09S.椿郎と由美子
「バージン・ツリー」の物語が、一段落すると今度は、暫く「狭間の世界」と成った「右側神の世界」の、とある団地の1室が、これから語られる物語を、鑑賞出来る、舞台と成りました。そこには、この世界のインカ達が、暮らしました。名前で言うと「城ヶ崎椿郎」と「鳴神由美子」の2人でした。
椿郎は「右側神のインカ(化身)」で有り、由美子は「左側神のインカ」でした。このインカには、属性が2つ有り、それぞれ男型と女型のインカが、存在しました。左右神のインカが、同時に存在するときは「男女の位相」に、成りました。即ち男同士とか、女同士の組み合わせは、ここでは有りませんでした。
彼等の出現パターンは、左右神どちらかの世界に成り、物語が始まった世界が、自分の世界で有る場合に「男型のインカ」に、成りました。そしてそれに、従うように、他のインカは、女型に成りました。例えば、今回のように「城ヶ崎椿郎」が、出現すれば、その舞台は「右側神の世界」と、言うことに成り、その世界に呼ばれた、左側神のインカは、女型に成りました。
今回のお話しは「左側神のインカ」が「右側神の世界」に、呼ばれたので「鳴神由美子」と成り、椿郎に支配される、お話しに成ります。前回の舞台が「左側神の世界」で有ったので、今回の舞台が「右側神の世界」に、成ったようでした。
また、今回のメインの物語が「中央神の世界」と「惑星アデルの世界」に成ったので、椿郎達は「狭間の世界」と成った「右側神の世界」に於いて、無害な傍観者と成り、物語の始めから、終わりまでを、見届ける「デュデス(役割)」を「全知全能の神」より、授けられました。
また「右側神の世界」では「左側神の世界」の一部の魔人類達のように、生まれた時の性が、思春期を迎えると別の性に変わることは、有りませんでした。この現象は、特殊な魔人類達の特徴で有り「左側神の世界」では、彼らのことを「バイチャー(両性交互態)」と、呼びました。今回の「右側神の世界」では、然程重要な、事件は起こりませんが「中央神の世界」では「神界のアンバランスの解消」が、先程一部が、終わったばかりなので、次の「重要な物語」が、始まる前に、今回の出来事が、起こりました。
「鳴神由美子」は、長い眠りから覚めたように、目を覚ましました。強い男の匂いがしたので近くを見ると、隣に「城ヶ崎椿郎」が、横たわって居ました。彼女は、それを見ると、強い恐怖心を持ちました。その為、急いで、そこから、離れることにしました。彼女は、服装を整えると、その場から逃げようとしました。そして後ろを向いて、その場から離れようとした処、椿郎の大きな手に、彼女の足首が捕まりました。そして彼は「何処に行こうとして居るのかい、由美ちゃん。」と、言いました。彼女は、転びそうに成りました。そして彼の物凄く強い力で、足首を捕まれたまま、足を高く掲げられました。
彼女は、短めのスカートを履いて居た為、奥が丸見えに、成りました。そして必死に前を、隠しました。彼女は怒って椿郎に、言いました。「何をするの、危ないじゃないの。私は只トイレに、行こうとしただけなのに。」と言って、椿郎を叱りました。彼はニヤニヤしながら黙って、彼女を見ました。彼の手が緩んだので、彼女はそのまま、トイレに行く振りをしました。
彼女は、部屋の外を出て行きました。トイレの場所は、分かりませんが「その内に、見付かるだろう」と、思いました。背後から人の足音が、聞こえたので、振り向いて見たら、そこには椿郎が、付いて来ました。彼女は驚いて、走って逃げました。彼女の靴は、踵の高いヒールでしたので、思うように走り切ることが、出来ませんでした。
直ぐに椿郎に、追い付かれると、彼が言いました。「由美ちゃんは、トイレの場所が、分からないと思って、教えてあげようと思い、追って来たのだよ。突然逃げるなんて、酷いよ。」と、彼は言いました。彼女は、取り繕う振りをして「ビックリしたので、早く行こうとしただけよ。」と、言いました。
彼は「トイレの場所を知って居る。」と、言ったので、彼の案内に、従うことにしました。トイレの場所は、由美子が行こうとした方向の逆でした。そこは中々広くて、清潔で良いトイレでした。由美子は、椿郎には何も言わずに、女子トイレの中に、入りました。
