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EPISODE12、一歩ずつ

 ラクネアとの身体能力強化訓練は、まさに生き地獄だった。

 攻撃が当たるどころか掠りもしない。

 こちらが一撃を避けられる度に返って来るのは正確無比な連打。

 3撃くらいは返って来ているだろう。


 いや…もっとかもしれない。


 激痛で何発食らっているか分かったもんじゃない。

 しかも、木剣がしなって唸って飛んで来て、全身を殴打される。


 気付けばいつも意識を失っていた。


「はぁ…ぜぇ…ぜぇ…一発も…当てられ…ねぇ…」


 俺は額から汗と一緒に流れ落ちる血を拭い、短剣をラクネアへと定める。

 手元はガタガタで立っているのがやっとだ。

 しかもラクネアは1歩で動ける範囲でしか行動していないときた。


「敢えて攻撃は見えるようにしているのです。避けられない事はありませんよ?」


「くっ…!」


 当然だけど、本気でやったら木剣で肉塊にされるって事かよ。


「真正面からではなく、もっと工夫して下さい。目潰しでも何でも使えるものは使って下さい」


 目潰し…て。

 卑怯者みたいで気が引けるな。

 そして、ラクネアからは、また見透かしたように言葉が返って来る。


「戦闘に卑怯もクソもないんですよ。人の道を外れろとまでは言いませんが、持てるもの全てを使い、最後まで立っていた者こそが勝者なんですよ」


 淡々と語られるが、いつもより言葉に重みを感じる。

 一騎当千なんて考えは捨てたろ。

 俺は頭を切り替えた。

 なら…。


 全身に痛みが広がる中で、短剣を握り締めながら突っ込む。


 使えるものを何でも使う。


 俺は間合いに入る前につま先で土を掬いラクネアの視界を遮るように蹴り上げた。


 土埃が舞う。


 これで視界は途切れたはずだ。

 俺の持ち味は魔力が無いこと。

 魔力感知が出来ないはずだ。


 土埃に紛れ後ろを取る。


 もらったッ!


 短剣を振り下ろすとラクネアが突き出した木剣が顔面を捉えていた。


「うっぐ…」


 俺は地面に転がり、また突っ伏してしまう。


「今までよりは全然良いですが甘いですね」


 ラクネアは木剣で手を叩きながら俺を見下ろす。


「バタバタと立てる足音に荒い息遣い。魔力感知をするまでもなく丸見えです」


 意識が途切れるまでラクネアの指摘を耳に入れる。


「さ、参考まで…に聞きたい…んだが」


「何でしょうか?」


「本気…で俺…を殺すとしたら…どれくらい…掛かる…?」


 ラクネアは指を1本立てる。


「1秒も掛かりませんね」


 駄目だ…。

 勝てる未来が見つからない。

 分かってはいたけど瞬殺かよ…。


 いや…別に勝たなくてもいい。

 まずは一発、当てるところからだ。


 俺は舌を噛み、意識を飛ばさないようにして立ち上がった。


「もう1回だ…っ!」


 意識を失う前に、せめて一発だけ食らわせてやる…!

 体勢を低く這うような意識で突っ込む。

 体が軋み全身に広がる痛み…、構わず勢い任せだ。


 俺は待ち構えるラクネアに向けて、握りしめていた砂を投げ付け視界を奪う。

 さっきと似たような事をするには狙いがあった。


 勢い任せは、見せかけだ。


 短剣をラクネアへ目掛けて投擲。

 近付くのではなく遠距離で一撃を浴びせる。


 投擲した短剣は弾かれ、木剣が空を裂き、砂埃を掻き消す。


 これが大本命だ…!


 俺はラクネアの懐に飛び込んでいた。

 素手による一撃に賭け、拳をラクネアの殴り飛ばすつもりで振り上げる。


 当たる!


 そう思ったのも束の間で、切り返した木剣が俺の顔面に炸裂した。


「1番良かったですよ。狙いは」


 そりゃ…どうも…。


 俺は完全に意識を刈り取られた。

日頃より自身の作品を読んで下さりありがとうございます。

第一章はこれで完結となり、第二章からは書き方が変更になります。

設定だとか思い付いても、いざ文字に起こすと難しくて悪戦苦闘中ですね( ̄▽ ̄;)

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