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追放魔族のまったり生活  作者: 未羊


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第60話 理由はよく分からない

 他国でそんな動きがあるとも知らず、今日も私はティコと一緒にお散歩の真っ最中だった。


「最近は天気がいいわね。こういう日のお散歩は気持ちがいいよね、ティコ」


「にゃうん」


 私が声をかければ、ティコは笑顔で返事をしていた。小さい状態のティコは、本当にただただ可愛いばかりだった。

 薬草を摘み、茶葉用の葉っぱを摘み、食事用の野草を摘み、最後に魔物を狩って家に帰る。

 いつもと変わり映えのない生活ではあったものの、それはそれで楽しくてたまらない私なのである。


 数日後、私はふとピゲストロさんの屋敷を訪ねようと思った。

 もともと私が働いてクビにされた屋敷なので、正直言うと足を向けにくい場所だ。

 でも、この日はどういうわけか行かなきゃいけない気がした。

 なんでだろうかと首を傾げるものの、私はティコを元の大きさに戻して、森の中を疾走し屋敷へと向かった。


「お久しぶりです」


「おや、これはアイラ殿。ささっ、どうぞお入り下さい」


 門番の魔族に声をかけると、あっさりと中へと通らせてもらえた。

 ちなみにティコは再び小さくして私の腕に抱えられている。

 私が門をくぐる時、門番の視線がちょっと私の抱えるティコに向いた気がした。やっぱり気になるのでしょうね。

 でも、何も言われなかったので、そのまま中へと入っていった。


 中に入ると、使用人の魔族に声をかけて、ピゲストロさんのところまで案内してもらう。

 一部の使用人は私との面識があったので、結構みんなから話しかけられはしたわね。

 とはいえ、そんなに長々と話をしている場合じゃないので、適度に話を切り上げてようやくピゲストロさんとの面会が可能となった。

 改めて見てみて思うんだけど、そもそもがオークたちが住むように建てられていたのか、全体的に屋敷の寸法が大きいわね。なるほど、これなら仕事が終わらなくても納得するわ。

 本当に今さらな情報だった。


「ピゲストロさん、お久しぶりです」


 案内されて部屋に入るなり、私はメイドらしく挨拶をする。


「おお、アイラ殿。今日はどうしたのですかな」


 大きな体に似合わず、小さな机で事務作業をこなしていた。

 そもそも騎士であるために頭脳労働が苦手なのか、かなり困ったような顔をしていた。


「いえ、今日はなぜかここに来なきゃいけない気がして、それでやってきたんですよ」


「ふむ、そうなのですか」


 ひとまず、ピゲストロさんの質問には答えておく。

 私の答えに、ピゲストロさんは不思議そうに首を捻っていた。


「それにしても、もの凄い書類の量ですね」


「ああ、マシュローの町を含めた隣の領主殿との間でいろいろと締結しなければならない約束事がありますからな。ずいぶん経ちますが、まだまだ終わらないのですよ」


「なるほど。オークって事務作業が得意そうに思えませんものね」


「まったくその通りですよ。お恥ずかしいかぎりでございます」


 私が納得していると、ピゲストロさんはなぜか謝罪めいたことを言ってきた。いや、なんで私に申し訳なさそうにしているのかしら。


「しかし、アイラ殿が来られた理由がいまいち分かりませんな。どうしてもとはどういうことなのでしょうかな」


「それが分かれば苦労はしないですよ」


 ピゲストロさんの質問に、私は両手を腰に当てながら答えていた。


「さて、邪魔しているのもなんですから、少しお手伝いしますよ」


「ああ、すまないな」


 私は机を借りて、書類の一部に目を通す。

 ちなみにティコだけど、私の膝の上でごろごろと休んでいる。

 魔導書を読み漁ったおかげもあって、私はすっかり読み書きができるようになっていた。なので、渡された書類の内容がよく分かるようになっていた。

 内容を見てみる限り、向こうの領主様もずいぶんと分かりやすく書いて下さっているみたいだ。多分、オークたちでは理解力が乏しいと思われたんでしょうね。

 しばらく事務処理を手伝っていると、使用人が入ってくる。どうやらお茶のおかわりを持ってきたようだ。

 使用人を見た私は、ふと差し入れを入れることを思いついた。


「そうだわ。私が作っている茶葉なんだけど、これでちょっとお茶を淹れてもらってもいいかしら」


「茶葉……でございますか?」


 使用人は不思議そうな顔をしながら、私から茶葉を受け取る。

 普段しているように淹れるだけでいいからと伝えると、不思議そうな顔をしながら使用人は部屋を出ていく。

 仕事を再開すると、急に外が騒がしくなってきた。

 つい私がイラッとし始めると、部屋の扉が開いて兵士が飛び込んできた。


「敵襲! 人間が攻め込んできました!」


「数は?」


「そ、それが……、一人です!」


「なんだって?!」


 兵士が報告してきた数に、ピゲストロさんは驚きを隠せなかった。


「分かった、我が出よう」


「私も行きますよ。ケガ人がいたら治さなければいけませんし」


「……分かった。後方はお任せしましょう」


「はい」


 私とピゲストロさんは、大きな音が聞こえてくる場所へと急ぐ。

 たった一人で暴れまわる人間とは一体誰なんだろうかと、その正体が気になって仕方がない。

 とはいえ、せっかく人間との仲が改善しているこの状況で、再び関係悪化は避けたいわよね。

 まずは状況を確認するべく、私たちは屋敷の外へと飛び出したのだった。

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