってかわす。


 地面スレスレまで落ちた赤銅色の剣が、短い草を掻き分けてナイトに迫る。ナイトはよく分からない体勢で防ぎ、勢いを利用して立ち上がった。


 ヒューバーンはそのまま攻撃を続ける。ナイトの頭部右側に赤い剣が迫る。彼は腰から上を捻って剣を交差させ、ぐっと力を込めて弾いた。そのままトライブローウィン(笑)の要領で回転し、三発どころか四発もの斬撃を放つ。当たったのは最初と最後の二発のみだが、こうなるとなおさらヴルーム(笑)のトライブローウィン(笑)が残念すぎる。


 ナイトの口が動いた。笑いを堪える顔をしている。


 あいつ絶対クアトロブローウィンとかアホなこと言ってる。想像するに難くない。敵は「はぁ?」みたいな顔をしている。バトル中の音声はモニター越しの控え室には伝わらないので、ヒューバーンはトライブローウィン(笑)のことを知らないのだ。


 ヒューバーンが「はぁ?」みたいな顔をしている間にナイトは距離を詰め、腹部に左薙ぎ。ヒューバーンは後退しかわす。ナイトは再び前進し、右斬り上げを放った。こちらはヒット。


 ヒューバーンが足を止め袈裟斬りを放つ。ナイトは不意を突かれたようで喰らってしまう。だがすぐに突きを放ち返した。腹を貫通する。そのまま剣を上に持ち上げ、敵を真っ二つに斬った。実際は斬れていないが、これは大ダメージだ。


 だがHPを削り切ることはできない。今度はヒューバーンの反撃。真正面から唐竹。ナイトは剣が上に流れているが故に防ぐことができない。横に跳んでかわそうとするが、肩から縦に斬り裂かれた。


 恐らくあと一撃ナイトが加えられれば勝利なのだが、その一撃が決まらない。ヒューバーンも分かっているのだろう、一撃も喰らわないように動き回っている。


 ナイトの左薙ぎ。ヒューバーンが防ぐ。剣を弾いて右斬り上げ。一歩下がったナイトの鼻先に掠った。しかしナイトは構わず前に出て、刺突を放った。ヒューバーンの腹を掠める。あと少し。


 ヒューバーンは腹を括ったのか、渾身の水平斬りを放つ。ナイトのHPにもそれほどの余裕はない。これが当てればかなり危ないだろう―――が、当たらない。身を屈めて回避すると、お返しとばかりに真下から一刀両断にした。


 ヒューバーンが水色のポリゴン体になって消滅する。ナイトは小さなため息をついてからガッツポーズを決めた。今度はきちんとこちらを向いていた。


《勝敗が決定いたしました。勝者、〈ナイト〉様。〈ヒューバーン〉様は敗北となります》


 アナウンスが終わると同時に、ナイトの姿がモニターから消えた。


「お疲れさん」


 戻ってきたナイトに声をかける。彼は少し疲れた様子で手を上げて応えた。


「いやーそろそろ怖くなってくるなぁ」

「どんどん敵も強くなるからな」


 回を重ねるごとに勝ち残るプレイヤーの質も上がってくる。戦闘時間としては短くても、恐ろしい駆け引きというものはあるのだ。


「でもお前、そんなこと言いながら途中でクアトロブローウィンとかアホなこと言ってただろ」

「言ってた言ってた。分かった?」


 クックと笑いながらナイトは言う。俺の読みはやはり当たっていた訳だ。


「分かるわ! 全然余裕だったじゃねぇか」


 俺も笑いながら言うが、ナイトは「んなことないって」とやはり笑いながら否定した。


 言い合っている間に第3試合、ゼウス対フェニックスの無敵対決が決着した。勝ったのはゼウス。不死のはずのフェニックスは、全智全能の前に沈んだ。


《それでは続いて第4試合を行います。出場する〈レイ〉様、〈パーターピン〉様をバトルフィールドに転送します》


 俺は噴いた。

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