第三話
女性というのは、本当に男性と比べて、複雑かつデリケートである。性別は関係なしに、人の気持ちは簡単に変えられないのだが、意中の女性を自分の事を好きにさせることよりも、意外なことに体の関係を持たせることの方が簡単なのである。
こんなことをいうと、女性から非難の声を浴びせられるかもしれないが、納得する女性の方が実は多いと思う。
その理由は、やはり女性の心は複雑かつデリケートで、その時の雰囲気や状況で体を許してしまうものである。お酒が入っていたというのも多少あるが、一番の理由は淋しいのと何かに満たされていない気持ちが強くなった時に許してしまう。それでも、男なら誰でもいいとは、さすがにならない。多少、気になる相手か、悪くはないかなと思っている相手ではないと、まず、そこまでの展開にはならないだろう。
体を許す前に、手を繋ぎ、体を寄せ合い、抱きしめて、キスをする過程で、本当に嫌いな相手なら、最初の手を繋ぐ段階で拒否をする。いきなり、本番はただのレイプであり、犯罪だ。
一夜限りの……とかもあるだろうが、略奪愛に限っては、ほとんど、一夜限りではない。体は求めなくても、会うたびにキスを重ね、この関係が一体何なのかと、少しずつお互い疑問に感じてくる。僕の場合では彼女はこう思うだろう。
彼氏がいるのに、なぜ、キスをしてしまうのだろう?
彼氏の事が大好きなのに、なぜ、この人と二人きりで会って、体やキスを求められても拒否をしないのだろう?
なぜ、この人は私には彼氏がいるのに諦めず、積極的にアプローチをしてくるのだろう?
だんだんと訳が分からなくなり、彼女自身は疑問と気持ちに応えられなくて申し訳がない気持ちが入り混じり、そんな感情が永遠と心の中で繰り返される。そして、彼氏とうまくいっていないのならば、余計に悩み苦しみ、私は一体何なのかと、自分自身が嫌いになり、人が嫌いになり、もう何も考えなくてもいい世界に行きたいと妄想にふけだす。
けれども、やっぱり淋しいので、それを彼氏が満たしてくれないなら、言い寄ってくる男性に……と変な話、妥協してしまう。
悲しいかな、そんな心の隙を狙っていくのが略奪愛である。
それはまさしく遠くの恋人より近くの愛人である。