表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/109

第81話 魔物を討伐しに行こう

 町へとやって来た私は、いつもの納品の流れで町長の屋敷へとやって来る。

 私が男爵様たちに顔を見せると、なんというかぱっと明るい顔をしたようだった。


「いやあ、来てくれたんだね。プレアもご苦労様、すぐにマリエッタのところに向かっておくれ」


「承知致しました」


 挨拶をして、プレアさんはすぐに部屋を出ていった。

 男爵様と夫人、それと私の三人となった部屋の中の雰囲気は、なんだか微妙な空気に包まれていた。


「さて、アイラくん。プレアから用件は伺っているかな」


「はい、町の北の方で魔物が発見されたと伺っています」


 はっきりと答えると、男爵様の表情が再び曇った。


「そうなのだ。魔族であるオークとの和解が成立したのはいいが、さすがに魔物が相手となるとまったく話が違う。だからこそ、魔物を従えているアイラくんの助けが必要というわけなんだ」


 机に手をつく男爵様の表情が、どうにもすぐれない。

 この様子を見た私は、相当に深刻な状況なのだろうとすぐに理解した。魔族として生まれ変わってからそれだけ長くなったし、あの家でいろんな技能を身につけたせいもあるのかもしれない。


「分かりました。では、早速様子を見に行ってきます」


「お、おい。詳しく聞かなくても大丈夫なのか?」


「ティコもいますし、なんとかなると思います。とりあえず、納品を済ませたらすぐに向かいますので」


 自分でも驚くくらいに積極的になっていた。

 なんだろうかな。

 まぁいっかと思って、私は余裕を持たせて作っておいたポーションと茶葉を男爵様に渡しておく。

 すぐさま男爵邸を飛び出していく私だけど、ちょうどプレアさんと彼女が連れてきたマリエッタさんとすれ違う。慌てていた私は簡単に頭だけ下げると、町の外へ出てティコを大きくして飛び去っていった。


 ティコに乗って空を行くと、あっという間に目的地へと到着する。

 下を見てみるけれど、これといって魔物らしき姿は見えなかった。


「う~ん、目撃談があった場所のはずなんだけど、それらしい姿は見えないわね」


「がるっ」


 私が見下ろしながら唸っていると、ティコが短く吠える。


「あ……」


 それで私は気が付いた。

 自分でも怖がっていたマンティコアが居るんだもの。たいていの魔物ならマンティコアを怖がって逃げちゃったというわけか。

 とはいえども、ここまで来てしまった以上は現地調査をしておかなきゃね。

 私はティコに地面に降りてもらうと、魔法で再び小さくする。姿が大きいと間違いなく何も寄ってこないものね。

 小さくなったティコは、私の腕の中でごろごろとしている。

 普通のマンティコアができるかどうかわからないんだけど、ティコはかなり頭がいいのか魔力の調節ができる。

 小さくなると、その体に合わせて魔力を絞り込んでいた。


「にゃう」


 鳴き声もこれだけ可愛くなるんだから、本当にすごいとしか言いようがなかった。

 しばらく様子を見るために歩いていると、どんどんと不穏な空気が立ち込め始めてきた。

 さっきまで警戒していたマンティコアの姿と魔力が消えて、怯える必要がなくなったということだろう。さすがは魔物も動物と同じ感じってところかしらね。


「ティコ、囲まれてるわよ」


「みゃう!」


 私の警戒の声に元気よく返事をするティコ。

 ティコを地面に降ろして、周りをよく見てみる。物陰からのぞく影がちらほらと見える。

 普通ならこの状況には絶望しそうなものだけど、ここしばらくの生活のせいで私にも度胸がついたのよ。この程度の魔物相手なら、怖がる要素はないわ。

 なんといっても、たくさんのマンティコアの近くでしばらくじっとしてたくらいだしね。あれに比べたら全然怖くないわ。

 とはいえ、よく見ると犬型の魔物がたくさん群れている。


「ティコ、いける?」


「にゃう!」


 私が話し掛けると、ティコは小さい体のまま強力な風魔法を巻き起こす。マンティコアは空を飛ぶということをするせいで、風魔法を扱うことができるのだ。


「にゃああっ!!」


 大きく鳴くと、ティコの前方へと向けて風の刃が走り抜ける。

 森の木々をなぎ倒しながら、風の走り去った場所にいた犬型の魔物は大変なことになっていた。

 これには他の魔物が逃げ出そうとするけれど、この間に私が何の対策もしてないと思っているかしらね。


「さぁ、ティコ。遊んでらっしゃい」


「にゃーん」


 私は以前ティコに掛けたことのある拘束魔法を、こっそりと魔物たちにかけておいたのだ。

 楽しそうに駆け寄っていくティコだけど、魔物たちは拘束を解けるわけもなく誰も逃げられない。

 あれだけの魔法を見せつけられた後のティコのじゃれつきに、魔物たちは次々と気を失っていく。本能が危ないと感じると、魔物でもこうなってしまうんだと思わされる光景だった。

 ティコが倒してしまった魔物だけは処理しておいたけれど、残った魔物をどうしようかしらね。

 説得してどこかに移ってもらうか、いろいろ考える。

 なんだろう……。魔物だから倒してもいいと思うはずなんだけど、ティコを飼うようになってからというもの魔物に変な感情を持つようになってしまったわね。

 ティコの襲撃を受けて気絶してしまった魔物を、私はひとところに集める。気絶してしまった犬型の魔物を見つめながら、私はどうするか真剣に悩んだのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