11S.武史郎の登場
「鳴神由美子」は、物凄く淫靡な体臭を、発散しました。これは彼女特有の「発情期」の兆候でした。椿郎は長年、由美子と一緒に住んで居たので、彼女の兆候を、知りました。彼女の発情期は、その匂いで度合いが、分かりました。椿郎は前以て、彼女がそうならないように、いつも由美子のことを、小まめに管理しました。それは、椿郎自身が、したい為では有りませんでした。いつも「彼女の発情期」を、抑える為に、彼は前以て小まめに、行動しました。
彼女の発情期を、ほっとくと彼女は、暴走しました。それは手当たり次第の男漁りと、成りました。しかし彼女は「普通の魔人類」ではなかったので、いくら他者としても、彼女を鎮めることは、出来ませんでした。彼女を鎮めることが、出来るのは「城ヶ崎椿郎」ただ1人でした。由美子は、そんなことも忘れました。
椿郎も性欲は、強い方でしたが、由美子の方が数倍も、勝りました。その日も由美子のそれが、始まると夕方から、終わりまで只管由美子は、椿郎におねだりしました。彼女は「独特の体臭」を、有しており、その匂いに椿郎は、敏感に反応しました。その日の晩も、彼等は只管に、励むことに成りました。すると彼の背後から、何やら人の気配を、感じました。
その者は一体、何処から入って来たのでしょうか。「椿郎の部屋」は、戸締りが万全でした。気が付くと椿郎の背後に、その者が現れました。その者は、忍者でしょうか。または得体の知れない、霊体で有るのかも、知れませんでした。
しかしその者は、男型をした実体でした。彼の名前は「蓮沼武史郎」でした。彼の容姿は、椿郎とは真逆のようでした。背が高くて色白で有り、上品な感じのする、痩せてスラっとした好男子でした。
背後に気付いた椿郎は、振り返って彼を見ると、悲鳴を上げて驚きました。それは、いつものことでした。彼は、いつも椿郎の背後から現れました。そして彼は、武史郎を見付けると、激しい怒りが込み上げて来ました。それは由美子との秘め事を、彼に見られたせいも、有りました。
しかし椿郎の怒りは、長続きしませんでした。いつものように、激しく怒ると、その反動で直ぐに、無感情に成りました。それは自分自身に怒って、気が付くと目が覚めると言う、謎めいた行動と似て居ました。
椿郎が、言いました。「何だ、武史郎君か。びっくりしたよ。君は、いつもそうして、僕が驚く処に、立って居る。それは、わざとやって居ることなのかい。」と彼は、精々皮肉を込めた言葉で、彼に問い詰めました。すると武史郎が、答えました。
「僕は、やっと〝バージン・ツリー″から解放されて、君達の所まで戻って来られたのだ。向こうの世界では、僕の中に女の子が居たので、そのまま僕は、女型に成った。しかしその因子を、その中に置き去ることが、出来たので、僕は本来の〝無性魔人″に、戻ることが、出来たのだよ。」
「そして僕は、やっとそこから解放されて、仲間で有る君達の元に、戻ることが出来たのだ。そしたら君等が、秘め事に励んで居たのだ。ただそれだけのことだよ。計画性など初めから、練られる余裕など、無かったのだよ。」彼は、淡々と述べました。
そしてまた、言いました。「椿郎君、由美ちゃんがまだ、満たされて居ないみたいだから、もっと一杯してあげてよ。僕には、それが出来る、君のような器官が無いので、由美ちゃんの性欲を、満たすことが、出来ないのだ。それは、君にしか出来ないことなので、宜しく頼むよ。」と、彼は言いました。
無性魔人の「蓮沼武史郎」には「男型のもの」が、有りませんでした。彼は、左右神から生まれた最新の「神の化身」でした。その為、後継者を残す必要性が、無いのです。彼の「デュデス(役割)」は、左右神を管理して、その方向性を導くことでした。
その点、左右神のインカには、生殖器が有りました。それは彼等から、最新の神で有る「中央神のインカ」を、誕生させる為でした。椿郎は、彼が「もっとやって」と、言いましたが、言われて出来るものでは、有りませんでした。しかし満足しない由美子が、許してくれる訳が、有りませんでした。椿郎は、武史郎が居る前で、行為の続きをしました。
由美子は、いったん発情した最中は、誰が傍に居ても、お構いなしに、乱れました。そして長い行為が、終了しました。由美子は、余韻に浸りながら、やっと正気に戻りました。そして彼女も、漸く、武史郎の存在に、気付きました。
