第20話
ガバッ
「は?!」
チュンチュンチュンッ
ココッココココッ
「朝⋯⋯」
朝目覚めた時、太陽は既に結構な高さになっていた。
最初は月(ヒューズ2の月は3つ)みたいに太陽も複数あるのかと疑ったが、流石に太陽は一つだったようだ。
鳴き声がするので窓を見てみたら、小鳥のような小動物が窓枠を止まり木に戯れ合っている。
やっとまともな野鳥が見れたと思ったら、ソイツらは小鳥サイズの羽根あるトカゲだった?!
スズメっぽい声なのにトカゲとか驚き過ぎて声にならない。
テスト的にアリアになっていた時にも遠目に鳥だと思われる群れを目撃したが、どうやらアレもトカゲだったようだ。
この世界に小鳥は存在しないのだろうか?
小鳥を愛でたい私の気持ちを返して欲しい。
これが日常なんだろうけど、暫くは地球とのギャップに悩む事となりそうだ。
「なんかフォルトーナの夢を見た気がする。はっきり覚えてないけど彼女からの接触があったのかな?もしかして帰還の障害が解消されたとか」
寝起き直ぐに地球への帰還を試みたが、やはり『マイホーム』の呪文?は効果が無かった。
ガッカリして起き上がり溜め息をつく。
干し草のベッドから起き上がってみたが、身体は未だふらついておぼつかない。
やはり倦怠感は残っていて、アリアの身体は相当に疲れている事が分かる。
これで足腰も駄目なら立つのは厳しいか?
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」ぐっ
足に力を込めて分かったが身体には普通に立って歩けるだけの力は戻っていた。
まともに休息を取れたのはそれなりに効果があったようだ。
思えばアリアで覚醒して殆どのシーンで倒れ込んでいた。
今日はこのまま倒れずに過ごしたいところだ。
「⋯⋯空、尊、大」
今一番気になる事は義弟達の安否。
女神のシステムが生きているなら、私が戻る時は地球時間の数秒後。
瞬きにも満たない僅かな時間しか経過しない筈なんだけど、ヤッパリ目の前に三人が居ないのは不安でならない。
ただ仮にシステム不具合で時間経過が此方と同等に進んだとしても、私の長期不在を雅子さんなら必ず助けてくれるだろうとの期待はある。
それくらいにコーチンおばさんと義弟達の絆は強くなっていた筈で、もちろん私の存在が要らないとかではなく、万が一の事態でも彼女には安心して義弟達を任せられるとの信頼があるという事なんだ。
ぐ〜っ
「とにかくここでボーとしていても何も始まらないしジリ貧なのは確か。結局食べれなかった巨大鳥に体力だけ削られて背中と胃がくっつくくらいに腹の虫が泣き止まないのが今の現状。早急に食べ物を見つけないと動けなるのは目に見えているんだよね⋯⋯」
昨日は巨大鳥の解体で鼻が曲がるほどの臭さの中、無理して食べた巨大鳥の肉がまったく噛めずに吐き出し結果食べられなかった。
体力が限界で解体作業を中途半端に就寝するしかなかったが、それは本来なら危険な行為で他の野生肉食系動物に餌でアピールする様なものだ。
当然他の肉食系動物の襲撃を予測したが、幸いにも朝起きて辺りを見回した限りでは小屋の内部に異常は見受けられない。
少なくとも危惧した小屋を破壊出来るくらいの、他の大型野生動物は現れ無かった、という事なのだろうか?
小屋外は分からないが、とにかく小屋自体はスルーしてくれたようだ。
今は自身の無事に安堵しかない。
案外巨鳥は他の生物からも食べられない存在として認識されているのかも知れない。
不味いし私は全く歯が立たなかったからね。
「はぁ、貧乏くじを引いた訳だ。そして小屋の外に出れば、またあの臭いに悩まされるのか?」
ガタッガタッガタン
と、嫌々ながらも小屋の引き戸を開けて解体途中である巨鳥の死体を確認するが、そこには在るべきものが無い??
「こ、れは⋯⋯⋯⋯」
地面には重量物を引きずった跡。
つまり巨鳥の死体は何者かに持っていかれたという事実。
ブルッ
「ヤバかった。やっぱりアレを食べる野生生物は存在したんだ。しかもあの巨体を引きずって持っていけるだけの力がある!」
私は思わず身震いした。
巨鳥の身体を引きずった跡は、ずっと先の森にまで続いていた。
つまりあの森にはアレを引きずって持っていける生物が生息している事になる。
何て場所に小屋を設けたんだ?!
あり得ないだろう。
「アリアはこんな場所に住んでいた?いや、追われて逃げてこの場所に辿り着いたのか」ぐっ
彼女の無念に改めて拳を握った。
アリアの過去に思いやるに、こんな危険地帯にまで逃げなければならなかった彼女と保護者達の思いはいかばかりだろうか。
そして彼女は追跡者から逃げられはしたが、既に麻薬の副作用で肉体はボロボロだった。
そしてこの地に埋葬されたのだ。
「女神の助力で仮死状態に生かされたアリアの肉体。麻薬中毒の痕跡は感じないけど、私が入った事で中毒症状はリセットされた?」
多分これが正解だろう。
フォルトーナはそれも見越してアリアの肉体を仮死状態に保存してたのだ。
とはいえ蘇生して極限状態な筈のこの肉体。
それほど苦に感じないのは私の魔力が関係している?
「魔力が肉体に生気を与え最低限の体力確保にも影響を与えているのかも。うーん、異世界アルアルでご都合主義は存在した?」
それは中学の親友がよく口にしてた言葉。
いわゆる主人公補正というヤツらしい。
(主人公はご都合主義に守られて物語のハッピーエンドを迎えるのよ。主人公補正というの。だから安心して読んでられるわ)
「⋯⋯ならこの過酷な現状も主人公補正で乗り切りられるのかな?だといいんだけど」
ただ私はこの話に懐疑的だ。
何故なら私はこの世界の主人公達を知っている。
そう、知っているのだ。




