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追放魔族のまったり生活  作者: 未羊


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第103話 魔王に襲われ、大ピンチ!

 何か来たということで向かってみると、なんとそこにいたのは魔族のボスである魔王だった。

 そして、どういうわけかその魔王に私は今襲われている。どうしてこうなった。


(ううっ、防御魔法がかろうじて追いつくけど、簡単に破られちゃう……)


「ほほう、俺の攻撃を防いでいるとは、なかなかに素晴らしいことだ」


 防御魔法を展開して拘束を抜け出したものの、魔王は私を捕らえようと襲い掛かってくる。

 余裕たっぷりの笑みを浮かべながら、私相手に肉弾戦で迫ってくる。

 さすがに防ぐのが精一杯で、反撃の隙がない。怖すぎるわ。


「あなたがやって来たから、キマイラが南下してきたというの?」


「さあな。弱い連中に興味はない。先日、こちらの方で面白い力を感じたのでな、興味を持ってきたというわけだよ」


「面白い力?」


 魔王は一体何を言っているというの?


「我々魔族を滅ぼせそうなくらいの力だ。感じた時は続々ときたものだ」


 その話を聞いていて、私はふと思った。

 あ、これってお兄ちゃんのことだって。

 そう、私の兄であるアイザックは、確かに先日こちらの方へとやって来ていた。

 ピゲストロさん自身も手負いになっていたし、その戦いではオークが数名犠牲になっている。

 どうやらこの魔王とかいう魔族は、その時の力を感じ取って南へと下りてきていたらしい。

 いや、さすがに時間経ちすぎてませんかね。

 でも、キマイラやファングウルフたちが南下してきた理由としてもすごく納得できる話だった。


「俺はその者と戦ってみたい。だが、どうだ。そこにいたのは似たような力を感じる女とひ弱な魔物どもだ。実に面白くない」


 魔王は顔に手を当てながら、何かを語っている。なんだろう、非常に寒気がするわ。


「グギャアア!」


「ギャウウウウッ!」


 あまりに私に対して執拗に攻撃を仕掛ける魔王に苛立ったのか、ティコとキイが風魔法を放つ。


「ふん、涼しいだけだな」


 突風の魔法ではあったものの、魔王は直撃を受けながらも実に涼しい顔をしている。


「飼い猫に成り下がったかと思った、力は増しているようだな。だが、涼しすぎる」


「ミャアアアッ!!」


「ティコ! キイ!」


 風魔法が得意なマンティコアとキマイラに対して、風魔法で魔王は圧倒している。

 これが、魔族の頂点である魔王の力なの……?


 はっきりいって、勝てるような要素はどこにもない。

 私だって、キマイラ相手になんとか勝てるような程度だもの。

 そのキマイラであるキイが赤子同然。どこに勝てる要素があるというの。だけど、私はこの子たちの主として、守ってあげなきゃいけない。

 ティコとキイが痛めつけられているとあっては、黙ってなんかいられないわよ。


「よくも私の可愛いティコとキイを傷つけてくれたわね。許さないんだから!」


「ふん、そうこなくてはな」


 私が怒りながら指を向けると、魔王は楽しそうな歪んだ笑顔を見せる。

 その表情はまるで戦えることを喜んでいるようにしか見えない。なんて狂っているのかしら。

 今日のところはただのお出かけ予定だったので、私は魔導書を連れていない。でも、魔導書なしでも私はやってやるわ。


凍れる槍よ(アイス・ランス)!」


 氷の槍を生み出して敵に突き刺す魔法を繰り出す。


「ふん、ひんやりしていて気持ちいいものだな」


 魔王は避けることなくその身に魔法を受けている。だけど、まったくかすり傷すらない。

 魔法を受けて感想を述べるとか、この魔王は変態なのかしら。

 私は驚くべきなのか身震いすべきなのか迷ってしまう。


炎の弾丸よ(フレイム・シュート)!」


 続けて炎の塊をぶつける。

 これも直撃したというのにまったくダメージがない。


「う、そ……」


 魔法を二発直撃させてもまったくの無傷。


「はあぁ……。とんだ期待外れだな。魔族なんてのは、しょせんこの程度か」


 魔王は頭の髪をかき上げながら、実に詰まらなさそうな顔をして文句を言っている。

 そうかと思えば、私に向けて鋭い目を向けてくる。


「いささか飽きたな。とっととお前らを始末して、城に戻るとしようか」


 冷たい視線だった。

 この目を向けらた時は、さすがに私だって死を覚悟する。

 それはまるで、町娘だった頃に魔族に襲われた時のようだった。


「いや……」


 私はぽつりと呟く。


「いやよ、二度も……、二度も死んでたまるもんですか!」


 その時、私の中で何かが弾けた気がした。


「むぅ、この魔力は!?」


 私の耳に、魔王の焦った声が聞こえてくる。


「この魔力はまずいな……。女、実力を隠しているとは、なめ腐った真似を……」


 魔王が何か言っているけれど、私にはなんのことか分からない。

 ただ分かっているのは、今の私は全身からあふれんばかりの魔力を感じていて、その魔力がうまく制御できなさそうなことくらいだった。


「ミャアアウッ!」


「ティコ? キイ?」


「ガル、ガルルッ!」


 突然飛び込んできた二匹に驚く私だけど、私に迫ってきているのはなにも二匹だけではなかった。


「これは間違いなく俺の脅威になる。ここで死ぬがよいぞ!」


 魔王も私に向かって突進してくる。状況がよく分からなく、私は焦ってしまってうまく対処できない。

 もうだめだ。そう思った時だった。


「アイラ殿!」


 何か声が聞こえた気がした。

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