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02S.聖母樹の片鱗

その新たに出現した「ツリーマン」は、突然この世界に現れた「存在」のようで、全く他者とのコミュニケーションが、取れませんでした。彼には目的地が有るようで、シロが住んで居るエリアを、目指しました。その為、彼がそこの麓に現れると、彼を止めようとした「麓のツリーマン達」と、騒ぎに成りました。


「妖精アイリス」が、シロに言いました。「彼は、貴方に会う為に、遠い場所から歩いて来ました。大丈夫です。彼は貴方の味方です。だけど彼は、まだ生まれたばかりの存在なので、人型との〝コミュニケーション″が、取れません。それでも時間が経てば、時期に慣れるでしょう。そうですね。それまで貴方が、彼の面倒を見てあげると、良いでしょう。彼も、その方が喜びます。」と妖精が、シロに助言しました。彼女は、薄汚れて居た彼を、良く見ました。シロは、何故だか分かりませんが、彼を見て居ると、嬉しく成り、抱き締めたく成りました。


麓のツリーマン達は「蓮沼シロ」が、この得体の知れない「第3種」のことを、シロが受け入れたことに、驚きました。この者は、彼等には出来なかった、シロの領域に、入って行けました。そしていつの間にか、そこで暮らすように、成ったのです。


シロは、彼が汚かったので、エリア内に在る「沐浴の泉」で、彼を念入りに、洗うことにしました。彼は、シロに導かれると、素直に従いました。そして彼女に、洗って貰いました。髪を切られ調髪して、タオルで身体を拭いて、貰いました。不思議なことに、ここではシロが思って居ると、彼女が欲しいものが、現れました。


シロも何故、そのようなものを、自分が知って居るのか、それが不思議でした。彼女が昔、前世のような処で、使って居たものが、この「不自由な世界」で、それを帳消しにしてくれるように、現れました。しかしそれは「生活必需品」に、限りました。


沐浴が済むと後は、簡易的な服の着替えが、現れました。暫く彼は、それを着て、ここで暮らすことに、成りました。幾分シロの家が、広くなった気がしました。ここでは、住居までもが、シロの生活スタイルに合わせて、自動的に変化してくれる、とても「便利な世界」でした。


こうして「シロと、この者」は、この小さな家で、2人で暮らすことに、成りました。それも「妖精アイリス」の勧めが、有ったからでした。妖精も、ここで暮らすことに、成りました。シロは、自分の名前を「蓮沼シロ」だと、この者に教えました。彼も幾分、発音が出来るように成ったので、自分の名前は「ノエル」だと、言いました。シロは、その言葉を聞くと、何故か嬉しくなり、涙が溢れて来ました。


「妖精アイリス」が、言いました。「ノエルは、ロザリーの恋人です。」と、教えられました。しかしシロには、その名前に、身に覚えが有りませんでした。ただ「ノエル」と言う響きは「とても好きだ」と、思いました。


やがて時間が経つと彼は、この世界にも十分に慣れました。今ではシロとノエルは、とても仲良く、暮らしました。彼にも「妖精アイリス」が、見えるようで、3人で楽しく、暮らしました。その様子を「ツリーマン達」も、離れた場所から見て居ました。いつしか麓のツリーマン達も、シロ達の生活の真似を、するように成りました。彼等も「簡易型の家」を建てて、女型と男型で対に成り、暮らし始めました。


シロの住んで居る「生活エリアの中心」には、何かが繁ったような片鱗へんりんが、見られました。しかし、そこには何が有ったのかは、今時点では、良く分かりませんでした。シロ達が住んで居る場所が、この世界の中心でした。これから彼等は、この「中央神アラル」の世界で「神界のアンバランスの解消」を、することに、成りました。しかしそれを、どのようにすれば、解消することが、出来るのか、今は誰も、分かりませんでした。


麓のツリーマン達の代表者3人が「シロとノエルの元」に、やって来ました。年長者から名前を「バイラス」「バラゴ」「ジャイガ」と、言いました。リーダー格の「バイラス」が、シロに言いました。「シロ様、シロ様。作物が多く実ったので、お裾分けです。」と言うと、作物を彼女の家の前に、置きました。


シロと、麓のツリーマン達との関係は、良好でした。シロは、ねぎらいの為に「エリアの広場」で、彼女達に飲み物を、用意しました。そして暫く、彼女達との会話を、楽しみました。


