10S.妖精アイリス
由美子は、自分達の部屋に到着すると、自分の布団に潜り込んで、疲れて寝てしまいました。椿郎の部屋には、彼女の寝床が有りました。そして彼女は、深い眠りに就くと、暫くしてから、何処からともなく、心地良い「少女の声」で、彼女のことを、呼ぶ声を聞きました。「由美ちゃん。由美ちゃん。あたしよ。妖精アイリスよ。」由美子は、その名前を聞くと、直ぐに目覚めました。いつの間にか、何処かに行ってしまった、彼女の妖精が、帰って来たのです。
由美子が、言いました。「アイリスね。私の妖精さんが、帰って来たのね。貴方、何処に行ったの。」由美子がアイリスに、聞きました。すると妖精は、申し訳なさそうに、彼女に言いました。「ごめんなさい由美ちゃん。私は中央神様の世界に行って居たのよ。中央神のインカ様が〝神界のアンバランスの解消″をするのを、見届けて居たの。それが済んだから、急いで貴方の元に、帰って来たのよ。由美ちゃんが心配だから。」と、言いました。
「妖精アイリス」の容姿は、中肉中背で白い肌色でした。目が大きくて瞳の色が、茶色でした。彼女の鼻と口は、やや小さめで唇の色は、朱色でした。眉毛は、少し太めでしたが、彼女の顔の印象は、とても可愛いものでした。髪の色は茶髪系のロングで、長さは、背中まで有りました。また彼女の背中には、昆虫のような小さな羽が、4枚有りました。彼女は「巨乳系美女の妖精」でした。
どうやら、シロの元に居た「妖精アイリス」は、そこに行く前は「左側神のインカ」で有る由美子の傍に、居たようでした。「そうだったの。それでは武史郎くんは、元気でしたか。」と「中央神のインカ」の心配をしました。するとアイリスが、答えました。
「今の中央神のインカ様は、女型に成って居ます。名前は〝蓮沼シロ″と、言います。」すると由美子が、答えました。「そうなの女型に成ったのね。名前はシロちゃんと言うのね。可愛いらしい感じのする、良い名前ね。」と、彼女が言いました。
すると「妖精アイリス」が、言いました。「今度の〝アンバランスの解消″は、そのシロ様の世界と、これから行われる〝原初の種″が、蒔かれた世界で、行われます。由美ちゃん達の居る世界は、その〝狭間の世界″と成り、ここは、その影響を受けますが、解消自体は行われません。しかし気を付けないと、貴方は椿郎様に、破壊されるかも、知れません。」と妖精は、由美子に謎の言葉を、投げ掛けました。
「妖精アイリス」が、言いました。「現在〝右側神の世界″では、この世界の〝第3神″と成る〝淫魔王様″が、まだ生まれて居ません。その為、次の〝淫魔王様″が、出現するまでに、この世界のインカで有る、椿郎様が〝淫魔王の第1アニマス″を、兼任することに、成るのです。それは単なる〝中継ぎ″ですが、そのような〝働き″を、するように、成ります。その結果、その相手と成る〝淫魔王の第2アニマス″を〝左側神のインカ″が、代わりに演じることに、成るのです。また、その為に由美ちゃんが、この世界に出現したのです。」
「次の淫魔王様が、出現されるまでの間、椿郎様は激しく、由美ちゃんを求めて来ます。それを由美ちゃんが、しっかりと、処理することに成るのです。」由美子は、それを聞くと、納得しました。自分の立場が「淫魔王の第2アニマス」と、被る存在に、成るのでした。それは飽く迄も「それのような、扱いを受ける」だけでした。
「右側神様は、自分を自分で壊して、壊れた肉体と精神を、自分で直して修復が済むと、男型から女型に変異します。そして淫魔王様を取り込んで〝原初の魔神″様と、成るのです。その御姿が、右側神様の〝直前の姿″に、成るのです。もちろん椿郎様が〝原初の魔神″様に、成るわけでは、有りませんが、椿郎様は、そのカルマを持つのです。」
由美子は「自分が椿郎に、破壊される立ち位置に居る。」と、言うことに、少し衝撃を、受けました。自分が「彼から受ける恐れ」は、そこから来て居ました。しかし由美子は、彼から受ける「恐怖心の意味」を知ると、とても安心しました。「なんだ。それなら全然平気よ。彼が私を、破壊出来る訳もなく、まして殺せる訳も無いのよ。それは私が、彼と同じインカだから。無理よ。絶対無理な話しよ。」
「しかし何らかの、椿郎から受ける〝破壊行為″には、少し注意すべきだ。」と、確認が出来ました。「左右神のインカ」は、女型の方が、性欲が強く由美子は、ホタルよりも、強い性欲を持ちました。ホタルは、それに「変態的な性欲」が、付きました。それは「淡泊過ぎる、蜃気郎の気を引く為」とも、言われました。椿郎は、蜃気郎よりも断然、性欲が強いので、今回の「椿郎と由美子」の組み合わせは「ベストなもの」と、言えました。