由美子は、トイレの一室に入ると、蓋を開けて、便座に座りました。さぁ、これからどのようにして、椿郎の元から逃げようかと、彼女は考えました。ここは、高層ビルの一室でした。外には出られませんでした。ここに長く籠って居ても椿郎のことです。外で待って居るのは、分かり切って居ました。
由美子は、トイレに籠ったまま、結論が出ませんでした。そして時間だけが、過ぎました。するとトイレの外で、音がしました。誰かが入って来た気配でした。それは、由美子の部屋の前で止まると、飛び上がりました。そして天井の隙間から、椿郎の顔が出て来ました。
すると、彼が言いました。「由美ちゃん。うんこして居たの。物凄く臭いよ。拭いて上げても良いよ。」と、言いました。由美子は、大きな悲鳴を上げると、そのままドアを飛び出して、急いで逃げて行きました。
彼女は、パニックに成りました。いつもそうでした。椿郎が、由美子の傍に居ると、こうゆうことが、しょっちゅうでした。彼は、由美子の幼馴染みでした。いつも隣に居るような、存在でした。良い時でも悪い時でも、いつも近くに居る存在でした。
「鳴神由美子」の容姿は、中肉中背で肌色が白い、綺麗な娘でした。黒茶の髪をツインテールにして、黒目勝ちの大きな瞳でした。彼女は胸も大きくて、いつも良い匂いが、漂って居ました。椿郎は、彼女の匂いが、大好きでした。
由美子が、逃げ回って居ると、いつの間にかビルの外に、出ることが、出来ました。彼女は、慣れないヒールで、走って居ると、ガラの悪い男達と、接触しました。彼等は、急に騒ぎ出して、由美子に絡んで来ました。彼女は、謝りましたが、許してくれそうも、有りませんでした。そして変な男が、由美子の身体を、触ろうとしました。彼女は振り切り、大声を上げました。するとガラの悪い男達は、急いで彼女の口を、塞ぐと、どさくさに紛れて由美子を、暗がりに連れて行き、凌辱しようとしました。
すると何処からともなく、椿郎が現れて、由美子を助けてくれました。彼は筋肉質で、浅黒くて、大きな身体でしたので腕力が強く、数人の男達を瞬く間に、叩きのめすことが、出来ました。由美子は、唖然としましたが彼女は、窮地を救われました。由美子は、椿郎にお礼を述べると、彼が言いました。「由美ちゃんは、物凄く良い女なので、気を付けないと、直ぐにやられてしまうぞ。特に今日の服装は、男が見るとムラムラして来るので、僕の傍から離れない方が良いよ。」と、忠告してくれました。
今日は、椿郎からは、逃げられなかったので、彼に大人しく、付いて行くことにしました。椿郎は目的地が有ると、とても歩くスピードが、速く成りました。由美子は、必死に成り、彼の後を付いて行きました。大分歩きました。由美子が椿郎に、言いました。「ねぇ、椿郎くん。何処に行こうとして居るの。」と、彼に聞きました。すると彼が、答えました。
「やだなぁ由美ちゃん。行く場所は、僕等の部屋に、決まって居るじゃないか。僕等は、姉弟なのだから、同じ部屋で暮らして居ても、何も問題は無い筈だよ。もう何年も一緒に、暮らして居るじゃないか。」と、言いました。それは由美子に取っては、初耳でした。
「嘘よ。そんなことないわ。私は貴方のことを良く知らないし、でも幼馴染みと言うことは、認めるわ。でも一緒に暮らして居るなんて嘘よ。絶対嘘。そこまで貴方とは、親しくない筈よ。」と、由美子は答えました。すると椿郎が、言いました。「あれぇ。今日の由美ちゃんは、少し変だね。記憶が混沌として居るようだね。君が倒れたと、連絡が入ったので、僕は君の姉弟なので、君を迎えに行ったのだよ。」
「そしたら僕は、君の隣で、寝てしまったのだよ。」と椿郎が、教えてくれました。「椿郎が、自分の姉弟だって、どっちが年上の姉弟に成るのかしら、それは驚きだわ。誰が、決めたのよ。」由美子は、椿郎に詰問しました。彼女は、混沌として居ました。
後で自分達の関係を、椿郎に聞くと、幼馴染みで有り、血の繋がらない姉弟の設定に、成って居ると、言いました。そのことは、右側神が左側神から分離したことに、起因して居るとも、言いました。また男女間の関係も有ると、言いました。その話しを聞くと、由美子はゾッとしました。「何でも有りの関係ね。椿郎は驚異の存在だけど、少し様子を見た方が、良いわね。」と由美子は、思いました。