EPISODE32、冒険者連盟
「おうよ。【天光天晶】と【星波の守り手》】の冒険者連盟だ」
連盟枠が埋まるのも頷ける。
【天光天晶】は、澄みわたる青空に降り注ぐ太陽の光を象徴した旗を誇り高く掲げる。
古くから続く名高き冒険者ギルドだ。
その旗は、純白と金色で彩られ、天からの恩恵と希望を象徴している。
在籍する冒険者の数はおよそ200人ほどで精鋭揃い、各地の危険な遺跡迷宮に挑み、その名を馳せている。
ギルド本部は、西の広大な都市の中心部に位置し、高くそびえる城壁と壮麗な塔を持つ。
城壁には、象徴である天光天晶の紋章が誇らしげに飾られ、まるで静かに輝く星の群れのようだ。内部には、遺跡迷宮探索のための最新の装備や資料が整備されており、街の冒険者たちの憩いと情報交換の場となっている。
一方、【星波の守り手】は、遺跡迷宮攻略を専門とする、腕利きの守護者たちの集いだ。
迷宮の秘密を解き明かし、危険を未然に察知し、冒険者たちを護る役目を担っている。
その構成員は、厳格な訓練を受けた守護者たちで構成され、彼らの戦闘技術と魔法の腕は群を抜いている。
迷宮の奥深くまで潜り込み、罠や魔獣と対峙しながらも、仲間を守り抜く誇り高き使命感に燃えている。彼らの旗には星の波の模様と守護の盾が描かれ、その存在感は圧巻だ。
この二つのギルドは、それぞれの使命と誇りを胸に、遺跡迷宮の奥深くで数々の伝説を刻んでいる。互いに協力しながら、未知と危険に立ち向かい、世界の秘密を解き明かすために日々努力を続けているのだ。
レヴィンが在籍していた【白銀王】でも何度か共に依頼に挑んだことがある。
「仲介は難しそうですな〜」
「あと少し、金貨を恵んでくれりゃあ仲介してやるよ。へへっ、どうだい?」
男の提案にレヴィンは、机の上で人差し指を立てる。
だが、首を横に振る。
金貨2枚じゃ足りないという意思表示だ。
ティルゼから借りた金貨は5枚。
ーー5枚しかない。
もし、5枚以上求められれば、この話はなかったことになる。
レヴィンが取った行動は、1枚ずつ差し出す事であった。
仲介人も時には危ない橋を渡る。
相手の資金が潤沢なら当然、高い額を請求してくるのだ。
ゆっくり、ゆっくりとした動作で1枚、また1枚と男に差し出していく。
最後の1枚に緊張が走る。
これで打ち止めだ。
資金が乏しい中で出来る最善の策だった。
「いいだろう…。ほらよ、紹介状だ」
男は口元を緩め、1枚の紹介状をレヴィンに差し出した。
紹介状は古びた用紙に見えるが、文字は丁寧に記載され証明印も押印されている。
「よっしゃっ!」とレヴィンは心の中で拳を突き上げた。
手応えを感じながらも下手に出るスタイルを崩さない。
「これで食いぶちを見つけることができまさぁ」
レヴィンは成果を報告しようと振り返ると、ファルやティルゼの姿はない。
視線はすぐに人混みの中へ吸い寄せられる。
二人はバンダナを巻いた男の傍に立っていた。
見るからに軽薄そうな風貌で、最初はナンパでもされているのかと思ったが様子は違った。
男は親しげに笑い、ティルゼに軽口を投げかけている。
「ティルゼじゃないか。冒険者になったのか?」
その口調はどこか馴れ馴れしい。
ティルゼは一瞬だけ曇った表情を見せたが、すぐに肩の力を抜いてニヤリと笑った。
ファルは目をパチパチとさせ手を前で組みながら様子を伺っている。
レヴィンはそっと近づきつつ、成り行きを見守った。
「まぁねぇ【傭兵】稼業も潮時でさあ〜。手軽に稼げるってんで冒険者ってわけ。そうゆうアンタは?」
【傭兵】という言葉を聞いてレヴィンは少し眉を上げていた。
ティルゼの小さな体躯、だらしなさから見て想像は出来ないが、言葉と態度の端々に納得させられる部分もある。
彼女の切り替えは速く、いつでも戦闘態勢に移行できる。
染み付いた習慣のようだった。
「俺も似たようなもんだな。ここに居るってことは【冒険者連盟】に参加するんだろ?」
「まぁねぇ」
「なんなら俺らのパーティーに混ざらねぇか?ティルゼが居るなら問題ねぇしよ」
男の勧誘はタイミングが悪い。
せっかく勝ち取ったともいえる紹介状の意味がなくなってしまう。
「せっかくだけど、やめとくわぁ〜。今、仲間が交渉中なんだよね」
「仲間?」
男の眉が跳ねる。
「なに?」
「お前が仲間だって?」
男の言葉に含まれるのは、軽蔑でも侮蔑でもなく軽い驚嘆だった。
「頼れる人達なんだよね」
ティルゼは軽く胸を張る。
ファルも、様子を伺っていたレヴィンも少し照れくさそうに目を伏せてしまった。
「交渉、上手く行くといいな。もし、参加したからったら声掛けてくれよ」
男は軽く手を振りながらその場を後にした。
レヴィンはというと、高鳴る気持ちを抑えながら紹介状を手に2人の元へ近付いていた。
「お陰様で紹介状、手に入れたぜ」
レヴィンの顔に少し自信の色が見える。
「伝手があるなら、金貨5枚も払う必要なかったかもな」
レヴィンは自信に満ちた表情を浮かべながらも少しだけ不服そうだった。
ティルゼも人が悪い。
「何が?」
ティルゼは首を傾げる。
「親しげに話していたじゃないですか。レヴィン君が…ふふっ…」
ファルはティルゼのやり取りよりも、レヴィンの交渉術を見て思い出し笑いをしている。
豹変ぶりが頭から離れない。
「あー…さっきの奴か〜」
ティルゼは、頭をポリポリと掻く。
「名前覚えてないんだよね。あいつ」
ティルゼの言葉に思わず顔を見合わせ、どう反応すべきか悩む。
ティルゼの天然な一言、無邪気さにただ驚いていた。
2人に宿った不安は、忘れられるのでは?という事だった。




