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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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奇跡はたった一度だけ?

掲載日:2026/08/07


十歳になると、村の神殿に行って、スキル鑑定とやらをしてもらう。

それがウチの村……というか、国の習慣。

だから、俺も鑑定をしてもらった。

どんなスキルに当たるかなーなんて。

ちょっとわくわくしながら。


スキルっていうのはどういうモノかと言えば、「勇者レベル200」とか「魔法使いレベル1000」とか「剣聖レベル50000」とか、すんごいのもあれば、「水魔法レベル1」とか「運の良さレベル2」とかしょぼいものもある。


ちなみにウチの父親のスキルは「天気予測レベル30」

農民にとっては明日の天気を知ることは大事だから、なかなかに役に立つらしい。


ちなみに母親は「土魔法レベル50」

おかげで母親の作る野菜の質は良くって、市場でもちょびっとだけ高値が付く。

ほんのちょびっとだけどね。肥料なんかなくても、水だけやっていれば、すくすくと育つ野菜。ありがたい。


で、俺のスキルは「奇跡レベル無限大」だった。

鑑定してくれた神官様が腰を抜かすくらいに驚いてた。


「奇跡だけでもありえないのに、レベル無限大? 何だこれは……」


村の神官様では判断できないとかで、、大きな街の神殿に連れていかれた。


そこで再鑑定。


で……。


やっぱり間違いなく「奇跡レベル無限大」

……間違いとかじゃなさそう。つまり、奇跡を、何回も、いくらでも起こせるってこと? 

うわ、怖! 

それじゃ俺、願いをなんでも何回でも叶えられる、神様級のチートスキルの持ち主ってこと⁉


鑑定してくれた街の神官様も、驚愕の顔。


「……大神官様……、いや、神官長様……」


ほえ? 大神官? 神官長? どっちが偉い人? 分からないけど、オレはお偉いさんに会わないといけないわけ? 大ごとだなあ……。


農民の十歳の男の子が王都でお偉いさんによる鑑定……なんて言われれば、ビビるかもだけど。

一応ね。

俺にはね。

前世の記憶というヤツがある……。


今の俺、農家の子のアレンとして生まれる前は日本という国で生きていた大学生だった。ラノベとかアニメとか、そーゆーのにどっぷり浸かって、大学の勉強は……まあまあ、そこそこ。

でもこの成績じゃイイトコロに就職なんか無理だよなーって思って、資格でも取るかーって、思っていたところで事故でお亡くなり。チーン。南無南無。


ま、よくある異世界転生。

貴族でチートバリバリで、ラノベの主人公みたいな波乱万丈な人生はノーサンキュー。だって、オレは、基本的に怠け者。

チート持ちの主人公なんて向いてない。

村人その1でいいんだよ。

なのに、奇跡ねえ……。

なんてこったい!


それで、俺は王都にある大聖堂にまで連れていかれた。

で……、大神官様? もっと偉い人? に再々鑑定。


結果「何でも叶えられる奇跡が起こせるけれど、その奇跡はたった一回のみ使用可能」だそうで。


あはははは。

一回! 

よっしゃ! 

無限大だけど、無制限ではないっていうところがポイントだったか。

セーフ!

ラノベでよくある「酷使される聖女様」みたいに、ぼろ雑巾にはならずに済みそうだ!


ま、でも一応確認。


「えーと、奇跡レベル無限大って何でも叶うってことですか?」


聞いてみた。


「そうです。死者の復活もきっと可能です。これは、上に報告しなければ……」


ぶつぶつと唱えながら、大神官様は、ふらふらとした足取りで報告とやらをしに行こうとして、

うーん。

上って何かなあ……国王陛下とか?

あはははは。笑っちゃうなー。

やっぱり俺って何かのラノベの主人公に異世界転生したのかなー……。主人公、面倒だなー。なんて。


でも、奇跡レベル無限大なんてパワーワードはしらないなあ。

俺の知らないラノベとかアニメとか?

うーん……。

それとも

単なる異世界転生だけで、ラノベの主人公に転生ではない……とか? 

それもあり得るかなあ。


乙女ゲームの悪役令嬢とかじゃなくてよかったと思うべきか?

奴隷からの成り上がりで後のハーレムの王なんて言うのもラノベにはよくあったけど。


……うーん。面倒だよなあ。最低限しか動きたくないんだよなあ。


下級貴族あたりが良かったけど、農民でも文句はない。

別に風呂キャンセル界隈ではないけど、それほど清潔さにはこだわっていない。

だから、似非中世ヨーロッパ的世界の農民の子でも別にね、べつに平気。

ご飯さえ、ある程度まともに食べていればそれでオッケー。

清潔さとかもねぇ、暑い時期には水浴びするし、寒い時期にはお湯で湿らせたタオルで体を拭けばそれでいい。

たいたい日本とは気候が違う。高温多湿じゃない、湿度の低いこの国で、汗はあんまりかかないんだよね。


のほほーんと農業やって、のほほーんと暮らせればオッケーじゃん?

寝るところがあって、美味いもんが食えればそれでよし!

