表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放魔族のまったり生活  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/109

第95話 オークのとある問題

 今日はファングウルフの様子を見に、ピゲストロさんのところに向かう。

 正直言うと、あのお屋敷に近付くのは以前の記憶がよみがえるので避けたいところ。

 でも、今はあの屋敷の近くに住みついているので、場所を確認するにはお屋敷を訪れるしかなかった。

 ティコとキイを大きな状態にして、私は休憩を入れるたびに乗り換えながらピゲストロさんのお屋敷にやって来た。

 門番をしているオークは、すぐに私を通してくれた。あの時の一件で私のことはオーク全員に知れ渡っているのでしょうね。

 待っててもらおうとすると二匹とも悲しそうな顔をするので、仕方なく小さくして中へと入っていく。オークは体が大きいのでお屋敷も大きいんだけど、ティコもキイもそれ以上に体が大きいものね。

 案内役のオークの後ろについて中へと入っていく。ティコとキイは物珍しそうに周りを見るかと思いきや、私の護衛だと言わんばかりにしっぽを立てて私の両脇を固めて真っすぐ歩いている。魔物とはいっても、頼りがいのある子たちだわ。


「おお、アイラ殿。今日はどうされたのかな」


 ピゲストロさんは自分の部屋でなにやら書面とにらめっこをしていた。

 魔族であるけれども王国の一員となったことで、なにかとやることが増えたらしい。

 オークたちはあまり事務仕事のできる者がいないために、その処理のほとんどをピゲストロさんがこなしているという状況だった。


「だ、大丈夫ですかね、ピゲストロさん。顔色が悪そうですけれど」


「ああ、このくらいなら大丈夫ですぞ。戦いとなれば三日三晩寝ずということもあることですからな」


 ものすごく自慢げに話してくる。だけど、目の下のクマを見ると、なんとも痛々しい感じがする。

 本人は平気だとは言うけれど、これは気になって仕方がない。


「まったく、無理はいけませんよ。部下の誰かに仕事を手伝わせたらいいですのに」


「いや、文字の読み書きのできるオークが我しかおらんのでね。やむなく我がやるしかないというわけですよ」


 ピゲストロさんの答えに、私は思わず黙り込んでしまった。

 まったくもって切実な事情じゃないかと、心の中で即指摘を入れてしまった。いや、声出したかったんだけど、驚きすぎて出なかったわ。

 なにせ、言葉は普通に通じているからまったく分からなかったんだもの。


「アイラ殿?」


 私が驚いてぼさっとしていると、ピゲストロさんが声を掛けてきた。

 その声で、私は我に返る。


「あ、これは失礼しました。……文字の読み書きは大切ですよ。作業の分担をさせられる部下がいないと、ピゲストロさん、そのうち倒れてしまいますよ」


「うむぅ……。だが、はたしてそのような部下がいるかどうか調べるのは、難しいと思いますぞ」


 ピゲストロさんは、あごに手を当てて唸り始めた。

 私も一緒に考える。

 そして、とある結論にたどり着いた。


「私は遠慮させて頂きたいですけれど、一人いますね」


「ほう、それは誰かな?」


「まぁお楽しみです。明日は家の近くの町に向かいますので、男爵様たちにかけあってみます」


「そうか。まあ、アイラ殿が推す人物ですからな。我は黙って待つこととしましょう」


 ひとまず話を終えた私は、疲労回復用に下級ポーションを一本渡しておく。ただし、無理し過ぎないようにとは念押しだけはしておいた。


 ファングウルフの居場所を聞いた私は、屋敷を離れてその場所へと向かう。

 たどり着いた場所は、なんということだろうか。先日ファングウルフが目撃されて騒ぎになった場所だった。

 辺りを見回してみると、鳴き声が聞こえてくる。


「がうわうっ!」


 たくさんの鳴き声がだんだん近づいてくる。

 この声は、以前制圧しに行った時とは違い、とても嬉しそうな鳴き声だった。

 目の前からは二十匹ほどいるファングウルフが一斉に駆け寄ってくる。敵意がないことが分かっているせいか、ティコもキイもその様子を優しそうな目で見つめている。

 集まってきたファングウルフたちを一匹一匹順番に撫でていく。ちょっとさわさわと撫でただけなのに、みんなして満足そうな笑顔で去っていくものだから、私は相当懐かれているみたいね。

 いつまでも私に構ってもらおうとしているファングウルフたちだけど、ある程度撫でられると何かに怯えたように私から離れていく。

 くるりと振り返ってみると、ティコとキイがものすごく睨み付けていた。まるで自分のご主人様だぞと言っているように見える。


「もう、ティコもキイも、そこまで警戒しなくてもいいのに」


 二匹の様子に気が付いた私は、おかしくて笑ってしまう。


「にゃう!」


「ミャア!」


 二匹揃って何を笑っているのといわんばかりに鳴いている。

 でも、私は笑うことをやめることはできなかった。どうやら、笑いのツボというものに入ってしまったみたい。笑いが止まらなくて困ったものだわ。

 しばらくファングウルフたちの様子を見守った私たちは、その様子に満足すると家へと戻っていった。


 オークたちのお屋敷の問題を解決する方法。それを解決するにはあの人たちに頼むしかないわね。

 私はポーションと茶葉を作りながら、翌日の計画を入念に立てたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