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追放魔族のまったり生活  作者: 未羊


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エピローグ

 あれから十一年後。

 私は、ようやく森にたたずむ家に帰ってきた。

 ピゲストロさんとの約束で、子どもたちが立派に育つまでは、お屋敷に住んで極力子どもたちの面倒を見ていた。


「う~ん、私が見つけた時ほどではないけど、ちょっと埃っぽくなっちゃってるかな……」


 目の前にある家は変わらぬたたずまいをしていた。

 ただやっぱりあまり戻れなかったこともあって、家の周囲には草が生い茂っている。

 家の中に入っても埃が溜まってしまっているので、これはひとまず掃除からだなと私は準備を始める。


「ティコ、キイ。外の草刈りをお願い」


「にゃう」


「ミャウ」


 ここまで乗せてきてもらった二匹には悪いけれど、もう少し頑張ってもらうしかないわね。

 私が家の中を掃除している間、ティコとキイには外をきれいにしてもらう。二匹とも使う風魔法で、生い茂った草をすべて薙ぎ払ってくれる。

 さすがは風の魔法の使い手の魔物。一瞬できれいにして見せていた。

 その騒がしさに気が付いたのか、ふわふわと魔導書が私たちのところへやって来た。


「あ、久しぶりね、魔導書」


 私が声を掛ければ、魔導書は嬉しそうに私の周りをくるくると舞い始めた。魔導書は結構感情が豊かだわね。

 ピゲストロさんと結婚してからというもの、この家に本当にあまり戻ってこれなかった。

 なので、魔導書たちは私が戻ってくると、このように喜びの舞を見せてくれるようになっていた。


「これからはこっちが生活の拠点になるわ。前にみたいによろしく頼むわね」


 私がぺこりと頭を下げれば、魔導書たちはくるくるとその場で回っていた。


「みゃう」


 草刈りを終えたティコとキイが入ってくる。本当にこの子たちは優秀だわ。

 確認しに外に出てみると、あれだけ伸び放題だった草はすっかり根元から刈り取ってあった。


「よしよし、二匹ともありがとう」


「みゃううう~ん」


 頭を撫でてあげると、甘えるような声で鳴いている。嬉しそうでなによりだわ。


 そういえば、ティコとキイの間にも子どもが生まれているのよね。

 キイは確か男の子だったから、ティコは女の子だったんだと初めて知った時は衝撃だった。

 ちなみに二匹の子どもたちは、お屋敷で可愛がられている。

 そのうち、キラとマイの子どもたちと一緒に何かを始めてみてもいいかもしれないわね。空を飛べるから、人や荷物の運搬はとても楽になりそうだし、何より上位の魔物なのでうかつに手が出せないものね。

 他にもうちの子たちにはよく分からない謎があった。

 魔物の生態は知らないとはいえ、あれから十一年も経っていて、まだまだ若い感じなのよ。

 もしかしたら、従魔の主となった私の影響を受けているのではないかと、複数人から言われている。

 私なんて反魂で生き返らされて魔族になった身なので、少なくとも長命にはなってそうだものね。

 なるほど、私の魔力に引っ張られる形で、ティコたちも長生きになったのではないかと考えられるってわけか。

 どうにか家の掃除を終えた私たちは、その日はゆっくりと腰を落ち着けて休んだのだった。


 翌日からは、以前の生活に戻る。

 草や葉っぱを集めてポーションや茶葉にしたり、魔物を狩っては食材にしたり毛皮にしたりと、自由気ままな生活に戻っていた。

 戻って来た翌日に作ったポーションや茶葉を持って、近くの町に出向いた時には驚いたものね。

 クルスさんが町長を引き継いでいたんだもの。マリエッタさんにも子どもが生まれていたし、時の流れというものを実感せざるを得ないというものだった。

 こうして、昔の日常に戻った私だった。


 それから十日くらいが経った日のことだった。

 家の扉が突然叩かれる。

 この家の玄関に近付ける人物はたかが知れているんだけど、扉の外の気配はその誰でもなかった。

 ただ、ものすごく知っている気配だったので、私は玄関を開けて出迎える。


「ママ、来たよ」


 そこにいたのは、私とピゲストロさんとの間に生まれた三人の子どもだった。

 三人ともピゲストロさんの影響を強く受けているのか、種族はオークになるらしい。

 男の子二人は一般的なオークと大差がない。でも、私の影響があるのか頭髪が人間並みに生えている。

 残る一人は女の子。豚の鼻と耳にしっぽを持ち、それさえなければ人間といってもいいくらいの姿だった。

 この子は、実はとんでもない存在なのよ。

 なにせ、オークには女性が長らく存在していなかった。少なくても、今いる人たちは誰も知らない。まあ、魔王にでも聞けば一人くらいは知っているかもね。


「どうしてここまで来たの? 遠いから危ないでしょうに」


 私が尋ねれば、三人は揃って後ろを見る。そこにはファングウルフたちの姿があった。どうやら、彼らが三人を乗せてここまで来たらしい。

 まだ娘は軽いからいいでしょうけれど、息子たちは重かったでしょうね。

 とにかく私は、三人とファングウルフたちを中に招き入れて適当なものを用意する。


「ママは、お屋敷には戻ってこないの?」


「そんなことはないわよ。あの人との約束で、あなたたちが十分大きくなったら戻ることになっていただけよ。ティコとキイの子どもたちのこともあるし、時々お屋敷には向かうから安心して」


 娘の質問にそう答えると、三人揃って安心した様子だった。

 それにしても、子どもたちが私の家にやってくるのは予想外だったわね。多分、ファングウルフにお願いしてやって来たんでしょう。ファングウルフたちはこの家を知っているから。

 この日は子どもたちを家に泊まらせて、あれこれといろいろと話をしてあげた。

 これまでの私の話に、子どもたちはとても興味深々だったわ。


 翌日、子どもたちはファングウルフの背に乗ってお屋敷へと戻っていった。念のために、キイに護衛を頼んでね。


「ふぅ。さてと、今日もまったりとしましょうかね。おいで、ティコ」


「みゃう」


 今日も私は、草を摘んで錬金術にいそしむ。

 ティコの毛皮をもふもふしながらの午後は、すごく落ち着くというものだわ。


 これからも私は、この家を拠点にして近くの町やお屋敷へと出向いていくでしょうね。

 私のまったり生活は、まだまだ始まったばかりよ。



 ―――おしまい

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