父と母が生きている限り、スキルの恩恵で、そこそこの収穫が約束されているようなもんの農家だよ! 飢饉とか飢餓とかは多分無縁! 農民だから貧しいってことはない! ビバ! 父と母のスキル!


だったら、主人公やって、激動の人生なんてやらないで、のんべんたらりと農業やって生きていたい。

マジモンの農家の皆様は大変だろうけど、スキル持ちの農家なんて、食べ物には困らないもんな!


そんなオレなのに。


奇跡。

しかも無限大。


わー……。


どうしたらいいかなー。

楽して生きたいなー。


死者の復活も可能って言うのなら……、あ、そうだ。閃いた!

王城の離宮とかで保護してもらってさ。

たとえばお姫様とか王様とかがうっかり死んじゃったときに、奇跡を起こして生き返らせるってのはどう?

一回こっきりの奇跡だもん。

そんでもって、お王様とかって死にたくないーとかいう人たちでしょ?


奇跡の力を一回使うまで、オレは王城で、生活を保障されつつキープしておいてもらえれば、人生楽勝!

よし、万が一王様とかに出会えたら、それ、提案してみよう!


……って思っていたのに。


そうは問屋が卸さない。

人生は甘くない。


オレは、王様から、勇者パーティに同行して、魔王を倒す旅に出ろと命じられてしまった……。


がーん!



 ***



「何故、このような者を連れて行かねばならないのだ!」


勇者レベル9000というものすごいスキル持ちの第七王子様に、オレは睨まれた。

ついでに言うのなら、魔導士レベル12000の侯爵令嬢、聖騎士レベル15000の伯爵令息たちからもだ。


「……すみませーん、オレも行きたくないんですー。でも王命で」


へらっと笑った。


ご身分の高い王子様やお貴族様からすれば、何もできない農民の子である俺なんかが、どうして勇者パーティに組み込まれるんだって、疑問というか、不満に思うだろう。

うんうん、よく分かるよ。


「農民ですからー、王命には逆らえませーん」


馬鹿みたいに伸ばした口調で、へらりと笑ってやる。


「キサマのせいで、魔王を倒す旅の進行が遅い」


そりゃそうでしょ。王子様たちは十代後半もしくは二十代前半。

大人だよね。

オレは子ども。

前世の知識云々は横に置いておいて、身体が子ども。

しかも舗装された道路ではなく、山道とか林とかも森とかを徒歩で歩く旅。


第七王子が一歩で歩ける距離を、オレは二歩で歩く。

第七王子が速足で歩いても、オレは自分のペースでゆっくり歩く。

平地ならともかく、沼地とか山道では、歩くペースはさらに開く。


だいたいさあ、十歳の子が朝から晩まで歩けるわけないだろう。

休ませろ、がおー!

大人とは体力が違うんだい!


なのに、第七王子は睨んでくる。


「早く歩け! 遅れるな!」


命じられても無理なものは無理。


「あ、じゃあ、先に逝ってください。オレは後から追いかけるんで」


……ちなみに誤字じゃないよ。さっさと逝けよ。


あとからゆーっくり追いかけて、で、死んだ勇者たちを見て。


「おお! 勇者よ! 死んでしまうとは何事だ!」って嘆いてあげるからさ。


あと別に、オレが一人で置いてけぼりにされても構わない。それで魔物に囲まれても構わない。

奇跡の力を使って、オレの村に帰るからね!

はーい、奇跡の無駄使いー。

てめえらのために奇跡なんて使ってあげないよ☆


「キサマっ!」


王子様は睨んでくるけど、どーでもいい。


「でも、一緒に行かないと、オレの奇跡の力で勇者様たちを勝たせることはできませんよ?」


多分、側に居ないと奇跡のスキルは発動しないからね。

魔法じゃないから、事前に王子様たちに「魔王を倒せる奇跡」とかを掛けておくことはできない。

だって、スキルだし。

奇跡は元から掛けておけるものじゃなくて、起こすものだしねえ。


「キサマなどがおらずとも! 私たちだけで魔王は倒せる!」

「そうですねー、だったら、オレを置き去りにして、さっさと先に魔王城へ向かって下さいませー」


へらっと笑ってやったら、激高した王子様は、お仲間の侯爵令嬢や伯爵令嬢、お付きの者たちを引き連れて、ハイペースで魔王城へと向かった。

オレは一人取り残されて。


あっはっは。

オレが単なる農家の十歳の子どもだったら、ひいひい泣いていたかもね。

でもオレは、前世の記憶があるし。


のほほーんと、自分のペースで、ゆっくりと魔王城へと向かう。


いや、別に村に帰ってもいいんだけど。


アイツらの末路くらいは確かめよーかなーって。

あと王命違反とか言われると困るからね!


