第2話
コケコッコー
❇❇❇
「はへ?!」
朝起きたら時間はまだ4時50分?!
くそぅ、スマホのタイマーが鳴る前に隣りの家の名古屋コーチンに起こされた。
毎朝、あの雄鶏は良く鳴き過ぎでしょ!
「う、何か変な夢を見た気がするけど、はあ、まあいいわ。とにかく起きてチビ達の朝飯を作らんと」
と着替え始めた私。
パジャマ脱いで下着に手を掛けたところで、足元にある紙切れに気付く。
何だコレ?
「宝⋯⋯くじ???」
それは1枚の宝くじ。
しかもスクラッチのその場で当たりが分かるヤツだ。
ああ、そう言えばバイト先のコンビニ店長から昨晩プレゼントされたんだっけ。
何か店長が私の誕生日を知っていて、誕生日プレゼントにくれたヤツだ。
アイツ私に気があるのか、履歴書の生年月日を見て昨日が私の誕生日だと知ったらしい。
勝手に人の個人情報見て活用とか止めて欲しいわ。
それにどうせプレゼントなら、うちは店の消費期限ギリギリのオニギリとかの方が有り難いな。
親父が失踪して家計がカスカス、もう高校通うのも無理じゃないか。
「⋯⋯ふう、今は考えるの止めとこ。先ずはチビ達の準備だわ」
❇❇❇
「「「ママー!」」」
「ママじゃない、おねーちゃんよ!」
「「「ママーじゃない、おねーちゃん」」」
「よろし。(ママーじゃない)は要らないかな」
朝8時30分、三人の5歳児に着替えさせて食事終わして今この時間。
家の前で一番遅い順番の保育園バス待ちまでこぎつけるには、これが精一杯で限界だった。
いや息切れしてるもん。
ブルルルッガチャン
「はい、到着。皆さん、おはよう御座います」
「「「おはよーござます」」」
「ございますでしょ!」
「「「おはよーございます」」」
「よし、おはよう御座います」
「今日もお父さんの代わり?天音ちゃんも大変ね」
「ははは、宜しくお願いします」
「「「ママー、バイバイ」」」
「おねーちゃんだからな」
「天音ちゃん、すっかりお母さんね」
「ははは、おねーちゃんす」
ガチャンッブルルルッ
「じゃ、預かります。また17時にこちらで」
「はい、お願いします。いってらっしゃい」
ブウゥーン⋯⋯。
ふう、やっと三つ子を送り出した。
朝の戦争が終わり。
じゃ、学校に向かいますか。
だけど当然ながら学校は遅刻。
一応学校には事情を言って朝の1時限授業を未出席、放課後に授業内容の要点を文書で貰い何とか授業にはついていってる。
高校は続けたいけどチビ達の保育園代も大変だし、親父から預かってた銀行預金もそろそろ底かなぁ。
失踪した親父が戻れば何とかなるけど、何だか望み薄だよね。
そもそも失踪の理由が親父の再婚した義母の急死だから、はっきり言って先が見えない。
❇❇❇
いや義母は本当に出来た人だったよ。
いきなり親父から『運命の出会いがあったから、是非に天音に会わせたい』なんて言われた時は、45歳にもなって何が運命の出会いだよって思ったんだけど、いやはや義母は親父には勿体ないくらいの美人で気が利く出来た嫁だったさ。
正直私の元母はくず。
親父に内緒で男こさえて離別したんだし、私も放ったらかしで育ったから殆ど元母には未練無し。
その点義母は私にも木っ端恥ずかしいくらいの愛情があったし、連れ子の三つ子にはそれはめい一杯の愛情があったさ。
因みに義母の前旦那は死別だった。
親父の親友だったらしく、前旦那が死んだ時に親父が色々と義母を支えたのが愛情が生まれたきっかけだったみたい。
もちろんその時には私の元母は既に離縁していたから、一応不倫とかでは無かったよ。
それで義母の旦那の一周忌後に電撃入籍とか、案外親父もやるもんだと思ったよ。
まあ、義母の旦那が元々親族も居らず、色々なしがらみも無かったから、二人だけで決断出来たのが大きかったかな。
それで絵に描いたような再婚して、めちゃくちゃ幸せそうだったんだ。
そう、あの不治の病が無ければね。
再婚して僅か数年で義母の不治の病が発覚。
幸せの真っ最中から地獄の底に急降下だった。
結局不治の病発覚の3ヶ月後に義母は逝ってしまい、当然ながら三つ子達には伝えられず、親父は暫く部屋に籠もって出て来れなかった。
無理もない事なんだけど一家の大黒柱が引き篭もりは家計的には厳しくて、当然ながら会社は解雇で三つ子の世話は私しかいない。
それが高校1年生の私の肩に、全てがのしかかった瞬間だったんだ。
義母が来る前から一家の食事当番をしていたとはいえ、一気に家族が増えたばかりか大黒柱の引き篭もりで収入源が途絶えた。
最悪な星回りかと思ったさ。
だけど誰かが支えなきゃ義母に申し訳ないじゃない。
結局というか私が矢面に立つしかなかったんだ。
だけどそれから数ヶ月後、引き篭もりの親父が失踪した。
はあ?って空を仰いだよ。
元々親父は真面目を絵に描いたようなところがあって、それが長所であり短所だったんだ。
義母の死は親父の真面目な性格からは、あってはならない事柄だったのかも知れない。
だけどさ?
私はともかく、まだ幼子の三つ子までいるんだ。
一家の大黒柱だし、それなりに責任があったハズなんだ。
それがあろう事か引き篭もりの末に失踪だと!
流石に親父に愛想が尽きたところだ。
だけど男のくせにとか、大黒柱なくせにとかは言わない。
こういう時って強いのは女の方だからね。
結局最後まで家を守るのは、やっぱり女だったって事なんだよな。
パンッ
「ともかく一々嘆いても仕方が無い。これからは何事もポジティブにいかないとね」
自身の頬を叩いて気合いを入れ直した私。
こんな事でめげるものか。
ふと、ポケットに手をやったら何かに当たった。
それはバイト先店長がくれた、あのスクラッチ宝くじだ。
「ん、気分一新で削ってみるか!」




