EPISODE30、今出来ること
最強と呼び声が高い冒険者ギルド【白銀王】から追放されたレヴィンは、犯罪者ギルドの依頼の一件を境に共に行動することとなった。
これからパーティーとして、どんな冒険が待ち受けているのか。
ーーーしかし。
「ちょっ…ちょっと待ってくれ」
レヴィンが頭を抱える事態に陥っていた。
3人がいる場所は【タルコス】という街だ。
レヴィンが修行していた場所から更に西に位置する交易街。
冒険者管理局支部もあり、近隣諸国の騎士団も常駐している。
「依頼って難易度が一番高い方がいいんですよね?悩む必要はないですよね…」
冒険者管理局支部の古びた机に3人が囲むように座り、ファルが机に広げる依頼は、5段階あるランクの最高難易度ばかり。
「やっぱし、金よ」
ティルゼが広げるのは、高額の依頼ばかり。
2人の談笑する様子を見て、頭を抱えていた。
「駄目だっ…!」
レヴィンは、きっぱりと言い放った。
「いいか?難易度が高すぎても、報酬額が高すぎても駄目なんだ」
レヴィンが2人に説明を始めた。
「まず、ファルが持ってきたこの依頼は、最高難易度だ」
ファルは少し不安な表情を浮かべながらも「はい」と頷いた。
「高過ぎるだろ…。勝てると思ってるのか?」
レヴィンの表情は鬼気迫るものだった。
「ちゃんと内容見たのか?」
「み、見てません…」
「そうだろうな」と言わんばかりに肩を落とした。
レヴィンは依頼の内容を確認すると目が飛び出そうになるくらいの内容だった。
「荒れ狂う熊に吸血蟻…」
名前を目にするだけで恐怖すら覚えてしまう。
「無理だ…絶対無理だ」
「でもレヴィン君。どんな難易度でもやってみなければ分からないという事もあると思います」
ファルの言うことも一理あるのだが、真っ向からレヴィンは否定する。
否定するだけの理由があるのだ。
「この魔物について知ってて言ってるんだよな?」
「よく知りません」
レヴィンは、魔物について説明を始めた。
荒れ狂う熊。
赤黒い毛並みを持ち、3メートル超える体躯を持ち、重厚な肉厚には魔力が流れており、強靭な肉体から繰り出す一撃は岩を木っ端微塵にすると恐れらている。
縄張り意識が非常に強く、知らずに踏み入れた駆け出し冒険者が全滅したという話は度々耳にする。
吸血蟻。
サイズは普通の蟻と変わらないが、名前の通り血を好物としているのだが、摂取すればするほど巨大化するという特性を持つ。
現在確認されている最大サイズは、都市1つ分。
【白銀王】総出で絶滅させて以降確認されていないとされている。
「ファルの持ってきた依頼は、危険なものばかりなんだ。いくら2人が強いとしても生きて帰れる保証がないし、最高ランクの冒険者達でも束になって勝てるか分からない…」
レヴィンが知る限り、ファルとティルゼの冒険者ランクは銅ランク。
しかし、ファルは一騎討ちでネックを倒し、ティルゼの扱う破壊力抜群の弩弓。
実力は駆け出し冒険者以上だろう。
だとしても危険過ぎる。
「なら、あたしの依頼はどう〜?最低難易度でも結構な金になると思うけど〜?」
ティルゼがひらひらと見せて来た依頼をレヴィンがひと目で首を横に振った。
「…駄目だ」
「なによ〜、なんでよ〜」
ティルゼが不満そうな声を上げた。
「簡単で高額依頼なんて中々ないぞ」
レヴィンは冷静に続ける。
「簡単高額依頼は、駆け出し冒険者を貶めるための罠みたいなもんなんだ」
「罠?」
「ファル達が俺を…犯罪者だと思ってたあの依頼みたいなやつ…」
レヴィンも歯切れが悪くなる。
誤解とは言え、下手をすれば死んでいたかもしれない依頼を何も知らないファル達が受けていたからだ。
「なるほど〜」
「その依頼も隅に文字を擦り付けた痕がある。犯罪者ギルドの依頼だな」
レヴィンはティルゼの持っていた別の依頼も説明する。
「洞窟調査で金貨20枚…。これは見るからに胡散臭いだろ?洞窟調査の詳しい説明はないし、罠だろうな」
「レヴィン君、詳しいですね…」
ファルが興味深そうに尋ねる。
「そりゃあ【白銀王】で、伊達に情報収集能力を磨いてた訳じゃないんだぜ?」
レヴィンは少し誇らしげに答えた。
「情報…収集だけです?」
ファルが首を傾げる。
「情報ってのは力なんだ。正確な情報さえあれば、被害を最小限に抑えられたりするんだ。持ってるのと持ってないのとじゃあ、天と地の差ってもんよ」
レヴィンは、誇らしげに続ける。
ーーが。
【白銀王】は、白金冒険者であるギルドマスターのカルヤを筆頭に金ランクを含めた冒険者が300人もいる。
圧倒的な実力者ばかりで、高難易度の依頼達成率が極めて高い。
未踏破の遺跡、大規模な魔物討伐。
積み上げてきた実績は、冒険者ギルドの頂点に君臨するに相応しいと言える。
しかし、【ポンコツ】と周囲から蔑まれていたレヴィンは名声を浴びることはなかった。
むしろ、軽蔑と嘲笑の対象として見られることが多かった。
余韻に浸る間もなく、「その情報収集能力を活かせるようにしなきゃね〜、お互いに」
と、ティルゼが釘を刺した。
レヴィンは【白銀王】を追放されてしまった。
それは在籍していたという過去の栄光でしかないのだ。
少し照れながらも「…そうだな」とレヴィンは今一度気を引き締めた。




