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追放魔族のまったり生活  作者: 未羊


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第54話 錬金術とは?

 ティコのことで起こる面倒を考えるのは、連れて歩くのはやめた方がいいかもしれない。

 でも、ティコってものすごく可愛いし、私にとても懐いているので置いていくのも可哀想に思えてくる。

 しかし、しっぽがサソリなのですぐに魔物と分かってしまうだけに、本当に悩ましいかぎりだった。


「ねえ、ティコ」


「にゃう?」


 私が話し掛けると、首をこてんと捻りながら反応する。これだけで可愛い。


「これから町に行く時は、しっぽだけでも隠させてもらっていいかな」


「にゃう」


 意外とティコはすんなりと受け入れ……てくれたと見てもいいのよね?

 受け入れたと見て、私は魔導書にいい方法がないか聞いてみることにする。

 すると、私の気持ちを察してくれたのか、魔導書がすっと飛んでくる。かゆいところに手が届くというのかしらね、こういうのは。

 目の前まで飛んできた魔導書はいつものように勝手にページがめくれていく。

 よく見ると、普段の魔導書と色や装丁が違っている。自由に動く魔導書はどうやら一冊ではなかったようだ。

 今回の魔導書は、茶色に金の模様だ。いつもの魔導書は青に金の模様だもの。


「ふむ、これも錬金術なのかしらね」


 開かれたページを見ながら、私はふむふむと内容を読んでいく。

 すっかり文字も読み書きできるになったので、内容をスムーズに読んでいける。


「ふむふむ、魔物の毛皮を使っての服を作る錬金術ね……。これは使えるかも」


 魔導書が示してくれた方法に、私はとても興味を持った。

 さっそく私は部屋に移動する。

 ただ、この方法がうまくいったとしても、一つ懸念がある。

 それは、ティコが実際の大きさではないということ。魔法で小さくなったのが今の状態なのだ。

 つまり、今の体に合わせて作ったとしても、元に戻ったらサイズが合わなくてバリバリに破けてしまうのではないかということだった。

 ティコを抱きしめながら私が悩んでいると、目の前の魔導書はいつもの魔導書と同じように、その場で一回転していた。

 いつもの魔導書と同じなら、「気にするな、大丈夫」ということなのだろう。それでも不安はぬぐい切れなかった。

 とはいえ、今の私には魔導書に従うことしかできないわね。知識なら確実に負けるもの。


「それじゃティコ、ちょっと待っててね」


「みゃあ」


 私が声をかけると、ティコは私の手から飛び降りておとなしく椅子の上に座っていた。

 収納魔法から魔物の毛皮を取り出す。いくつ使うか分からないので、少し多めにね。失敗する可能性はあるよ、まだ私は未熟ものだから。

 机の上に毛皮を一枚広げる。魔導書の説明によれば、材料はこれだけでいいらしい。

 毛皮に対して私は魔力を込めていく。

 正直なことを言うと、毛皮に魔力を込めるだけで衣服ができるかどうかというのは疑問しかなかった。

 町娘時代に服を作っている光景を見せてもらったことはあるけど、裁断に縫製といろいろと面倒だった覚えがある。

 魔物からはぎ取っただけの毛皮から、魔力だけで服ができるなら苦労はしないというものだわ。

 ところが、私の魔力が加わった毛皮は、みるみる形を変えていく。一応、ティコのしっぽを覆う袋状のものをイメージして魔力を込めたんだけど、その形に毛皮が段々と変わっていく。


「うそでしょ、こんなの……」


 私の目の前には信じられない光景が広がっていた。

 なんと、毛皮に魔力を込めただけで、細長いしっぽカバーができてしまったのである。しかも、ティコの毛並みの色に合わせて色まで変わっている。錬金術っていったい何なのだろうか。その神秘をまた目撃してしまった。

 いろいろと気持ちが落ち着かないながらも、私はティコを呼ぶ。

 椅子から降りたティコは私に向かって飛びついてきたので、そっと優しく受け止めて抱きしめる。


「よしよし。じゃ、この机の上に降ろすわね」


「みゃう」


 ティコはおとなしく机の上に座る。次の瞬間、何をするのか分かっているらしく、しっぽをふらりと私の方に差し出してきた。


「いい子ね。おとなしくしててね」


「みゃあ」


 鳴いたかと思うと、顔を洗い始める。でも、しっぽは動かないようにしっかり止めていた。本当にこの子頭がいいわ。

 じっとするティコのしっぽに、作ったばかりの毛皮のカバーをつけていく。サソリの尾の先端の尖った部分に気をつけながら、慎重に慎重にかぶせていった。


「できたわ」


 慎重になりすぎたせいで時間はかかってしまったものの、ティコのしっぽにカバーをかけ終える。こうやって見て見たら、あの狂暴なマンティコアもただの猫である。


「ふふっ、こうやって見たら本当にただの猫ね」


 ティコの顔を撫でてあげると、違うぞといわんばかりに背中の羽を精一杯広げていた。

 その主張に、ついつい私は笑顔になってしまう。


「とりあえず、町の中では羽は広げないでね。これでようやく普通の猫に見えるんだから」


「にゃーう」


 私が額をこつんと当てると、ティコは長い声で鳴いていた。

 それにしても、錬金術で簡単な布の加工もできるとは思ってもみなかった。

 薬を作るだけかと思っていた錬金術。いよいよ何なのか分からなくなってきた私なのであった。

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