第21話 女神の話
『それで本題に入りますが、天音さんに依頼するのは基本的に人助けです』
「人助け⋯⋯救世主ではない?」
『そうではありません。天音さんが行う人助けは救世主に匹敵する行いになります。だから救世主とお伝えしました。何も間違いはありません』
「救世主級の行い⋯⋯それで私は誰を助ければいいの?」
『助けてもらいたい人物は三人。いずれも邪神を倒す英雄になる人物なんです』
「英雄を助けるのが私の役目なのね」
『はい。ただ時代も背景も違う場所での活動になりますのでアバターは三人分用意しました。助ける人物にもっとも近づける位置に降りられるよう最大限手配したつもりです。色々と大変とは思いますが英雄三人は邪神討伐にどうしても必要な人材。物語で云えば主人公とサブ主人公になるでしょうか』
「それは分かったけど、私は三人にどう関わればいいの?」
『私が言う場所に向かってもらいます。そこで彼らは苦難に出会う。その苦難を天音さんの力てサポートして欲しいのです』
「起きる事が分かっているなら女神の力で何とか出来るんじゃない?」
『天音さん、起きる事が分かっていても苦難を止める事は出来ません。それが運命なんですから。彼らはその苦難を乗り越えて成長を果たし、邪神との最終決戦に挑むのです。苦難は彼らが成長する為にどうしても必要なものでした』
「そうなんだ。運命は決定されていて彼らは苦難を乗り越え成長するという事なんだよね?だったら尚更私の出る幕はないじゃない。余計なお世話になっちゃうよ」
『だったら良かったんです。本題の本題はココからなんです』
「本題の本題???」
『邪神アロウスの力は一瞬ですが私を超えた力を発揮します。その力は私の上、創造神ラストラディーゼ様と同等。つまり私の時と運命を司る力に介入出来るポテンシャルを秘めてしまいました。なので三人の苦難を最悪の苦難まで引き上げる事が可能となっているんです』
「うわっ、それって運命の書き換えが出来るって事でしょ?どうにもならないじゃない」
『だからそれを防ぐ為に、だからこその天音さんなんです。天音さんには三人の苦難に居合わせてもらい、その苦難を乗り越えるサポートして下さい。そうする事で邪神に越えられないよう改変された苦難は試練に変わり、彼らの成長に大きく貢献する事でしょう。そして英雄となり三人が協力する事で初めて邪神を倒す事が出来るのです』
「うわぁ、私の責任重大じゃん。救世主の契約、反故に出来ない?」
『天音さん?!』
「冗談だけど、こんなの成功するか分からないんじゃない。私には荷が重すぎだよ」
『天音さん、大丈夫です。天音さんにはその苦難の時、彼らの側に居てくれるだけでいいんです。天音さんは異世界地球の住人で、その地球の固有魔力を持っています。それは邪神から識別出来ない特別な魔力。つまり邪神がどう三人の運命を書き換えようが、認識出来ないイレギュラーの天音さんが彼らの側に居る限り不確定要素は無くなりません。つまり運命を定めるには天音さんというピースをしっかりと認識する必要があるんです』
「成る程?つまりイレギュラーの私が存在する限り邪神は運命の書き換えが出来ない、そういう事なんだね」
『その通りです。ですがそれは自ずと天音さんの存在が邪神に知れる事にも繋がり、下手をすれば邪神が直接天音さん排除に動く可能性にも繋がります』
「それってヤバいやつじゃない!!」
『ですが逆に三人の運命改変時期までは邪神に天音さんを知る方法も無いのです。天音さんはそれまでに三人に会い、彼らに苦難を乗り越えられるだけの情報と力を与え、その時期がきたら速やかに地球に避難して下さい』
「了解、一緒に居るだけなら何とかなりそう」
『但し気をつけて下さい』
「何を??」
『アロウスは一度限りの強力な武器を持っています。それは回避不能な究極の一撃、いかなる防御も効かない絶対無比の武器、アロウスの矢です。三人が苦難を乗り越えてしまった場合、邪神アロウスは彼らを確実に殺す為に必ずこれを使うでしょう。これが放たれれば三人が死ぬまで誰にも止める事は出来ないのです』
「は?回避不能で絶対無比って、どんだけよ!そんなの、同対処しろって言うの?!」
『⋯⋯天音さん、それでも天音さんが彼らの苦難の場に居る事で、この脅威から三人を守る事が出来るとしたら天音さんはどうします?』
「それはどういう意味?私が英雄三人の側に居れば苦難は乗り越えられるだけじゃなく、その邪神の矢からも三人は助かるって事なの?」
『天音さん、これから私が話すのは天音さんのアリアに対する気持ちに反する事になるかも知れません。それでも聞きますか?』
「私のアリアに対する気持ちに反する⋯⋯だとしても聞かないと私は選択も出来ない、そういう事じゃないの?そして三人を救う事も出来ない」
『⋯⋯その通りです』
「だったら聞いて判断するよ。それで聞いた上で、私のアリアへの気持ちも守って三人も助かる選択肢を探し出す。それでいいと思う」
『⋯⋯⋯分かり、ました。やっぱり天音さんを選んで良かった。アナタならそう言うと思っていました。その天音さんの気持ちはアリアの魂にも必ず届くと女神フォルトーナの名にかけて約束しましょう』
「有難う。この身体は私の全身全霊をかけて最後まて守るし、大事に使わせてもらうわ。それでアロウスの矢から英雄達を守る方法ってどういうものなの?」
『では言いますね。怒らないで聞いて下さいね』
「怒る?私が怒るの??」
『はい、十中八九』
「は?」
『では言います。英雄三人を守る方法は⋯⋯』
❇❇❇
「あ?」
うん、またうつらうつらしてたらしい。
女神からの依頼を思い出していたようだ。
だけど最後のはフザケた話だった。
絶対にそんな事にはならないわ。
私が両方とも守って見せる!
「だとするとアリアのイベントはもう少し。確か、勇者のイベントだったよね」
勇者とは創造神ラストラディーゼの加護を持つ聖剣の主の事だ。
この世界において唯一邪神に直接的な攻撃が出来るレアな聖剣エクスキャリバー。
彼はこの世界の最終局面において最も重要な役目を担う。
だけどそれを目指すきっかけとなる、最初の苦難が彼に訪れてしまうのだ。
「だけど先ずはアリアの身体を救うのが先。このままでは私自身が要救護者の状態のままだわ」