王子様たちは、相当怒っていたのか、行く先には魔物の死骸がごろごろしていた。

わー……。


おかげで安全。それから食うモノには困らない。


魔物の生食は……ちょっと、アレ、だけど。

焼いて食べたいなーと思いつつ、あと、お腹壊さないといいなーと思いつつ。

とりあえず、死骸を食いつつ何とかたどり着いた魔王城。


で、やっぱり死んでいた王子様たち。


あはははは。


そんでもって、魔王っていうか、魔物の女王様みたいな人がいた。


「あー、こんにちはー、初めましてー、オレ、人間の、農家の、子どもでーっす。名前はアレンです!」


圧倒的力の差があるのを知っているのか、逃げも隠れもしない女王様。

かっこいいなー、美人だなー。


「……変わった子どもだな。我が恐ろしくないのか?」

「いーえ? 全然。カッコイイっす!」


下半身が蜘蛛的なアラクネ系美人の魔王様。お姉様系超美人、胸が大きくて、すらっとした体。黒くて長い髪。素晴らしい。


「……本心のようだな」

「あ、心読めちゃう系の魔王様ですか⁉ うわー、ますますすげえ」


心から褒める。

パーフェクト、魔女王様! サイン、下さい! 推せます!


ちょっとふざけてみたけど、本心は本心。


「あ、オレはですねえ、そいつらの末路を確認しに来ただけです! 倒してくださって、ありがとうございまーっす!」

「……お前は勇者どもの仲間ではないのか?」

「違いまーっす。王命で、仕方なく同行させられた一般人です! ついでに言うと、オレ、そいつらマジ嫌い」

「……なるほど」

「一応、王命では。万が一勇者たちが死んだら、オレの奇跡のスキルで復活させろって言われてますけど。嫌いなヤツラ、生き返らせるほど、オレは善人じゃないですし」

「なるほど」

「それにねえ、もう一回生き返らせたところで、魔王様、こいつらなんてまたサクッと倒せるでしょ」

「まあな」

「だから、無駄な奇跡は起こしません! でも大嘘だけど、俺はスキルは使って、王子様たちを復活させたけど、生き返っても、二度目も負けましたーって報告するつもりです」

「いいのかそれで」

「んー……、スキル使ってないってバレると問題かもですが。なんかテキトーに奇跡のスキル使っちゃいましょうか。魔王様、ご希望とかあります? 人間殲滅とか。お薦めですが」


人間撲滅したら、王様に報告もいらないか。


「……お前はそれでいいのか?」

「うちの両親とか友達とかが、生き延びて、フツーに農業やって暮らせればそれで」

「こちらの魔物たちにも、人の肉を好む者がいるので、殲滅は……」


あー、なるほど。人間を食べる魔物がいるのに、人間がいなくなったら困るわな。

人間牧場作って、ブロイラー化するのも手間だろうし。

養殖物より天然モノを希望するかもね。


「あ、じゃあ、こういうのはどうです? 魔物の縄張り、人間の縄張り、そこにはお互い入らない。ただし、間に緩衝地帯を作って、その緩衝地帯では、魔物は人間を狩りたい放題」

「はあ?」

「人間だってねぇ。縄張りに居れば安全だけど、わざわざ緩衝地帯に行って、魔物を狩るぜえええええ! とか、魔物素材で一攫千金なーんていうヤツら多いと思うし。殺し殺されは、緩衝地帯でのみ。お互い自己責任で!」


そーいうのがいいと思うんだけどね。

魔物狩りたい人間と、人間狩りたい魔物たちのエリアを作って、そこに入ったら、お互い狩っていいよ。実力勝負だよ。

でも、オンリー魔物エリアに人間は入っちゃダメ、オンリー人間エリアに魔物は入っちゃダメ。

そういう協定、作ればいいでしょ。


「お前……すごいことを考えるな……」

「協定だと破る魔物と人間、いるかもだから、奇跡で実現させちゃいますねー」


で、奇跡してみた。

そしたら、できた。

三つにエリア区分。

奇跡、便利。


「そんじゃあ、オレは帰りまーっす。王子たちの遺体を持って帰らないといけないのかな。めんどくさいな」

「うむ。我の力で王都まで転移させよう」

「あ、ありがとうございまーっす! 素敵、魔王様! 大好きです!」


やっぱ魔王様推せるステキ! とか思って、軽~い気持ちで好きって言ったら魔王様、ぽっと顔を赤らめた。

うおおお、かわいー、美人ー。



というわけで、ご遺体は王城へ。

オレは親元へ。



さて、奇跡の力もなくなったので、あとはのんびり農業に勤しむかーと思ったのに。


何故だかオレの村までやってくる魔王様。

えーと、ここ、本当は人間エリアだから魔王様の立ち入り禁止なはずなんだけど。

魔王様は、その魔力によって奇跡の力が及ばない?

そうだったらますますすげー。


「……まだ幼いのでな。十年くらい待って、成長したらアレンを娶るか」なんて、ぶつぶつ言っているけど。


ふお?

もしかして、魔王様がオレの側に来られるのは……愛の力か? 


それとも……、神官たちの鑑定が間違えていて。本当のオレのスキルは奇跡の力を何度も使える……とかだったりしてな。


無限大無制限の奇跡。たった一度だけとは限らない。


だとしたら……魔王様とのしあわせなラブコメ的世界に、この世界を改変しちゃおっかなーなんてな。あはははは。





終わり







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