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闇のそこから  作者: 兵頭
2/4

狗と姫と兎

第二話

最初の出会いは単純だった。

ひどく人間くさい関係だったのだ。

従姉の嫦娥じょうが。彼女もまた、異能者だ。

その、恋人。

僕はまだ小さかったし良く分からなかったけれど

そういう関係なのだと思った。

普段彼女はやたらしゃべらないし、確かに綺麗だけれども

それを補って余りあるほどに無表情だ。

しかし彼の前だけでは、饒舌で、そして笑うのだ。


「だって、彼は孤独だもの

 それは私の求めている孤独なのよ」


そういって笑う彼女を、僕は美しいと思った。


「彼が、そうなんだね?」


師匠が最初に言った言葉はそれだった。


「そうよ

 あなたに似ているでしょう?

 でも、この子は孤独じゃない

 しらないだけなのよ、それを」


「そうかい、彼は十分有望だろう?

 初めまして、だね

 久遠くとう綜嗣そうし

 久遠はもともと狗頭と書く

 狗神筋の血筋だ

 君は・・・『兎』か・・・」


そういって目を細めた師匠に僕は「狩られる!」と思った。

実際はそんなことはなかったけど。狗というより狼だ、と思った。


「兎は嫦娥を守ってくれる

 君の一族は全身なんだねぇ

 すこし、うらやましい」


何のことか分からない僕は嫦娥に助けを求めた。

彼のことは何でも話してくれる。

いつもは誰のことも、何も話さないのに。


「彼の一族は狗頭、つまり狗神の頭だけなのよ

 各地にある狗神筋は体であったり足であったり、

 皆なにかしらの部位なのよ

 そうでないものはもともとたいした力もないから

 とっくに滅びて邪念だけが残ってるようなものね」


「じゃあ、僕の体は邪念なの?」


「そういうことにあるってだけさ

 そもそもそうした人自体少ないだろう?

 他にも見た事あるか?」


「あるよ!変な紙で変な人を呼び出したり

 なんか鳥とお話してたり!」


まるで外国人のように肩をすくめて彼女は言った。


「ね、こうなのよ

 親しみすぎたのかしら

 根本的な違いが分からないみたい」


「そうか・・・

 じゃあみせてやろうか、俺の姿」


「トラウマになるからやめて」


「そんなにひどいかな

 軽くショックだぜ」


「心にもないくせによく言うわね」


「ははっばれた?」


いたずらを見つかった子どものように舌をだして

笑い出す師匠を見て、違和感を感じた。例えば現代演劇を見ているような。

リアルだけれどそれは決して現実じゃない。

そんな、予感。


「そう

 それは正しい予感なのよ、邑見」


嫦娥は心が読める。

というか勝手に入ってくるのだそうだけど。

しゃべらなければ、心を開かなければ聞こえないから

話さないし笑わない、と聞いたことがある。


「彼は人じゃない

 ましてや狗に喰われた『獣』じゃない

 中途半端な妖でもない

 彼はそういうものだし、それを突き詰めていくでしょうね」


当時の僕には何のことだかさっぱり分からなかった。

一つだけ分かったことは、『それ』とやらを突き詰めることは

じょうがを悲しませるということだ。

なぜなら彼女は少し、ほんの少しだけ泣いていた。

当時の僕はそれに気づいていながら何もしてあげられなかった。

きっと師匠も気づいていたのだろう。

しかし師匠は、そんな僕らを見て、笑っていた。


笑っていたのだ。


それから少しして僕は師匠に再会することになる。

僕が師事することになる一人として。

祖父からは、同じ力を持つ先人として、とだけ紹介された。

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