「妖精アイリス」は「暫く由美子の傍に、控えて居る。」と、言いました。それは「椿郎を、監視する為だ。」とも、言いました。由美子は、少しほっとしました。自分には、何らかの謎の脅威が、近くに有りました。しかし、それを庇ってくれる存在が、傍に居たのです。これほど心強いことは、有りませんでした。
由美子は「そんな危険を孕んで居る、椿郎の元からは、早く逃げれば良いじゃないか。」と、思いましたが、それが中々出来ないのが、インカの定めでした。椿郎も同じインカでした。それも自分とは、補完関係の有る、極めて重要なパートナーでした。今回の、この組み合わせが「左側神のインカ」の「女型」に取っては、何らかの強いストレスが、掛かり易い「組み合わせ」でした。
由美子は、今回はハズレ?を引いたと思い、何とか耐え抜こうと、思いました。しかし「妖精アイリス」が、言った「自分が、自分を壊すなんて、何だか少し恐ろしい、行為だと、思いました。自殺でもするのでしょうか。余り考えてもみたくない行為だ。」と、彼女は思いました。
「城ヶ崎椿郎」は、自分の隣に布団を敷いて、いびきを掻きながら、深い眠りに入って居ました。由美子は、彼を見ると自分達は既に、ここで同棲して居たことに、気が付きました。別に個人的には「椿郎のことが、好きでしょうがない。」と言う訳では、有りませんでした。彼とは、幼馴染みで有り、子供の頃から共に暮らして居ました。
確かに、姉弟みたいな関係でした。また肉体的に、成熟して居る今では、自分の性欲を、満たしてくれる、身近な存在でした。また既に彼とは、そのような関係に、成りました。「自分は、この世界で一体何をしようと、言うのでしょうか。妖精アイリスは、ここは〝狭間の世界″だと、言いました。そして大規模な〝アンバランスの解消″が、無い世界で有る。」とも、言いました。何故か果ての無い、自問を続ける由美子でした。
自問自答を繰り返して居た、由美子の耳元で「妖精アイリス」が、呟きました。「中央神のインカ様が、もうじき解放されるので、ここに来たい。」と、言って居ます。と、彼女に教えてくれました。「シロちゃんが、ここに来るの。ここってそんな簡単に、違う世界から、来られるものなのかしら。」と、アイリスに聞きました。
「左右神様と中央神様のインカ様は、次元の跳躍が出来ます。しかし由美ちゃんと、椿郎様は、まだこの世界から解放されて居ないので、跳躍が出来ません。逆に言えば、跳躍が出来ないと、言うことは〝ここで、何かをしなければ、成らないのです。″」そうです。それは当たり前のことでした。
「妖精アイリス」に、由美子が聞きました。「〝中央神のインカ″で有る、女型の蓮沼シロが、この世界にやって来て、彼女は何をしようとするのでしょうか。仮に、ここに来たとしても彼女は、ここに滞在して私達との、謎めいた共同生活でも、始めるのでしょうか。または、ここに来る目的が、他に有ると言うのでしょうか。」
すると「妖精アイリス」が、答えました。「シロ様は、自分の両親と、以前のように、楽しく一緒に暮らしたいと、思って居るようです。彼女の両親とは〝鳴神蜃気郎と、城ヶ崎ホタル″のことを、言いました。今の由美ちゃん達とは、逆パターンの組み合わせに、成ります。シロ様は、この組み合わせでないと、この世に生まれない存在でした。それを、シロ様は多分、理解されて居ないと、思います。」
「妖精アイリス」の見解で行くと、多分「蓮沼シロ」が、その後の世界で有る、今の左右神のインカの元に、集うことに成ると、彼女の理想ではないので、混乱することに、成るでしょう。彼女が、この現実を認識出来るのか、それよりも、今の組み合わせで有る、由美子達に適合して、この世界にシロの存在が、許されるのか。それも現時点では、良く分からない見解でした。
或いは、この世界を強引に、以前のような「左側神の世界」での出来事に、変えてしまうのでしょうか。しかしそんなことが「中央神のインカ」に、出来るのでしょうか。「通常のインカ(化身)」には、左右神・中央神のインカ共、取り分けて、力の強弱の違いは、有りませんでした。
「中央神のインカ」だからと言って、最初から強大な力を行使することは、出来ませんでした。または、この世界の「中央神のインカ」として、相応しい変化を遂げてから、今の由美ちゃん達を自分の親として、彼女が新しく認識が、出来るのかどうかと、全てが彼女の思いに掛かって居ました。
☆この後の展開では「新しい淫魔王」と、成る「リュウ・ペイン」の物語が、始まります。その新しい淫魔王の「第4ツガイ」には、パルパンティアの「戦闘コマンデス」で有る「イザベルとウィンドル」が、設定されました。ここで、この物語は、終わりを迎えます。その為「第3章」では「新しい原初の魔神」と、成るイザベルが「原初の魔神イザリス」として、再登場します。