表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放魔族のまったり生活  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/109

第97話 状況確認

 ピゲストロさんのお屋敷に到着した私たちは、すぐさまピゲストロさんと話をする。

 結果、マリエッタさんたちが二人ずつに分かれ、ピゲストロさんの手伝いをしたり、読み書きを教えたり、交代で仕事をこなしていくこととなった。

 隣町の自警団のトップであるマリエッタさんに、隣の領主が派遣した文官もいる。オークたちは余計なことはできずに、怯えたようにしながら読み書きを習っている。

 なぜなら、ファングウルフの一部をお目付け役にしておいたからだ。

 ファングウルフたちは私の従魔だし、私が言えばちゃんと従ってくれる。あと、私が慕っているせいかマリエッタさんのいうこともよく聞く。

 ついでにいうと、言葉は通じなくても意思疎通が可能。思ったよりも頭がいい。

 さすがに閉じ込めての勉強は厳しいだろうから、時折ファングウルフと体を動かす時間も設けてもらった。

 オークたちの頭がどのくらいいいのかは分からないけれど、これでピゲストロさんの負担も少しは軽くなるでしょうね。

 そのことを思いながら、私は一度家へと戻っていった。


 それから十日間ほど経った日のことだった。

 町に出向いた私は、いつものように納品を済ませる。

 久しぶりに町を散策しようと町長の屋敷を出た時だった。


「あ」


「おう、久しぶりだな」


 目の前でオークに出会った。

 誰かと思えば、ピゲストロさんの直属の部下の一人だった。

 彼はオークでありながら、足が速い。そのために、伝令のような移動を伴う仕事をよくしている。

 ただ、他のオーク同様にほとんど読み書きができないので、彼はいったい自分が何を運んでいることが分かっていないことが多かった。そのため彼は、任務を任される時の依頼人の顔色で、伝達の重要度を見分けていたという。

 一般的に頭が悪そうといわれているオークではあるものの、彼らにもちゃんと個体差というものはあるようだった。

 私はティコとキイを大きくして、すぐさまピゲストロさんのお屋敷に向かう。オークを乗せることになったキイはちょっと嫌な顔をしていたけれど、今だけは我慢してちょうだい。

 それにしても、キマイラにこんな顔をされるって、オークって一般的にどれだけ嫌われてるのかしらね。


 私たちが屋敷に到着すると、ピゲストロさん自らが出迎えてくれていた。


「やあ、アイラ殿。わざわざお呼び立てしてすまなかったですな」


 ピゲストロさんは丁寧に謝罪を入れてくる。

 相変わらず礼儀正しい紳士的なオークである。


「いえいえ、そろそろ様子を見に行こうと思っていましたので、ちょうどよかったですよ。どうでしょうか、領主としての仕事は」


 私はピゲストロさんに声を掛ける。

 すると、ピゲストロさんはこの上ない笑顔を向けてくる。その顔を見ただけでなんとなく察せてしまう。


「そうですか、それはよかったですね」


「うむ。ただ、まだ部下のオークたちはそれほど読み書きができぬゆえ、マリエッタ殿たちをもうしばらく滞在させるしかない。すまないが、そのことを男爵殿にお伝え願いたいのだ」


「分かりました。彼にはそのことは手紙で持たせたのですかね」


「ああ、あの手に持っているやつがそうだ。様子から察するに、アイラ殿に出会えた時点で、そっちの用件を忘れたように見えるな」


「なるほど……」


 連れて帰ってきたオークの手を見てみると、確かに紙の束が見える。これが本来男爵様にお届けする予定だった手紙のようだ。

 彼は私に出会ったことで、その用件が頭から吹き飛び、私を呼んでくることだけに必死になってしまったようだった。

 悲しいかな、これがオークという種族なのである。


「まぁ、我ほどではないが、読み書きをそこそこ身につけた部下から簡単に作業に携わってもらっている。中には覚えの早い奴もいるのでな、おそらくもう七日もあればマリエッタ殿たちを帰宅させられるかもしれぬ」


「そうなのですね。それはよかったです」


「まあ、他にも意外なことがあるのだがな」


「意外なこと?」


 はにかみながら話すピゲストロさんの話に、私はこてんと首を傾げる。

 見てもらった方が早いだろうと、ピゲストロさんはお屋敷の中へと案内してくれる。


「お前たち、アイラ殿が参られたぞ」


 ピゲストロさんが案内してくれた場所には、ファングウルフたちが集まっていた。

 実はこのファングウルフたちは、オークたちが変なことをしないかどうかという監視のために付けていた。

 いったい彼らがどう意外なのだろうか。私はまったく想像がつかなかった。


「ピゲストロ様、書類が届きました」


「うむ、ご苦労。彼らの前に置いてくれ」


「はっ!」


 部下のオークが持ってきた書類を、ファングウルフたちの前に置く。

 どういうことなのかと見ていると、ファングウルフたちは書類のにおいをかぎ始めた。

 上から一枚一枚順番に嗅いでいくのだけど、一枚かぎ終わるたびに鳴いてオークを呼んでいる。

 その鳴き声と首の動きで、オークは書類を一枚一枚選り分けていっている。どういうこと?


「実はな、あのファングウルフたちは書類の優先度をかぎ分けられるのだ。おそらくは書面の文字にこもった魔力を感じ取って、それに沿って仕分けているのだろう。まったく、さすがアイラ殿の従魔だな」


「あ、そうなんですね。あは、あはははは」


 思わぬファングウルフたちの能力に、私はただ笑うことしかできなかった。重要度の選り分けができるなんて、うちの子たちってものすごく優秀なのでは?


 こんな感じでピゲストロさんの職場見学を終えた私は、ピゲストロさんの書簡を持って町へと戻っていったのだった。

 ……うちの子たち、天才だわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