バイラスは、ツリーマン達を代表して、シロに尋ねました。「シロ様、あの第3種は、何者なのでしょうか。」と、長年の疑問を、彼女に伝えました。するとシロが、答えました。「彼は、私の恋人です。これからも私は、ノエルと2人で、ここで暮らします。」と、言いました。バイラスが静かに、うなずきました。


そして彼女からの次の質問は「シロ様も、ツリーマンなのでしょうか。」と、尋ねられたので、シロは次のように、答えました。「私も貴方達と同じ存在です。しかし若干違うようです。ここに居る、新たな存在と成るノエルも、ツリーマンですが、私と同じで、貴方達とは、少し違うようです。」とシロは、具体的に何が、ツリーマン達と自分達が、違うのかは、答えませんでした。そのような回答でしたが、彼女は取り敢えず、それで納得したようでした。


今度はバラゴが率直に、シロに尋ねました。「私達は、何故ここに居るのでしょうか。」その質問にシロが、頷くと彼女は、こう答えました。「それは、私も同じことです。私は何故、ここに居るのでしょうか。その答えを私も、探して居ます。私の存在は、ここでは1番古いようですが、私が目覚めたのは、つい最近のことです。」


「でも私は、この世界〝中央神アラル″様の世界を、導く〝デュデス(役割)″を、与えられたようです。私は、アラル様の声を聞くことが出来ます。そしてアラル様は、貴方達を〝導け″と、仰って居ます。」バラゴは、その答えを聞くと、安心しました。


「蓮沼シロ」は、ジャイガを見ました。彼女はシロと目が合うと、軽く会釈をしました。彼女からの質問は、有りませんでした。年長者のバイラスは、20代後半の女型の美女で、ツリーマンの第2世代でした。そしてバラゴとジャイガも女型でした。2人共、10代半ばの第3世代に、当たりました。シロは、この第3世代達と同世代のように、見えました。


「バイラス」の容姿は、長身で身体が細くて、栗毛色の長い髪を、背中まで伸ばしました。眉毛が細く色白で、女型は乳房が、膨らんで居ましたが、乳首が、有りませんでした。若い従者のバラゴは、バイラスをそのまま若くしたような、小柄の若い娘の姿でした。バイラスとバラゴは、同じ「魔人樹メイジン・ツリー」から、生まれたようで、容姿が似て居ました。


「バラゴ」と、生まれた時期が、同じで有る、もう1人の従者は「ジャイガ」と、言いました。彼女の容姿は、バラゴよりも大人びて居ました。彼女も栗毛色の直毛で、バラゴよりも背が高くて、品位が有りました。彼女が「次の代表者」に、成るような、風格を持ちました。


ツリーマンは男型・女型共に、肌色が白くて細身で有り、髪が茶色の直毛でした。それは何処か、植物繊維のような質感を、持ちました。彼らは皆、物静かで、知的な魔人類でした。「中央神アラル」は、暴力を好まず、生物の生殖行為を、嫌いました。質全的に生物の大量繁殖が、嫌いでした。そして知的で上品なものを好みました。


また左右神の世界を興味深く、いつも見て居ました。中央神が好いたもの「人型や動植物」を捕獲して、自分の世界に、持ち込みました。「中央神アラル」の世界は、神のこだわりの世界でした。


麓のツリーマン達の代表者で有る「バイラス」は、良くシロの元に来ては、彼女の手伝いをしました。シロも良く彼女と、楽しく会話をしました。そしてツリーマン達の問題の解決を、考えたりもしました。そして、暫く経つと、麓の魔人樹から、新しいツリーマン達が、生まれました。「第4世代」の誕生でした。


ツリーマンを、生み出すことが出来る「魔人樹メイジン・ツリー」は、15年に1度の割合で「ツリーマン」と、呼ばれる人型の魔人類達を「果実の実」のように、地中に張り巡らせた、根から球根に変わるように、その中で芽吹いて育って、生まれました。彼等の誕生が近づくと、土から頭部が現れ、膜を破って誕生しました。


樹木のようなものから、動物が生まれました。彼等は、生まれたときから、人間の子供のような姿でした。彼等は、土から自分で出ると、今では前世代のツリーマン達に、取り上げられ、保護されました。生まれた根から「分泌される樹液」を飲んで、大きく育ちました。


生まれたばかりのツリーマンは、基本的には同じ魔人樹から生まれた先代に、引き取られて、大きく育ちました。生まれた子供が15歳に成ると、次の世代が、生まれました。次の世代の子供達が、生まれると「年長者のツリーマン」が「最後の教育」を、しました。そして一通りの子育てを終えると、彼らは土に帰りました。それが、この世界の魔人類達の、基本的な一生でした。

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