EPISODE3、言いたい事は
「そうだったのか。回復魔法にそんな危険性が…」
俺は少女の話を夢中になって聞いていた。
「回復魔法って言っても2種類はあるからね?」
少女は人差し指を立てながら説明を始めた。
「1つは、回復させる相手の魔力を消費して治す方法と…」
体がだるかったのは、そのせいか。
少女はもう1つ指を立てる。
「もう1つが自身の魔力を消費して治す方法ね」
「俺を治すのに後者のやり方だとダメだったわけか」
「ダメって言うか、どっちも駄目だったよ?君の魔力を消費して治すにも使い過ぎると瀕死だから死んじゃうし…私、回復魔法苦手だから自分の魔力でやり過ぎると相手爆散しちゃうし」
少女の説明に再びツッコミを入れた。
「助けるつもりがあるのかないのか、はっきりしてくれ!」
下手すれば回復魔法で死ぬとこだったの?俺?
一体何なんだ…。
何者なんだこの少女は。
気になるところではあるが、今の俺には目標がある。
強くならなければならない。
こんな所で油を売っている暇はないんだ。
「治してくれた事には感謝するよ。俺はもう行く」
怠い体に鞭打って立たせる。
だが、生まれ立ての子鹿のように足が震えていた。
関係あるもんか。
ここで音を上げているようじゃ、いつまでも強くなれない。
「そんな状態だと、いつまで経っても強くなれないよ」
少女の言葉に俺は歩みを止めた。
「何だと?てめぇに何が分かる…!」
俺は震えた足のまま、少女に詰め寄った。
言い返せなかった自分に腹を立て、八つ当たりをしていた。
「何も分かんないよ?」
「だったら黙ってろッ!」
俺が怒鳴り散らすと、腹部に激痛が走る。
ーー蹴り。
少女の蹴りが炸裂していたのだ。
くの字になりながら扉を突き破り壁に激突する。
「何…しやが…」
血を吐き出していた。
殺す気で蹴ったのか。
内蔵まで吐き出す勢いだった。
体の痛みよりも、心に受けた痛みの方が大きい。
受け入れなければならない現実の数々に加え、痛感した自分の弱さ。
さらに見ず知らずの少女にまで否定された。
それでも俺は立ち上がり詰めよろうとしていた。
「強くなれない…って誰が…決めた…。俺が…決めたんだよ…!強くなるって…知らねぇ奴に…そこまで言われる…」
蹲り、更に血を吐いた。
視界もぼやけている。
少女の蹴りでもダメージを受けるほど、軟弱なのか俺の体は…!?
立て…立てよ。
俺は痙攣し始めた体を起こし、立ち上がろうとする。
呼吸が苦しい。
また意識を失うのか?
いや…これだけは言わなきゃならねぇ。
「俺は絶対強くなる!!否定される筋合いはねぇッ!!」
俺は叫んだ。
ーーただ力いっぱいに。
叫んでやった。
また…俺の意識は、ここで途切れてしまった。
意識失い過ぎだろ…俺。
皆が言う通り、足手まといだったんだな俺。
状況に甘んじて努力して来なかったもんな。
誰かが何としてくれる。
楽な立ち回りばっかしてたもんな…。
今こうなってるのは、努力して来なかった結果だよな。
こんなに弱いんだ。
仲間だなんて誰も認めてなかったんだよな…きっと。
くっそ…。
強くなりたいなぁ…。