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EPISODE1、突きつけられた現実

 追放を受けた俺が転落するまで時間は掛からなかった。

 ギルドが受け取っていた定期的に支払われる金も当然受け取る事が出来ず、貯金はあっという間に底をついた。


 住んでいた土地は一等地。


 報酬金無しで支払えるはずもない。

 日銭を稼ごうにも、依頼を受けることさえ難しい状況だった。


「依頼を回せないってどういう事だよ!」


 受付嬢に異議を唱える。

 前はどんな依頼でも回してくれた。

 何だったらギルドが報酬金にありつけていたのは俺のお陰だと言ってもいい。


「今は貴方、一人ですよね?」

「それが何だって言うんだ!ゴブリンとか簡単な依頼でも良いって言ってるんだ」


 別に高額報酬の依頼を受けようって訳じゃない。

 駆け出しの冒険者でも受けられる依頼で良いんだ。


「今までら他の冒険者の方がいましたから安心してお任せ出来ましたが、今の貴方にはお任せ出来ません」

「何でだよ!」


「信用がないからです!」


 受付嬢がはっきりと答えると、俺は目の前がぼやけてみえる。現実を受け入れられずにいた。


「信用もなければ実績もない方にお任せできる依頼はありません!どうかお引き取り下さい!」


 俺は追い出され、呆然と立ち尽くしていた。

 信用?実績?

 仲間達と一緒に達成した実績に俺が含まれていなかったのか?


 仲間達の実力に合わせた依頼の選別。

 魔物の情報や効果的な武器調達。


 今までの手柄は、全て俺を除く仲間達のものだってのか?


 仲間達が強かったからこその信用であり、俺の苦労は全部無駄だったのか?


 目眩いがする。


 白銀王に居た時は大して気にしなかったが、街の人達の視線が刺さる気がしてならない。


 いつも向けられる羨望の眼差しではなく、嘲笑と侮蔑。


 悪い夢。


 そうだ、全部悪い夢だ。


 今に目を覚まして、覚ませばそこに仲間達が…。


【現実】。


 という残酷な状況だけが、俺を容赦なく打ちのめして来る。

 違う。俺は弱くなんかない。

 白銀王に居たんだ。

 きっと皆、俺の開花する才能が怖くて追放したんだ。そうに違いない。


 俺は吸い寄せられるようにして森の中へと足を踏み込んだ。


 できるだけ魔物が多い所へ行こう。

 俺の実力があれば、どんな魔物だって余裕だ。


 お前らが別の道に行くなら勝手に行け。


 俺は俺の道を行く。


 そう思っていた矢先、ゴブリンと遭遇する。

 数は6匹。


 駆け出し冒険者でも倒せる。

 苦戦するはずが…。苦戦するはずがない。


 俺は眠っていた力を目覚めさせ、ゴブリン達をあっという間に片付けた。


 目を覚ますと呼吸が乱れ、虫の息だった。


 ゴブリン達に足蹴にされている。


 負けた?

 負けたのか?

 ゴブリンに?

 駆け出しでも倒せるはずだぞ?

 腕は変な方向に曲がっている。

 痛みが次第に伝わって来た。

 痛ぇ…!


 腕だけじゃない、肋骨も折れている。

 助けを呼ばないと、マジで死ぬ。

 声が…声が出ねぇ。


 折れた肋骨が肺に刺さってやがる。

 ゴブリンに殺されるのか?


 駆け出し冒険者以下じゃないか。


 助けを呼ぶのも馬鹿らしくなってきた。


 俺は何もかもどうでも良くなってきた。

 今思えば、白銀王に入れたのは奇跡。

 運が良かっただけだ。


 強い奴らに囲まれて、勝手に強くなったと勘違いしていただけだった。


 もし、生まれ変わるチャンスがあるなら…。


 絶対強くなってやる。


 そして、あいつらを見返して後悔させてやる。


 俺を追放した事を…!


 自分の人生に幕を下ろそうとした時、ゴブリン達の血が飛び散ったのを横目に剣を構えた少女が視界に入る。


 誰か…助けに来てくれたのか…。


 俺はそのまま意識を失った。



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