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最強ギルドを追放された俺はガチの最弱なので。  作者: 真宵 にちよ
第二章、新たな出会いと冒険と
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EPISODE23、荒れる依頼

 人を乗せた荷車から勢いよく立ち上った白煙は、辺り一面、木々を覆うようにして漂い出していた。


 異変を察知した2人の追跡者は、一瞬の戸惑いを見せつつも、迅速に荷車の付近に近付いて来る。


 男2人は黒いフードに身を包み、慎重ながらも確実な動きで接近する。


「お、おい…まさか勘づかれたのか…?」


 と、男の一人が不安げに声を落とす。


「馬鹿言え。あっちからは視認できない距離を保っていたんだぞ。気づくわけがねぇ」


 と、もう一人が冷静に答える。


 追跡者達は駆け出し冒険者を追っているつもりでいたため、範囲の広い魔力感知能力を持っているとは思いもしていなかった。


 煙の中にぼんやりと見える人影を捉えた一人が、慎重に煙を払いのけ、その影に触れる。

 ところが、それは力なく揺れて、顔を覗き込むと藁が詰められていた。


 驚愕とともに、彼は吐き捨てるように言う。


「ちっ…!人形だ」


 その瞬間、気配を殺し、息を潜めていたレヴィンが荷車の下から飛び出した。

 不意を突かれた状態であっても、相手は手練の追跡者達。

 即座に反応し、レヴィンの振り下ろそうとする短剣に対し、防御の構えを取る。


 しかし、2人の視線がレヴィンに向いている間に、木の上からファルが勢いよく飛び込んでくる。

 着地と同時に体勢を崩さず、鮮やかに鞘へ収めたままの剣を翻しながら振り抜き、男一人の頭を正確に捉えた。


 ファルの攻撃を受けるとは予期していなかったのか、受けた衝撃を逃がす事が出来なかった。


 ぐらりと体が揺れ、ふらついた足運びのまま、大の字で地面へと沈んだ。


「野郎…っ!」


 もう一人の男は怒りと驚きで声を貼り上げ、短剣を腰から引き抜いて踏み出した。


 その矢先、人形だと思っていたものが突然動き出し、弩弓が突き飛ばした。


 完全に不意を突かれた彼は、体勢を整える前にレヴィンとファルの猛撃を受け、一撃で意識を刈り取られる。


 無力化に成功すると、ティルゼは藁を剥ぎ取って頬を掻く。

 待っている間、痒くて仕方なかったのだ。


「あ〜…痒い痒い…」

「こりゃ役者顔負けだな」


 レヴィンも驚いていた。

 揺られる様はまるで本物の人形のようであり、追跡者達は完全に騙されていた。


「さて…どうしましょうか」


 ファルは追跡者達の処遇を決めようとするとレヴィンが懐から縄を取り出す。


「とりあえず目的を問いたださないとな。縛るぞ」


 縛ろうとした瞬間、レヴィンは手を止めた。

 ティルゼが恐ろしい事を口走っていたからだ。


「その前に手首と足首折ろうよ。縛るのはそれから。口が動けば問題ないでしょ?」

「もう無力化してるんだ。これ以上痛め付けたらやってる事は盗賊ギルドと一緒だ」


 ティルゼは、瞳孔が一瞬だけ開き、直ぐに気怠げで死んだ魚のような目に変わった。


「それもそうだねぇ〜」


 無意識に口走った事を反省した様子の為、レヴィンはそれ以上の言葉を止めた。


 追跡者2人を縛り上げ、目を覚まさせる。


「この依頼書。誰に頼まれた?」


 レヴィンは隠し文字が記された依頼書を突き付けると噛み付くように怒りを見せ怒鳴る。


「ポンコツ…レヴィンが…!」

「ブラセさんをどこにやりやがった…!」


 やっぱりな。


 と、レヴィンの推測が的中していた。


「やっぱり、ブラック・ブラックのメンバーか」


 とレヴィンは吐き捨てるように言う。

 視線は冷やかだが、内心は警戒心を強めていた。ブラセの失踪により向けられた敵意の渦中にいることが確定した。


 初めはブラセの個人的な恨みから始まったものだったが、行方不明になった事で標的をレヴィンに定めたのだ。


 この追跡者も運がない。


 駆け出し冒険者の相手に負けると微塵も思っておらず、簡単に終わるはずだったからだ。


「ブラセはもう二度とお前らの前に現れねぇよ」

「なんだと!?」


 続ける言葉は、その残酷な真実を告げるものだった。


 ブラセがこの世にいないという現実が追跡者達の心を抉る。


 レヴィンが発する言葉の意味は、既にこの世に居ないという事だった。


「捜すだけ無駄だ」


 レヴィンは辛辣に告げ質問をなげかけた。


「この先に何人いる?」


 追跡者達の手綱を握るレヴィンは問いただす。


「貴様らも、もう終わりだ!あの人さえ来てくれればな!」


 一人が慌て口を押さえようとする。

 だが、縛られた手はそれを許さない。


「ば、馬鹿!」


 口を滑らせ、レヴィンは頭の中を整理する。


「あの人?待ち伏せしてるのは、ブラック・ブラックじゃないのか…」


 レヴィンが知る限り、ブラック・ブラックが下手に回って頼りにする相手はいない。


 ブラック・ブラックは、ブラセが一人で成り立つ犯罪ギルドだ。

 構成員も手練なのは間違いないのだが、壊滅に追い込まれてもブラセさえいれば立て直すだけの実力がある。

 それがブラック・ブラックの強さだ。


 記憶を辿り、脳裏に浮かんだ人物がいた。


 その時、不気味な殺気が漂い始め、レヴィン達は警戒を強める。


 背後から届く声は冷たくも魅惑的なものだった。


「予定よりも遅いから心配しちゃったわ」


 背筋が凍りつくほどの殺気。

 長い茶髪を風で揺らしながら現れた顔立ちが良く中性的な長身の男が姿を現していた。



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