彼女は、急に羞恥して「やだぁ、武史郎くん、貴方最初からずっと見て居たでしょう。その無表情な顔を見れば、直ぐに分かるわ。貴方の人の悪さは、インカ一だから。」と、彼女は見られた腹いせに、精一杯の皮肉を込めて、彼に言いました。
「妖精アイリス」の見解通りに「蓮沼武史郎」は「無性魔人」として、この世界に、降臨しました。インカ同志は引き合うので、この「狭間の世界」で、再会を果たしました。この世界で「中央神のインカ」は、何をしようとするのでしょうか。武史郎が2人に、言いました。
「僕の身体の中に、女の子が居たときは早く、お父さんとお母さんに、会いたいと、願って居たけれども、その両親とは〝蜃気郎とホタル″のことを、言って居るのです。それは残念ながら、君等の〝別バージョン″を彼女は、お望みだったのです。しかし今の僕は、女の子の抜けた〝無性バージョン″に、戻って居るので、そのような望みは、はなから持ちません。」と彼は、従来通りの見解を、述べました。
「中央神のインカ」で有る「蓮沼武史郎」は、生殖器の無い「無性魔人」でした。彼の性別は、男女どちらでも無い「無性」で有り、どちらかと言えば、彼の精神性は、男型に、近いものを、持ちました。その為、彼の正式名は、男型に付けるような、名前でした。
その無性因子で有る、彼のアニマスに「ホムクロンのロザリー」と言う、女型の因子が、加えられたことにより、女性器を持つ「無性魔人ジェンダレス」が、生まれました。そのように変化した彼女は、その当時、同じ「インカのツガイ」で有る、蜃気郎とホタルの子供として「左側神の世界」で、生れました。後は、それに続く、物語通りの結末を、迎えたわけです。
椿郎が、言いました。「君が既に、ここに居ると言うことは、もう由美ちゃんと、僕の子供として、君が生まれる可能性が、無くなったと、言うことなのか。」と、武史郎に質問しました。すると彼が、言いました。「現時点では、確かにそうなるが、妖精アイリスは、何と言って居るのかい。」と、由美子に尋ねました。
すると由美子が、言いました。「暫く前から〝妖精アイリス″は、何処かに行ったわ。直ぐに戻ると、思うけれども。いつものことだから。」と、彼女が答えました。「妖精アイリス」は、位相のインカのツガイが、秘密行為に励みだすと、いつも何処かに、行きました。それは彼等に遠慮して、出て行ったのです。だから彼等の行為が、終了すれば、妖精は直に戻る筈でした。
それから「妖精アイリス」が、戻るまで「左右神と中央神のインカ」達の、不思議な3人同居生活が、始まりました。それはカップルの部屋に、性別不詳の何者かが、転がり込むようなものでした。武史郎が、別の部屋に移動すれば、済むことでしたが彼は、この世界に来たばかりなので、所持金が有りませんでした。椿郎達も同じでした。それで、この部屋で「同居物語の始まり」と、成りました。
それから、由美子の言う通りに、暫くすると「妖精アイリス」が、戻りました。彼女は、この部屋の住人が、1人増えて居たので、少し驚きました。そして、その人物が「中央神のインカ」で、有ると知ると、更に驚き、そして興味を持って、その人物を、見ました。この「狭い部屋」に、この世界を創った、創造神の化身達が、3体揃ったのです。その為「妖精アイリス」は、現実に目の当たりにすると、戸惑いました。
こうゆうときは武史郎が、素早い反応をしました。「やぁ、久し振りだね。妖精君。君は何処に、行って居たのかい。」と言う、野暮な質問をしました。すると、アイリスが「武史郎様。お久しぶりです。私は、ただ時間潰しをして居ました。それは椿郎様方の、秘密行為が、始まったからです。それで〝私が邪魔だ″と、思ったから、消えたのです。」と彼女が、正直に答えました。それは、ただただ分かり切った答えでした。
「三位一体神の化身」は、全部で3体存在しました。それは左右神と中央神の3体でした。この世界は「全知全能の神」と成る「三位一体神」が、支配する世界でした。この神は、淫魔を従えたので、この世界に住む「魔人類」と、呼ばれた人型は、全て淫魔を、帯びました。淫魔とは、この世界では「サキュレス・インキュレス」のことを、言いました。
「三位一体神のインカ」は、左右神ほど性欲が強く、成りました。ランク付けをすると「女型のインカ」が、一番強くて、次に「右側神と、左側神の男型インカ」に、成りました。「中央神のインカ」に成ると、全く性欲が、無く成りました。そして生殖器自体が、失われました。その為、そのインカにも、その性質が反映されました。