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【完結】生贄にされた王女は竜の城でお茶をたしなむ  作者: なんかあったかくてふわふわしたやつ
第三章 王女とドラゴン

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「わたしが、女王に?」


 幼いエリスは、母イルダに手を引かれていた。

 政務の間にいとまができたイルダが、エリスを城内の散歩に連れ出してくれたのだ。


 やって来たのは、〈戴冠たいかんの広場〉だった。

 高台の上にあり、城内でも空に向かって開けた場所であるここは、歴代の女王が先代女王より王冠を引きぐ儀式の場だ。

 エリスの母イルダも、イルダの母もそのまた母も、ここで王冠をさずかった女王だった。


 広場の先からは、王都アモルの全景が見られる。

 イルダはそこに立ち城下の街を見下ろして、手をつないだかたわらのエリスに言った。


「そうよエリス。大きくなったら、あなたも私と同じように、ここで女王になるの。そうして国を治めていくのよ」


「わたしが、おかあさまみたいに…………できるかしら……」

「できるわ。だって、あなたは〈幸せの魔女〉だもの」


 不安に小さくなるエリスの目線にしゃがんで、イルダはしっかりと言い聞かせるように言った。


 幸せの魔女。

 ”始まりの魔女”によって、魔女のけいの中、いつかの未来に存在が予言された者のことだ。

 でんしょうでは「その者、奇跡の魔法によりて人々を幸せにするであろう」と言われていた。


 自分がそうであるか、エリスにはさだかではなかった。だが、イルダは事あるごとにむすめをそう呼んだ。

 まるで、そうなることを確信しているように。

 どうして分かるの? そうエリスが問えば、イルダは「お母さんも魔女なのよ」と言った。

 幼いエリスには、納得できるような、できないような、そんな返答だった。


「私に何かあったら……いいわね、エリス、あなたが国を守るのよ」

「なにかって、なに? おかあさま、どこかへ行ってしまうの……?」


 問えば、イルダは曖昧あいまいほほむだけだった。

 そして、さとすようにエリスの黒髪をでて、言う。


「……エリス、これだけは覚えていて。

 あなたは決して一人ではない。大人になれば、大切な人にも出会えるでしょう。

 強くありなさい。そして、大切なものは、守りとおしなさい」


 優しいイルダの手が、髪をく。

 エリスは、その心地よさに目を閉じた。


 広場には、優しい風が吹いていた。




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