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追放魔族のまったり生活  作者: 未羊


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第36話 夜のお散歩から戻って

 家に戻ってきた私は、食堂の椅子に座り込む。


「なんで、こんな便利な魔法を今さら教えてきたのよ!」


 次の瞬間、食堂のテーブルを思い切り叩いていた。

 それもそうでしょう。

 早めに寝てしまって夜の森を散策した時のこと、ウルフの群れに囲まれてしまった。魔法で倒したはいいけれど、ウルフの数が多すぎた。

 そこで魔導書が教えてくれたのが、錬金術師の持つ収納魔法というものだった。鑑定魔法で見てみたところ、おおよそ幌馬車一台分という容量を持ったよく分からない魔法の空間だった。そこに放り込めば、私のいる世界との法則から切り離されて物の状態が維持されるという。それはまるで夢のような魔法だった。

 ただこの魔法、とんでもない性能だけに人前で使えそうにない。クルスさんやマリエッタさんなら黙っていてくれそうだけど、私の性格上、うっかり人に見られてしまいそうだった。


「うーん、この魔法は当面秘密かな……。絶対面倒なことになる」


 私はそう結論付けて、人前で絶対使わないように心に誓った。


「とりあえず、ご飯用のウルフを解体して、それから夜光草で何か作ってみようかな。目が覚めちゃって眠れない……」


 そんなわけで、私は討伐したウルフを空間から一体取り出して、料理用の包丁で捌いていく。普通の女性なら苦手なんだろうけど、宿屋の手伝いで厨房のお手伝いもしたのでまったく問題ない。そもそも、屋敷を追い出されてからもやってたことだしね。

 あっという間に肉と毛皮を確保した。

 いつもなら残りは埋めてしまうところなんだけど、今私がいるのは自分の家の中。もしかしたら、ウルフの内臓も何かに使えないかと鑑定魔法にかけてみる。

 うん、何の用途もなかったわね。

 さすがに気持ち悪いけれども、どうにか部屋の外まで運んで全部地面に埋めておいた。

 肉と毛皮はとりあえずは収納魔法にしまっておく。ここに入れておけば保存がきくと分かったから使わない手はないってものね。

 洗浄魔法をかけて解体の汚れを取り払うと、ようやく夜光草を使った薬を作ることにする。

 目にいいってことは目薬っていうことなのかな。

 私についてきた魔導書に尋ねると、再びページがめくれていく。

 開いたページには目薬と便秘薬の項目が並んで出てきた。なんで?

 とりあえずそんな疑問は置いておいて、作り方を確認する。どうやら、それぞれで作り方というか月光草の使う部分が違うようだった。


「葉っぱを使うか、根っこを使うか……。あっ、花でも違うのね」


 どうやら、この魔導書をまとめた人は、月光草のすべてを使ってそれぞれを同じページにまとめたようだ。

 月光草の茎は残念ながら対象ではなかったみたいなので、茎以外を使って錬金術にかけてみる。

 ポーションの時と同じで、水に材料を浸し、魔力を注いでいくだけ。錬金術はすべて魔力で解決するということらしい。

 そこで私はふと思う。


(魔力だけで解決するのであるなら、誰でも錬金術を使えるのでは?)


 私の考えが魔導書に伝わったのか、魔導書は左右に回るようにして動いている。どうやら違うと言っているようだった。

 本当に、魔導書は私の気持ちに敏感に反応するものだ。

 再びぱらぱらとページがめくれる。

 開いたページには、錬金術の基礎知識が載っていた。私があんな事を思ったからか、今さらながらに説明してくれるようだった。

 そのページによると、錬金術に適した魔力というものがあるらしい。本人の魔力が小さく、適性が広いこと。

 適性の広さは分かるとしても、なぜ魔力が小さいことが条件となるのか。不可解な説明だわね。

 ただ、次の説明を見てなんとなく分かった気がする。

 魔力が小さいために使える魔法は知れている。それを効率よく引き出すために魔力に工夫をするようになるため、錬金術に適した魔力になるというわけだった。

 私の魔力はそもそも多くはないものの、あれだけのことをやってのけられた理由はここにあったというわけだ。

 通常の魔法使いならば、魔力をどんと解放するだけで済む。だけど、私みたいなタイプは同じ魔法を使っても大したものにならない。というか使えない可能性もある。

 錬金術を通して魔力を扱うことに慣れたために、少ない魔力を無駄なくすべて魔法に変換できるようになったので、普通の感覚で使うと威力が跳ね上がった魔法になるということのようだった。

 それにしても、この明かり取りの魔法は普通の状態なんだけど?

 なんとも説明のつかない現象だった。

 いろいろまだまだ分からないことは多いけれど、自分が錬金術師の適性があったことを喜びつつ、夜光草の加工に取り掛かる。

 さすがに初めて扱うとあって、何度となく失敗してしまう。それでもどうにか根っこ、葉っぱ、花からそれぞれに薬を作り上げたのだった。

 新しくでき上がった薬は、さっき使えるようになったばかりの収納魔法の中にしまっておく。使うことがあるかどうかは分からないし、効果だって説明にあった通りなのかも分からない。


「ふわぁ~……、動きまくったら眠くなっちゃった。無理しないで寝ましょうかね」


 悩んでいると、不意にあくびが出てしまう。

 夜の森を散歩した上に錬金術まで使ったことで、私は思ったより疲れてしまったようだった。

 無理をしちゃいけないだろうなと思った私は、おとなしく自分の体の欲求に応えてベッドへと潜り込んだのだった。

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